続・IWC PILOT CHRONOGRAPHの悲劇

 届いた部品は写真の通りである。知っている人にはおなじみの封筒に入ってきた。封筒の中にはプラスティックケースが二つ。ただの入れ物ではなくてムーブメントケースだ。
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 今まで、何回か文字盤を外す作業をしたが、正しい方法がわからなくて困ったのは、針を取り付けた後の巻真の抜き方である。針を下にしておかなければならないが、平らなところに置いたら針がめちゃめちゃになってしまう。今まではキズミを使ったりしていたが、このムーブメントケースが受けとして使える。それに気づいたのは、かつて黒サブのムーブメントを交換したときだった。

 ムーブメントケースにうまく載るサイズの文字盤ならいいが、そうでない場合はみんなどうしているんだろう。汎用の台なんか見たことないし。

 さて、怪獣はまだ寝静まっていないが、今違うことに夢中になっているので隙を見て作業をすることにした。
 黒文字盤を使うか、白にするかしばし考えたが、けちの付いた黒文字盤はやめて、白にした。文字盤をつけて、カレンダーが切り替わるタイミングに合わせるため巻真を回した。すると、日付は動くが曜日が動かない。文字盤を外してみると、通常は存在すると思われる、ムーブメントと文字盤の間のスペーサーがない。だから文字盤とカレンダー板が干渉してしまい、動かなかったらしい。黒文字盤の裏に付いていた両面テープのような接着剤の目的は、文字盤固定ではなくてカレンダー板干渉防止だったようだ。

 両面テープを重ね貼りしてスペーサーとし、再度文字盤を取り付ける。今度は曜日も動く。
 いよいよ針の取り付けだ。まずサブダイアルから。肉眼では針の穴とサブダイアルの軸がよく見えないので、キズミで見ながら挿入。以前ブラックバードで苦労したので、少々こつをつかんでいるのか、思ったよりスムーズにいった。一番難儀したのは意外にもセンタークロノ針で、2回ほどやり直す羽目になった。永久秒針は位置を合わせる必要がないので、最後にとっておいた。
 針を取り付けたらもう難しい作業はない。分解の時の逆順で作業を続け、一応完成した。

 思ったより白文字盤もいいなあ。模様や段差のエッジがしっかり出ていて、シャープなイメージ。黒文字盤は、白の上に厚い黒塗装をしてあるようで、エッジが丸い上に表面がテカっていて質感が低い。

 一晩たった翌朝、写真を撮った。何か変な感じがする。よく見ると曜日が変わり掛けで止まっている。あわてて竜頭を引き出して曜日板を回そうとしたが、動こうとはするものの定位置に来ない。パニックになって竜頭をぐるぐる回したら、動こうともしなくなった。

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 昨晩確かに、文字盤を取り付けたときには動いていたのに・・・あれから何をしたか、思い出しながら原因を考えてみた。こいつはウェーブスプリングを介して裏蓋でムーブメントをケースに押しつける構造だ。その圧力で、文字盤とムーブメントの間に入れた両面テープを押しつぶしてしまったのではないか。その証拠に、曜日窓から見える曜日板と文字盤にクリアランスが見えない。

 会社で仕事をしながら考えた。無理に竜頭を回したから、歯車が欠けたりしているかもしれない。それならそれで仕方がないが、せめて曜日が変わり掛けの位置ではないところにしたい。でも、文字盤を外すにはまた針を全部外さないといけない。そうすると、針の位置合わせが面倒だし、針の袴が緩くなってしまうかもしれない。時分秒針はちょっと緩いくらいは問題ないけど、クロノ針はリセット時の衝撃で帰零位置がずれるようになってしまう。
 ということで、針を外さずに隙間に紙をはさんでクリアランスを作ることにしたが、作業中に12時間積算計の針が外れてしまった。再取り付け時、案の定だいぶ緩くなってしまっていたが、深めに押し込んだらなんとか固定できた。12時間積算計は事実上使わないから、止まっていてくれればいい。

 竜頭を回してみると、曜日板が動こうとするので、完全に死んではいないようだ。おそらく、文字盤と曜日板の間に入っているドーナツ状の板バネが平らになってしまい、曜日板とムーブメント側の歯車の噛み合いが外れてしまったのだろうと推測する。別の不具合が出てまた分解せざるを得なくなったときか、針の袴がゆるんだ時の対策を思いついたら、ちゃんと直すことにしよう。今は、見るたびに曜日が変わっているカレンダーを楽しむことにする。