LONGINES ULTRA-CHRON

今回はロンジンのウルトラクロン10振動、Cal.431です。
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以前ケースを磨いただけのウルトラクロンとは別物です。あちらの機械がきれいすぎて分解する

気になれなかったため、別のを入手しました。バカですね。


ご覧の通り、文字盤がだいぶ傷んでいますが、均一に傷んでいるので遠目に見ればそういう模様に

見えなくもないです。

日車の文字が薄くなっているので、中に水が入って変色しているのかな、と思いましたが、

そこには驚愕の事実が隠されていました。


機械は予想よりもだいぶきれいです。
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ケースから取り出し、文字盤を外してみました。すると現れた日車の文字は全く問題なくきれいです。

あれっ、と思って文字盤を見たら、裏から丁寧にライスペーパーのようなものが貼られていました。
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何で?と思いつつもう一度機械の方を見てみました。
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何となく違和感ありませんか?そうなんです、カレンダー関連の部品が日車を除いて組み付けられて

いないんです! 日車を指で触ってみたら、するすると自由に動いてしまいます。

文字盤の日付窓に貼られた紙は、動かない日車を目立たなくするためのものと思われます。

どういう経緯でこうなったのか知る由もありませんが、どうせ動かないなら日車も取っちゃって

組み立てようと思います。かつての所有者はそう思わなかったようですけど。


日の裏側です。カレンダーがないので部品は少ないです。傷みもありません。
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輪列側です。17石でunadjusted。前のウルトラクロンとはかなり仕様が違いますね。

自動巻ユニットを外しました。自動巻ユニットにはルビーが一個も使われていませんでした。
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秒カナを使ったタイプですね。カナを上から押さえる板バネがついています。
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香箱は"DO NOT OPEN"タイプですが、もちろん開けます。
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中はあまり汚れていませんでしたが、ゼンマイの納まり方にちょっと違和感があります。隙間が

大きいような気がするんです。ゼンマイをはずしてみたら、スリッピングアタッチメントが

かなり長く、香箱内を一周してもまだ余る(重なる)ため、隙間が大きく見えることがわかりました。

これが正常なのか、汎用補修部品なのかはわかりません。
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自動巻ユニットです。ばらすのは簡単ですが、組み立てるのに難儀しそうです。
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洗浄後、日の裏側の緩衝装置を取り付けました。しかし、インカブロックのように簡単に爪が

引っかかってくれず、片方を折ってしまいました。この形、他の時計に使われているのを見た

記憶がないので、交換もできず・・・とりあえず片側だけで留まっているので作業続行。

地板輪列側に香箱以下の輪列を組み付けますが、三番車は一番受けの上になるので後の方が

よいようです。
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三番車、輪列受け、一番受けの上の部品を取り付けました。
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しかしここでまた問題発生。コハゼを留めるネジの頭が小さく、締め込んでもコハゼが外れてしまうのです。

また、このネジがちょっと長いことが原因で、他の歯車の動きを阻害し、止まってしまう現象が出ました。

止まりの原因がネジだとわかるまでにかなり時間がかかりましたが、どう考えてもこのネジは違う

ネジです。分解時の写真と比べても頭が小さいのは明らかなので、分解後に発生したトラブルです。

推測ですが、洗浄から乾燥の間で紛失、そして以前紛失したネジがたまたま出てきて数が合った・・・?

とにかく、このネジでは時計が動きませんので代わりを探します。まず、ご婦人用部品取りムーブ

をチェック。コハゼのネジを外してあてがってみると、具合が良さそうなのでこれに決定。

また何と、さっき折ったキフショックのバネと同じものが使われているのを発見。

ただ、場所が場所だけに交換には気を使う必要があるので、実際の交換はポンス台を手に入れた後に

実施することにしました(いつになるんだろうか)。


さて、コハゼもしっかり固定されたので作業を続行。自動巻ユニットを組み立てます。受けを

機械台に固定しても回ったり外れたりして苦労しましたが、何とか完了。平らなところにガムテープか

何かで貼り付けておいて作業した方が楽だったかもしれません。
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日の裏側を組んで
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ケースに入れて完成。
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今までやってきた自動巻の時計は、記憶にあるものはすべてコハゼが無くてもゼンマイがほどけてしまう

ことはありませんでしたが、こいつはコハゼがないとゼンマイが巻けません(戻ってしまいます)。

おもしろいです。