TISSOT SEASTAR

ティソは初めて分解します。風防の傷みが目立ちますが、全体的にはあまり手をかけずに済みそう。
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中の機械は、ASかETAだろうと根拠もなく推測していましたが、裏蓋を開けてみるとどちらでもないようです。
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受けには "CHs. TISSOT & FILS"とシリアルNo.が。これがTISSOTの正式名なのでしょうか?

地板には784-1という刻印。TISSOT 784-1で調べてみると、自社ムーブみたい。少なくとも、ASや

ETAではありません。生産された年は60年代後半。けっこう古いです。

ローターの外し方でちょっと悩みましたが、留め板の片側を持ち上げてずらすだけでした。
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ローターをひっくり返すと切り替え機構が。
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本体側はこうなっています。ローターがどちらに回っても、左側の金色のギアは同じ方向に回ります。
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自動巻ユニットの裏側はこうなっています。
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タイミング調整しやすそうな緩急針ですね。
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日の裏側です。特に変わったところは・・・ありました。日送り車のピンが2本あるところ、

日車躍制レバーの支点穴が長穴になっている点。
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カンヌキ押さえのオシドリを押さえる部分も変わっています。
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輪列はごく普通ですね。二番受けがやけに大きい感じがしますが。
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もう一つ特徴が。下の写真の真ん中あたりの穴、中に青い樹脂が入っていますが、ここは干支足が入る穴で、

普通のネジ留めではなく樹脂のフリクションで文字盤を留めます。固定ではなく、脱落防止程度の

拘束力しかありません。風防のテンションリングとスペーサーを介した裏蓋でサンドイッチにする

方式ですが、割り切り方がおもしろいですね。
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香箱内はそれほど汚くありませんが、油っ気がないのでゼンマイを出して洗浄、グリスアップ。
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その他の部品も洗浄し、組立開始。この機械はテンプ以外受け石がないので紛失の心配が無く、

ちょっと気が楽です。

輪列を組み付け、受けをかぶせてザラ回し、丸穴車・角穴車・コハゼ、アンクルをつけて動作確認。
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テンプと自動巻ユニットをつけてから日の裏に移ります。
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左上に見える十文字の部品、そこから出ているピンが日車を送るわけですが、この十文字は隣の

中間車1回転につき90゚回されます。そしてこの中間車は一日2回転します。つまり十文字は一日に

半回転だけするのです。これは以前やったロンジンのCal.291と同様、日付の切り替わりにかかる時間を

できるだけ少なくしようという設計なのだと思います(動き始めは23時くらいです)。

また、左下の日車躍制レバーの支点穴が長穴なのは、針を逆回しした時にレバーを逃がし、日車の内爪が

レバーを乗り越えて日付が戻ってしまう前に十文字のピンが日車の内爪を乗り越えるようにするためです。

要するに、Cal.291ではできなかった、針の送り戻しによる日付の早送りができるのです。

これはかなり使い勝手がいいですね。


あとは日車と押さえをつけて
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針と文字盤とローターをつけてケースに入れてできあがり
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今回は特別期待していなかっただけに、新しい機械と出会えたのはうれしい誤算でした。