BREITLING BLACKBIRD A44359(pachi)の分解 (長文注意)

前回の記事に載せた動画は、上がブラックバードのパチもん、下が本物です。

何が違うかというと、パチの日付の一桁目と二桁目が逆回転なのに対し、

本物は同じ方向に回ります。

ということで、構造が違うということがわかります。

また、本物はETA2892A2をベースにデュボアデプラのモジュールを付加している

ことになっていますが、パチは7750がベースということになっています。

ですので、縦目を横目に変換する構造も入っていることになります。

以前からビッグデイトの構造とサブダイヤル位置変換方法が気になっていたので、

このたび分解して、それを確かめてみることにしたのです。


本物の方も購入から9年たちました。いくら使用頻度が少ないとはいえ、

そろそろメンテしなきゃまずいだろうと考えているので、多少なりとも参考になるのではないか、

そんな思いもあります。


ということで、分解に入ります。
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外装に傷はあまりないので、洗うだけです。プッシュボタンは分解しますが、

回転ベゼルは本物と違いはめ込み式なので、外さないことにします。

裏蓋です。このモデルの初期は、鋳肌っぽい地にBLACKBIRDの浮き出し文字だったようですが、

なぜかその後このデザインに変更されています。
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どうして変更されたのか、ブラジャパンの営業さんに聞いたことがありますが、

明確な理由はわからないとのことでした。

シリアル番号もしっかり刻印してありますが、どうもパチはすべて同じ番号のようですw


その裏蓋を外すと、見慣れた機械が出てきました。なんとなく汚いのはパチのお約束。
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ケースから取り出します。文字盤は、透明マット塗料を吹き付けてあるので、

オリジナルパチとは違います。
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文字盤をはずしました。日車が出てきました。
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二つの日車を外します。
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まだ見えませんが、筒車に日送り用の歯があって、それが①の日送り伝え車を回します。

伝え車に立っているピンにより一緒に回る日送り爪で日送り車を回します。

二つの日送り車は直接つながっているので、一桁目と二桁目が逆方向に回るわけです。

ここで着目したいのは、日送り伝え車と日送り爪が固定ではない点です。

ETA7750は固定なので、爪が日車の歯と噛み合っている時に早送りすると

壊れる可能性がありましたが、このように逃がしがあると問題が起きません。


次に二枚の受けを外します。この下に秒針位置変換輪列がありました。
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7750は9時が秒針ですが、Cal.44は3時ですので、反対側に移動させる必要があります。

秒針を移動させた後に30分計を持ってこないといけませんので、秒針の動力は別のところから

取らなければなりません。この機械の場合は三番車から動力をもらい、それを5個の歯車を

介して3時に持っていっています。デイトナも凄かったですが、これもなかなかのものです。


左が三番車から動力を持ってくる歯車、右は秒車。

座金は秒針のふらつき吸収の役目と思われます。
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これは三番車から動力を取る歯車を保持する部品。ルビーを使ってます。
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次に日送り車の動きです。
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右の日送り車は基本的に一歯につき一日進めますが、31から1になる時は進まないように

する必要がありますので、一部欠けています。

ただ、なぜ一歯ではなく二歯欠けているのか、考え続けているのですがわかりません。


左の日送り車は右に連動して回りますが、歯先をカットしてないところだけ日車を回します。

「5」と書いてあるのは、正確に書くと5日目に「0」から「0」に変わるってことです。

なんで「0」から「0」に変える必要があるのか考えましたが、おそらく、おそらくですよ。

一桁と二桁の切り替わり時の回転角度を揃えるためではないかと思います。

二つが常に正しく切り替わるためには、回転角度を同じにする必要がある。

一桁目は10等分=36゜ですが、二桁目は0,1,2,3を2回続けても8等分=45゜。

これでは日付が正しく表示されません。

でも、どこかダブらせれば10等分になる。ということではないでしょうか。

もし1か月が30日未満だったら、かなり複雑な構造になりそうですね。

ま、つまらん仮定の話ですが。


部品を全部取りました。右上の歯車は、日付の早送り用ですが、カレンダー受けに

圧入してあるので外れません。
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カレンダー受けの裏側です。
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右上は30分計を12時から9時へ持ってくる中間車。

左は日付早送りの中間車です。


ようやく地板です。素の7750に対し、12時と9時のところが違います。
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12時の出車からカレンダー受け裏の中間車を介して9時の歯車に30分計の動きを伝えます。

この出車をどうやって外すか悩んだのですが、画像のようにひっかけられるようになっていることがわかり、

剣抜きで抜くことができました。ちょっと傷がついちゃいました(^_^;
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筒車です。大きな歯が日送り車を回します。
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裏押さえを外す時、ネジの頭が破損しました。上の画像でもわかりますが、右側のやつの頭が

いやな形をしてたんですよね。中華時計ではありがちだと思います。
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表側。こちらは改造されていないようです。
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香箱は油が切れている感じでしたが、スリップ量は多めだったので、これで注油したらえらく滑っちゃうかな、

と思ったんですが、半ば賭けでメービス8200を少量塗布。
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そしたら、驚いたことに軽く1ノッチずつ滑る理想的な状態に。どういうことだろう。

内周のノッチ数は、今までは6でしたが、この機械は7でした。
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画像では数えられませんが・・・


分解洗浄が終わりました。
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次回は組立です。    (続く)