SEIKO KING SEIKO 4502-8020

http://www.tokyovalley.com/yahoo_blog/article/article.php
時系列が逆ですが、ウルトラクロンよりも前に入手し、分解組立を実施した10振動機です。

今回入手したのは、ジャンクと言えどもかなり高額なものです。
イメージ 1

正直なところ、不動品にここまで出さなくても普通に動くものがもっと安価に手に入るじゃないか、

って思うくらいのものですが、今は不具合品をいじることに喜びを感じている状態なので、

不動品であることに価値を見出したわけです。


さっそく分解を開始しましたが、まず裏蓋が固くて難儀しました。三点オープナーを使ってもなかなか開かず、

一度滑らせて傷をつけてしまいました。ビニールをかぶせていたので被害は少なかったのですが、

逆にこのビニールがすべりの原因だったかもしれません。

機械には特に傷みはないようでほっとしましたが、巻真を抜いたら黒い塊がぽろっと出てきたので、
イメージ 2


見えないところは大変なことになっているのかも。
イメージ 3


機械を取り出したら針を抜いて、文字盤を外します。出てきたカレンダー機構はごく普通の構造のようですが、

使われている部品はロードマチックとかアクタスよりはお金がかかった部品を使っているように見えます。
イメージ 4


実際には見慣れぬ部品もついているのですが、これは瞬時切替のための部品のようです。

細いバネが多用されています。


日の裏側が終わったので輪列側の分解です。一見、今までの手巻き三針と同じように見えますが、

輪列受けを外したらかなり違うことがわかりました。外した瞬間に歯車が飛び散ったので、

バネでも使っているのかと思いましたが、歯車のホゾが受けに貼り付いていたため、

受けと一緒に持ち上げたときにほかの歯車がばらばらになったのでした。

最初は受けに歯車を圧入してあるのかと思いましたが、黒い糊状になった油でくっついていたようです。

アンクルと天真の穴石以外は全部こんな感じで汚れています。ここまで汚れているのは初めてです。
イメージ 5


輪列受けの下には鼓車からの秒針規制リンクが通っていますが、ばらばらになってしまったので

本来の姿がよくわかりません。

このままばらすとさらにわからなくなってしまうと思ったので、その場でああでもない、こうでもないと

歯車やリンクの組み合わせを変え、たぶんこうなっていたのだろうという状態で写真を撮影しておきました。
イメージ 6


その後分解を進めましたが、今までとはけっこう構造が違います。香箱から秒針車までの歯車の数が

多いんです。ネット検索中に引っかかった2chの過去ログで、KSハイビートの輪列は歯車の数が多いとの

記述を読んでいたので、ああこのことかと合点がいきました。

香箱の厚さも違いますね。目視では1.5倍くらいありそうです。蓋を開けてみたら、ゼンマイの厚さも

それくらいありそうです。これをびよよーんとやってしまったら入れるのが大変そう

(蓋が角穴車側なので例の手が使えない)なのと、内部が意外にきれいなので軽く洗ってグリスを

入れるだけにしました。
イメージ 7


次に洗浄ですが、今回は特に穴石まわりを重点的に洗いました。それにしても汚れがここまで黒く

粘度が高いのは、磨耗粉のせいなのか元々モリブデン含有量の多い油みたいなものを使っていたのか。

磨耗粉だったらいやですねー。


洗浄が終わったら組立です。基本的にばらした逆の順で組みつけていきますが、

必ずしもそうではないところもあります。輪列受けは名前がよくわかりませんが4つの歯車とガンギ車、

秒針規制のリンクを押さえ込みます。取り付けに難航するかと思いきや、かぶせた後に上からこつこつと

何度かつついていたら、すんなり入ってしまいました。香箱からガンギ車がスムーズに回ることを

確認してからアンクルを取り付け、テンプを取り付けます。テンワの直径が意外に大きいのですが、

その代わりひげゼンマイが強力なようで、受けを持ってテンワをぶら下げたときの垂れ下がり量は

かなり少ないです。

ここまで終わってしまえば裏蓋側は終わってしまったようなもの。香箱受けをつける前にオシドリ

押すピンを忘れないように。


次は日の裏側です。日付のみなので機構自体はそれほど複雑ではないのですが、細いバネを

多用しているのでその取り付けに苦労しました。何度も飛ばしましたが、何とか見つかるものです。

文字盤をつけ、針をさして一息ついたところでケースに手を入れます。風防を外したかったのですが、

かなり固いので外すのを諦めました。防水のため特殊な接着剤を使っているという話もあるからです

(この時計に使われているかは未確認)。ということで風防をつけたままケースの磨き。

手持ちの機材だけではきれいな鏡面を取り戻すのは不可能のようです。据え置き型のグラインダーが

安ければ買いたいところです。それでも、ぱっと見はきれいになったのでよしとします。

曇っていたベゼルと裏蓋を磨いた後、洗剤と歯ブラシでごしごし。乾燥させてからすべてを合体させて

出来上がり。


タイムグラファーにかけると、かなり姿勢差があるようです。40年以上前の製造とはいえ本来は

公認クロノメーターなので、調整で追い込めると思うのですが、そのやり方がわかりません。

どこで勉強すればいいのでしょうかねえ。

また、秒針の動きが重力に逆らって進む時にぶるぶると震えるのが気になりますが、

しばらく様子を見ることにします。

(注1:この分解組立はWEB上に整備マニュアルがあることを教えてもらう前に実施したものです。)
(注2:この分解組立は近所の時計屋さんの店主から注油について話を聞く前に実施しました。)