ORIENT STAR AUTOMATIC 21J

1999年に発売された限定モデルのようです。デザイン自体は通常モデルと同じで、文字盤の色、

裏ガラスの文字、シリアルナンバーの刻印が違う程度だと思うのですが、詳細は不明です。
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ジャンク集めの一環で手に入れたものですが、値段は準ジャンクながら程度は並上の中古でした。

動きも特に問題ないので普通に使って来ましたが、製造が1999年としたらもう12年経過しているから

そろそろOHしてもいいんじゃないかという思いと、普通に動いている時計を自分が分解組立をした時に

どこがどう変わるのかを知りたい、という思いから、分解することを決意しました。


まず、精度のチェックです。所有するタイムグラファーにかけたところ、次のようになりました。
CH(文字盤上) -3sec/D
CB(文字盤下) -6
9H -29
12H -30
3H -30
6H -24
姿勢差最大 約27秒

次の画像は上から順に文字盤上、文字盤下、6時上のタイムグラファーの画像です。
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使っていて、ちょっと遅れる傾向があるのはわかっていましたが、こんな乱れた曲線だったとは

思いませんでした。これが自分のメンテによりどう変わるのでしょうか。


裏蓋を開けますと、大きなスペーサーが目に飛び込んできます。婦人用の機械を使っていることは

裏を見ればわかりますので、スペーサーが大きいだろうとは思っていましたが、ちょっと驚き。
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裏蓋の裏がわを見たら、4年前にOHした記録が。作業を続ける気持ちが急激に減退しましたが、

何とか気を取り直して続行。
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スペーサーを取ると、もう一つ樹脂のスペーサーがありました。こちらは機械と文字盤をつなぐ役目を

担っているようです。
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この時計のケース幅は34mmです。このサイズでボンベダイヤルを使うなら専用品か婦人用しか

選択肢が無いと思いますが、今時ボンベダイヤル用ムーブなど無いでしょうから、選択の余地は

なかったと思います。メンズ用ムーブを使ったボンベダイヤルモデルは、だいたい40mm以上

ありますよね。


さて、スペーサーと文字盤を外しましたが、まだ何か円盤状のものが付いています。
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何かと思ったら日車でした。かなり苦労しているな、と思いました。
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曜車と押さえバネを持ってくればすぐにデイデイトになる機械です。日の裏側から分解していきます。

曜ジャンパーを外します。曜車がないので、この部品はいらないのでは?と思いましたが、その下の

U字形のバネを押さえるのに必要な部品であることがわかりました。
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日車押さえ、日車その他いくつかの部品を外しました。見慣れない形状の部品もあります。
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巻真と鼓車、吉車のつながりもちょっと変わっています。鼓車と吉車は直接動力を伝達しません。

そのため、巻真に二カ所の四角断面部があります。手巻きの時は巻真→吉車→丸穴車

→(伝え車を介して)角穴車と伝わります。針回しは一般的なつながり方ですが、日付の早送りは

鼓車の2カ所の爪が見慣れぬ部品を押したり引いたりして行うようです。
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自動巻は、みなさんご存じのマジックレバーです。
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マジックレバーを外して受けを外すしたところです。この時計は秒カナを使っていたんですね。

今まで使っていて全然気づきませんでした。
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香箱を開けたら、手前には比較的新しいと思えるモリブデングリスがついていましたが、

奥には油っ気がありません。おそらく蓋を開けてゼンマイを取らずに洗い、手前だけにグリスを塗って

蓋をしたのではないでしょうか。
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何がよいのか正しいのか、私にはわかりませんので、自分の信ずるところを貫いて全部洗います。


それにしても、OH歴はたぶん一回だけだと思いますが、ほとんどのネジが笑っています。

ネジ頭の溝深さが浅い傾向があるのは確かですが、どんな人がどんな作業をしたんでしょうね。



洗浄が終わったら組立です。二番受けをつけた後にガンギ車がつけられなさそうなので、二番車と

並べて取り付けます。
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その後、香箱、角穴車、三番車、四番車、丸穴車COMP?、テンプ等を取り付けます。
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地板の大きな出っ張り部分は、削り出しではなく別部品で構成しているようです。

しかも樹脂を採用するあたりは現代の機械という感じがしますね。

自動巻ユニットをつけて、輪列側はほぼ完了。
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しかし、ココで問題発生。機械をある角度に傾けると振りが弱くなり、そのうち止まるのです。

状態をよくするはずが悪くなってしまった? 途方に暮れながら、とりあえずテンプを外して

観察。よく見るとひげゼンマイの間隔が狭いところがある。拡大してみたら、接触しているらしい

ことがわかりました。そこで、修正にトライ。先日のブライトリングデイで技術者から教わった、

「ひげゼンマイでいじるのはココだけ」というところをちょいちょいと。そしたら3回目のちょいちょいで

びっくりするくらいきれいに戻りました。偶然とはいえ、うれしいです。

この結果、機械を傾けても止まらなくなりました。

精神的に追いつめられていたので、この辺の写真はありません。


ひっくり返して日の裏側をやります。写真を見ながら組み付けていきます。
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日車を取り付けます。
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この後日車押さえをつけるのですが、日送り爪は後の方がよいようです。写真ではついていますが

実際の作業では一度外し、日車押さえをつけてからまた取り付けました。

日車押さえがついて、峠は越えました。
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この後は文字盤、針をつけてケースに入れてローターをつけて完成。
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作業後のタイムグラファーの画像を載せてみます。先ほどと同様、上から文字盤上、文字盤下、6時上です。
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全体的に進み方向にシフトしたこと、最大姿勢差が小さくなっている(18秒)こと、変な曲線が

だいぶ無くなっていることなど、多少分解組立の効果はあったのかなと思っています。

(時計を立てた姿勢で曲線が乱れるのが気に入りませんけど)