LONGINES Cal.284

ロンジンの手巻き三針ノンデイトです。ペットネームはわかりません。
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ゼンマイ切れと思われるジャンクです。それ以外にもぐにゃりと曲がったラグ、

裏蓋には開けようとして当てた工具(モンキーレンチあたり?)が滑った痕が何箇所も。
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専用工具とかみ合う12角のうち10角がつぶれています。5回失敗して諦めた、という感じでしょうか。

裏蓋が開かない場合は、まずCRC556漬け(実際にどぶんと漬けるわけじゃありませんけど)&放置一週間。

ホットボンドでハンドルを固定して回しますがびくともしません。そこでCRC漬け2週間放置をもう一回。

これでようやく開きました。

前にやったアドミラルHFも相当苦労した記憶がありますが、ロンジンはどれも固いのでしょうか?

おかげで、製造以来人が触ったことがないように見える機械を拝むことができました。
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Cal.No.は284のようです。機械はスペーサーに機留めで固定され、スペーサーはスナップリング
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でケースに固定されています。裏蓋を閉めずに振り回しても、機械はまったく動きません。

個人的に非常に好ましい構造です。スペーサーを裏蓋で押さえる方法は好きじゃありませんので。

さて、日の裏側から分解していきます。地板全面に模様が入っていてきれいです。
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日の裏押さえが三番車の受けになっているようです。これは初めての構造です。

筒カナが摩擦車になっていて、二番~四番車が香箱真を中心にして同心円に並んでいます。
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これって、いわゆるETA輪列ですよね。

さて、問題の香箱を開けてみます。「SEALED UNIT」と書いてあるふたを開けると、

やはりぜんまいが切れています。
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部品屋さんに尋ねたところ、純正部品はもうないが、同等品(多少寸法は違う)ならあるというので

それを購入。届いたゼンマイを香箱に入れ、ふたを閉めようとしましたが閉まりません。

本来ならここでサイズ違いを疑うべきだったのですが、何をとち狂ったかSEALED UNITだから

固いのだと思って、ふたの外周に面取りをしてしまいました。

しかし、ぜんぜん入らないので削る。まだ入らない。また削る。

いい加減おかしいと気づいたときにはもう遅い。

実は、同時に購入した他の機械用のぜんまいを間違えて組み込んでしまっていたのでした。

ここから香箱探しの旅が始まります。



部品屋さんに事情を話して捜索をお願いしましたが、スイスの取引先2件にもないと言われ、

もう一件回答待ちのところがあるが望み薄、との回答でした。

ヤフオクには香箱単品はもちろんのこと、284搭載機種のジャンクも出てきません。

(部品取りにする気にはならない価格のものはあったけど)

そこで、eBayを覗いてみました。するとなんと、280/284用BARREL COMPが検索に引っかかりました!

値段は本体購入価格に近いのでちょっとためらいましたが、己の不注意さを戒める意味で入札。

(前にも戒めたことがあるような記憶が・・・)

そんな顛末で無事届いた部品を使って、さっそく組み立てました。
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余談ですが、108/1というのはETAの香箱COMPと同じ部品番号です。

考えてみたら、どちらもswatchグループでした。


日の裏押さえに三番車の穴石がついているので、これを先に組み付けます。
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裏返して香箱~ガンギ車までの輪列を取り付け、オシドリピンを挿して受けをかぶせます。
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ロンジンの機械って、これでまだ3個目ですけど、国産やETA、ASの機械と比べると

部品の仕上げがきれいですよね。地板の模様など日の裏側も手を抜いていませんし、

ネジの頭もすべて面を取って磨いてあるし、機留め板も穴を皿もみしてあるし、

組んでいて気持ちがいいというか気持ちが高ぶるというか、高い香箱を買ったのは

間違いじゃなかったと思わせる仕上げです。

もちろん、さらに上を行く仕上げのメーカーはたくさんあると思いますけど、気軽に

手を出せる範囲では満足度が高いメーカーだと思います。
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機械の組立が終わったら文字盤と針の取り付けです。文字盤の裏にはクローバーマークが

並んでいますが、文字盤メーカーのマークでしょうか?
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針もハカマがしっかり作られていて、斜めになりにくく突き当てまで入れれば位置が

出るようになっているみたいです。ロンジン侮りがたし。
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そしてケースに入れ、スペーサー・スナップリング・機留め・巻真を取り付けて裏蓋を閉めて完成です。
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いろいろありましたけど、妙な達成感のあった時計でした。