SEIKO KS HI-BEAT 4502-7000ジャンク

45KSですが、風防の傷多数、文字盤変色、主ゼンマイ切れのジャンクです。
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45系が好きなので、ついつい入札してしまいますが、高額入札はしませんので、

手元に来るのはだいたいこんなんです。

裏蓋を開けると、機械が意外にきれいなので部品取りにはいいかと思いましたが、

ひとつ思いついたことが。
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45系は強力な主ゼンマイを使っているため、それが切れた時に他の部品を巻き添えにすると、

まことしやかに語られています。

でも、いくら強いゼンマイが切れたからって、香箱の中で起きたことが他の部品を

損傷させるほどのものなのか。

という疑問を常々感じていましたので、こいつを分解してどこの部品が壊れているかを

自分の目で確かめることにしました。

しかし、ただ分解するだけでは面白くないので、そのまま復活させてしまおうと考えました。

45用のゼンマイはヤフオクでも出てきますが、かなり強気のお値段。ジェネリックなら

もっと安いはず、ということでイギミさんに問い合わせると、ヤフオクよりは安い価格。

それを送ってもらうことにしました。

こんなのをこじらせると、無限ループが始まってしまうわけですが・・・


機械をケースから取り出します。文字盤は、微妙な傷み方ですね。ひどい腐食はありませんが、

透明フィルムの下で変色しているため手を出せません。文字盤はこのままにします。
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文字盤の傷みの割には日の裏はきれいですね。
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筒車の座金の下に、もう一枚座金が。なんでしょうか。
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表側です。受けを外しました。これから各歯車を一つ一つよく見ていこうと思います。
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次の写真は二番車です。直接香箱車と噛み合っているわけではなく、中心カナ、

中心カナ伝え車という二つの部品を経由しています。
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伝え車と噛み合っている部分がだいぶ摩耗していますが、これはゼンマイ切れと

は関係ないでしょう。

赤い錆のようなものも見えます。摩耗粉と劣化したグリスが混ざったところに湿気が入り、

錆びたのでしょうか。

これは中心カナ伝え車。全周の赤いのは、二番車と同じものだと思います。
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以降の三番車~秒車、ガンギ車までは目立つ摩耗や損傷は見られませんでしたが・・・・

最後にチェックした香箱に衝撃の事実が!!

なんと、香箱にヒビが入っています!
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今まで強力なゼンマイが切れた時に道連れになる部品は、二番車とか三番車みたいなところかと

思い込んていて、なぜそこが破損するのか理解できなかったのですが、壊れるのが香箱なら

わかります。強いゼンマイが切れて一気に広がって香箱内周にぶち当たる時の衝撃は

確かに強烈でしょうね。実際、裂けているのはゼンマイの引っかけが入る薄肉の部分です。
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ゼンマイは用意しましたけど、香箱が逝っているとは思いませんでした・・・

とりあえず目的の半分は達成したのであきらめるか、それとも新しい香箱を調達するか。

選んだのは第三の選択肢。文字盤の干支足用に買っておいた粉末ハンダで香箱補修に

チャレンジすることにしました。詳細は機会があったら書こうと思いますが、

粉末ハンダとフラックスを混ぜて患部に塗り、使い捨てライターバーナーであぶります。

出来上がりがこれ。
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余分なハンダを除去して表面を整えましたが、やっぱりハンダは柔らかいのでだめかもしれません。


さて、次に風防です。御覧のようにかなり傷が多く深いため、汎用ガラス風防への交換が

もっとも妥当な対処法ですが、今回はちょっと違う方法を試します。
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以前は自動車フロントガラスの傷取り用キイロビンを使って研磨をしていましたが、それに代えて

高純度の酸化セリウムを使います。道具は同じで、電気ドリルにバフ。

作業を進めていくと、キイロビンよりは明らかに短時間で傷が浅くなっていくのがわかりました。

現金なもので、変化が著しいと作業時間が長くなってもあまりいやにならないのです。

今までに比べれば随分時間をかけて、ここまで来ました。
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雰囲気は水ガラスを塗ったように見えますね。外周の欠けは絶対消えないし、かなり深い傷も

消せないと思いますので、これが限度かな。


分解と洗浄を終えて、組み立てに入ります。まず、香箱。補修した香箱にゼンマイを入れます。
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この時点では何事も起こらず、復活に向けての第一歩を踏み出しました。

この香箱と輪列を取り付けます。次の写真は受けをかぶせる直前の状態です。
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受けをかぶせて丸穴車、角穴車を取り付けました。ザラ回しはOKです。
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アンクル、テンプを取り付けました。テンワが順調に振動を始めました。
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次は日の裏です。元通りに組み付けていきます。
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謎の平座金も、入っていた場所に取り付けます。
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その他の部品も取り付けて、日の裏も完了と思いきや、瞬間日送りがうまくいかず、

組んだりばらしたりの繰り返し。瞬間送りのカレンダーは、注油場所がシビアですが、

なんとか送られるようになりました。
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文字盤と針を取り付け、
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ケースに入れて
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完成。
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この後、タイミング調整をしたのですが、その最中に「ピシッ」という音が。

直後のタイムグラファーのカーブも大きく歪んだので、だめかと思ったらその後

持ち直したので、とりあえず調整を終わらせて裏蓋を閉めました。


それから何事もなかったかのように動いていましたが、「ピシッ」という音がしてから

約2時間後、時計は止まりました(; ;)

やはりハンダでは力不足だったようです。

いずれにしても、補修は急場しのぎ(特にこの機械は)なので、交換しかないでしょう。

いよいよ無限ループか?

部品取りジャンクを買うとそうなるので、ここは香箱単品のみを狙いたいところです。

ざっとオークションを見たところでは出品されていないようなので、またイギミさんか?

でも送料が高いしなあ。ここのところ行ってない近所の時計店に行ってみようかな。


                        (たぶん続く)