Seiko BELL-MATIC 4006-60xx
今回は、「少し違う物を」ということで入手したセイコーのベルマティックです。
文字盤上の姿勢でアラームをonにすると、いつでもベルが鳴る点以外は大きな問題はなさそう。
でも、ばらしていくと4点ほどジャンクの理由がみつかりました。
風防のベゼルに隠れる部分が欠けているため、水が入り放題であること、アラームボタンのパッキングが
ないこと、機械押さえのバネがないこと(代わりに手作りのスペーサーが(^_^;)、
ベゼルにひびが2本入っていること、です。
でもまあ、どれも致命的なものではないので気にしないことにしましょう。
自動巻はマジックレバーですが、ユニットになっているため受けのネジ3本を外すとこうなります。
分解前にいじってみて、アラームと時計の動力は別ということはわかっていましたが、この段階では
アラームのゼンマイがどこにあるのかはわかりません。
とりあえず、自動巻ユニットを外したら日の裏側の分解です。カレンダーの構造は普通のようです。
筒車が何となく違うような気がします。カレンダープレートを外すと、いろいろ見慣れない部品が
見えてきます。写真を撮りながら分解をしていくのですが、どうしても撮り忘れがあって、後で悩むことが
あります。
筒カナがかなり長く、いつも使っている剣抜きでは抜けなかったので、ドライバー2本で抜きましたが、
ちょっとヒヤヒヤしました。
次に輪列側です。受けを外すとこんな感じ。アラーム用のゼンマイは、地板のくぼみに直接入れられています。
全然汚れていないので、このままにしようと思ったのですが、二番受けがゼンマイのストッパーに
なっているため、ゼンマイを取らないと二番車が取れません。仕方なく取り出すことにしました。
これがアラーム用のゼンマイ。
香箱の中もそこそこ汚れていたので、こちらもゼンマイを外して清掃。
香箱の中もそこそこ汚れていたので、こちらもゼンマイを外して清掃。
部品の洗浄後、組立です。地板に二番車と受けを取り付けたら、アラーム用ゼンマイを巻いていきます。
かなりやりにくくて、今度もヒヤヒヤでした。地板とゼンマイの間にある板を入れ忘れたので、2度も脱着を
やるはめになりましたよ(写真は入っていない状態)。
ゼンマイが入ってしまえば、輪列側はそれほど問題ありません。ちょっと歯車が多い程度。アンクルまで
取り付け、日の裏に移りました。こちらも組み付けに難儀するとか悩むようなところはなく、写真の通りに
組み付けていきました。で、カレンダープレートを取り付けたところでアラームの操作をしてみたのですが、
アラームをオンにするといつでもベルが鳴ります。ここは治ってなかった(当たり前か)。
ハンマーの先端あたりに妙な空間があるので、原因は部品の欠品かもと思ってweb検索してみましたが、
どうもそうではなさそう。そこで、アラームの制御をどうやっているのか、
ハンマーまわりを中心に考えてみることにしました。ハンマーには3つの力が働いているようです。
①ハンマーを駆動する、歯が10枚ある星形の歯車。②アラームボタンに連動してハンマーの
お尻を押さえるレバー。③設定時刻になるまでハンマーを留めておくフック。
①、②は問題ないので、③を攻めることにしました。写真を見てわかるように、③は通常バネ④で上に
上げる力が働いています。上がっていればアラームが鳴り、下がっていればフック先端がハンマーの突起を
ひっかけてアラームが止まるわけです。では、このフックの上下をどうやって制御しているのか。
それが、筒車部分にあることがわかりました。筒車には不等ピッチで3つの突起が出ています。
一方、筒車の上に被さっている、一見筒車のようなunlocking wheel、解除車とでも訳せばいいでしょうか、
こいつには筒車の突起と同位相の穴が明いていて、両者の位相が合うと密着し、合っていないときは
筒車の突起の高さ分だけ離れます。位相が合う時というのはアラーム設定時刻になった時です。
正常な組み付け状態では、unlocking wheelの軸方向の位置は変わらず、筒車が上下に移動することに
なります。筒車が下がっているときはアラーム設定時刻ではないのでレバーも下がり、先端がハンマーの
突起にひっかかって鳴動を抑えているわけです。
ということから、文字盤上でアラームがいつでも鳴るというのは、③のフックに問題有りということが
はっきりしましたので、そういう目で見てみますと、フック先端がちょっと反っているようです。そこで、
全体がまっすぐになるように調整し、再度組み付けたところ、推測通りちゃんと動作するようになりました。
この個体、文字盤には4006-6070と印刷されていますが、裏蓋には4006-6041と刻印されています。
また、参考にしたウェブサイトには膨大な種類のベルマティックが載っていますが、その中にもありません。
ニコイチ、改変を繰り返した結果かもしれません。