クロノメーター認定時計の精度

 先日、クロノメーター規格の内容について書いたが、その検査方法に沿って自分の時計を検査してみることを思いついた。検査対象はブラックバード
 温度に関して決められた数値を維持することは、一般家庭では不可能なので「ナンチャッテクロノメーター検定」となるが、出来る限り規定に近づけるよう置き場所を考えることにした。23度は家の中で一番涼しい場所、8度は冷蔵庫、38度は家の中で一番暑い場所に置き、測定時の温度を記録した。
 測定に当たっては、機械を安定させる意味で数日間着用してから時間合わせをし、計測を開始した。ゼンマイの巻き上げは毎日の測定後に実施。
 ちなみに、規定では「断続できる機構は10日目に稼働させる」ことになっているので、クロノグラフを稼働させる予定だったが忘れてしまった。

 その結果が次の表である。合格した項目は平均日差と温度係数、復元差のみ。5日目に日差が大きくマイナスとなり、この時点でナンチャッテクロノメーター認定は取れなくなってしまった。その後はほとんど惰性で測定したようなものだが、とにかくクロノメーター規格というのは意外に厳しいことがわかった。

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 なんと言っても厳しいのは日較差の項目だ。平均日差はプラスとマイナスで相殺しあえるのだが、日較差は絶対値なので積み上がる一方。姿勢差を含めた日差が相当安定していないと、この項目をパスすることが出来ない。
 比較のため、判定基準をクリアするように数字を入れてみたものが次の表だ。これくらい安定していてもぎりぎりで日較差の基準をクリアできる程度。ここだけ注目しておけば、温度係数を除く他の項目は計算しなくてもいいくらいだ。

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 クロノメーター検査は通常裸のムーブメントの状態で行われるらしいから、完成品の精度保証ではない。だからナンチャッテクロノメーター検査にすら通らなくても気にする必要はないと思うし、装着時の精度はまったく考慮されていない規格だから実用的な意味はほとんどないと思う。ただそういう厳しい検査をパスした機械が搭載されているという満足感に浸るのが正しい姿だろう。
 でも、もし完成品の状態でクロノメーター規格をパスしたら、それは大変すばらしいことだと思う。