SEIKO SpeedTimer 6139-6000 (組立編②)
組立編②です。これで完結としたいところです。
前回はテンプが動いてよかったね、というところまででした。
普通はこの後自動巻きを取り付けるのですが、それを飛ばして日の裏に行きます。
日の裏側の組立にはこの機械の専用機械台を使うことにしたのですが、
自動巻き部分がついていると台に乗らないからです。
ということで専用機械台に乗せて、
巻真周りから取り付けます。
手巻きができませんので構造はちょっと簡単です。筒カナを二番車の軸に
ちんと押し込み、日の裏車を取り付けます。そして日修正レバーバネを
取り付けます。
さらにカレンダーまわりの部品を取り付けます。
ここは、筒車からの回転を受け取って送り爪を回す日送り車、日車を回す日送り爪、
曜車を回す曜送り爪の積み上げですが、それぞれががっちり固定されているわけではなく
多少の可動範囲を持っています。
これは送り爪が日車・曜車のぱちっという切り替わりを邪魔しないためと思いますが、
同時に、カレンダーを今まさに切り替えようとしている時刻での早送りを可能にしています。
次の写真は、日送り爪が日車を送っている真っ最中です。
ETA7750などはこのタイミングで早送りをすると不具合が出る可能性があります。
この状態で竜頭を押し、早送りしてみました。それが次の写真です。
早送りされた日車の内爪によって日送り爪がはじかれて右方向に回っているのがわかります。
曜送り爪も同様です。
こういう機械がある一方で、56系のように早送り禁止時間帯があったものが
部品の設計変更で早送りしても「壊れない」ようになったものの、そこが後々に禍根を残して
「設計ミス」とまで言われてしまう機械もあったりするのがおもしろいですね。
曜送り爪は筒車の抜け止めを兼ねていますので、これのネジを締める前に中間車と筒車を
取り付けておきます。
そして日躍制レバーを取り付け、日車を取り付けて日車押さえを取り付けます。
日車の爪が接触するジャンパーの反対側の壁面にオイルを少々塗っておくと、
日車の動きがスムーズになるようです。
それから曜車を取り付け、Cリングで固定します。Cリングには裏表があり、平らな面が
上になるように取り付けます。平らな面を下にしても機能はしますが、次の分解時に
ちょっと苦労することになります。
そして文字盤を取り付け。文字盤と機械の間に入れるスペーサーを忘れないようにします。
次に針を挿しますが、この針にもひと手間かかりました。
表面の曇りはメタルクリーナーでは取れず、結局コンパウンドで磨くことになりました。
つやが出るまで磨いたら、めっきが完全に取れて地の色が出てしまいました。
そのまま使おうかと思ったんですが、この色とこの時計は合わない。
ということで、めっき工房でめっきすることにしました。できればクロームメッキしたいところですが、
めっき工房は銀かニッケルしかないのでニッケルを選択。めっき後、夜光を入れ直します。
るみっこだけでは固形分が少ないため、乾燥した時にヒビができたり、半透明になって
しまうからです。厚く塗っても半透明は解消しませんし、「ヒケ」というくぼみが目立つようになるし、
文字盤や下の針と干渉したりするのでいいことがありません。
そこで、粉末蓄光材を添加することで相対的な揮発分を減らしてやろうというわけです。
結果ですが、やはり半透明感はあり、インデックスとはかなり違う色合いです。
まだまだ研究が必要です。
こうしてとりあえず体裁の整った針を挿します。
長短針は通常の三針と同じですが、分秒クロノグラフ針についてはリセットボタンを
押した状態で真上を指すように挿さなくてはいけません。このために専用機械台があります。
機械台のプッシャーを押しながら針の位置合わせをし、ポンス台で打ちこみます。
次に、風防のついていないケースに入れて巻真、スペーサー、裏蓋を取り付けます。
回転インナーベゼルの部品、ガスケット、風防を取り付け、ベゼルを位置決めして圧入します。
裏返して裏蓋を外し、プッシャーを取り付け、マジックレバーを取り付けます。
自動巻きの受けに関連部品がすべてついている機械が多いのですが、6138/9はバラバラです。
受けが取り付けられました。
ローターを取り付け、完成です。
黒馬、茶馬ほどではありませんが、重量感たっぷりの時計です。
時間はかかりましたが、おかげで失敗はほとんどなく無事ミッション完了しました。