時計の精度

 腕時計の精度は、姿勢や温度の影響を受けることはよく知られている。各時計メーカーはそれらを考慮した設計や出荷テストをしているはずだ。わりと有名な?機械式時計を対象とした「クロノメーター」規格(ISO3159)のテスト内容を例に挙げてみると、

1.6時上温度23度で2日間
2.3時上温度23度で2日間
3.9時上温度23度で2日間
4.風防下温度23度で2日間
5.風防上温度23度で2日間
6.風防上温度8度で1日間
7.風防上温度23度で1日間
8.風防上温度38度で1日間
9.6時上温度23度で2日間

で毎日の日差を記録。その数値を元に計算した結果が次の基準を満たしていれば、クロノメーター認定となる。
最初の10日間の平均日差が-4~+6秒
最初の10日間の平均日較差(前日の日差との差の平均)が2秒
最初の10日間の最大日較差が5秒
垂直・水平の姿勢差(1,2日目の日差と9,10日目の日差の差)が-6~+8秒
最大姿勢偏差(最初の10日間の各日差と平均日差との差で最大の絶対値)が10秒
温度係数(38度での日差から8度での日差を引いて温度差30で割ったもの)が±0.6
復元差(15日目の日差から最初の二つの日差の平均を引いたもの)が±5秒

 上記の基準は機械の落径が20mm以上、地板の面積が314平方ミリ以上の場合である。円形の機械なら単純に直径が20mm以上の場合と考えれば、当たらずといえども遠からずだろう。

 一番意外だったのは、我々素人が一番気にする日差、日較差、姿勢差のパラメーターに温度が入っていないことである。温度差が関係してくるのは温度係数と復元差だけ。

 この検査は研究目的ではないから、複数のパラメーターを組み合わせて検査していったらきりがないし何を検査するのかわからなくなってしまうので、まあ納得はできる。あくまで商業ベースの検査だしね。

 なんだか、自動車のモード燃費を思い浮かべてしまったな。あれも測定モードが細かく決められていて、その検査の結果出た燃費だから、実用燃費とは違う。クロノメーター規格も、腕に装着した状態をシミュレートするモードはないから、実用上は期待した精度が出ないことの方が多そうだ。