ZODIAC triple calendar moonphase

だいぶ前からずっと欲しいと思っていたムーンフェイズ付きの時計を、やっとゲットしました。

トリプルカレンダーもついています。
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このデザインは割と普遍的というか、トリカレムーンフェイズならこれしかないというデザインだと

思います。トリカレムーンフェイズだと、かなりぼろいジャンクでもそれなりの値段になってしまうので

なかなか縁がなかったのですが、開始価格が高めのものに入札したところ、争うことなく落札と

なりました。曜日の切り替わりが不調とのことでしたが、根拠もなく何とかなるだろうと思ってました。


届いた品物は年相応に使い込まれた感じで、決してジャンクではありませんでした。めっきも一部

剥がれてはいますが、きれいなものです。再めっきしているかもしれません。

順番で行けば、分解はだいぶ後になるはずですが、トリカレムーンフェイズの中を早く見てみたい、

ムーンフェイズを早く使ってみたいという気持ちが強かったので、かなり前倒しで作業に入りました。

さっそく裏蓋を開けます。
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大きな損傷はありませんが、小傷が多いですね。それだけ数多くのメンテを受けてきたと

いうことでしょうか。

ミドルケースとベゼルで文字盤を挟んでいるタイプのようなので、ベゼルを外します。針の間隔は

かなりシビアなようです。
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文字盤はだいぶ薄汚れていますが、ここはぐっと我慢してそのままにします。
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針を外すのに難儀するかと思いましたが、思ったより簡単に外れました。文字盤は固定ネジが取り付け

られておらず、フリーでしたのでそのまま外しました。そしてついに、トリカレムーンフェイズ

モジュールとご対面です。
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クロノグラフみたいにレバーやバネがたくさん並んでいます。とりあえず、曜車、月車、月齢車を

外しました。複雑そうに見えますが、躍制レバー、早送りレバー、戻しバネが4セットあるだけ、

と考えれば気持ちは楽です(^_^;
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写真を撮りながらどんどん分解していき、最後のカレンダープレートを外しました。ここからがベース

ムーブメントになります。ETA 1100という刻印が見えます。
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ここからは普通の手巻き三針ノンデイトと同じですのでどんどん分解していきます。

輪列側です。この機械はテンワが銀色ですね。受けに「128」という刻印がありますが、"zodiac 128"で

検索しても何もひっかかりませんでした。
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丸穴車の軸にはカラーが入っていることがほとんどですが、この機械はありません。

それよりも丸穴車の下はこんな状態になっていました。
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一番受けの裏側もこんなです。何があったのでしょうか・・・
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輪列はご覧の通りです。
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香箱内は比較的きれいでした。主ゼンマイを取り出してみたら、まだ新しく、けっこう強いゼンマイです。

トリカレムーンフェイズを駆動するためでしょうか。


いつものように部品を洗浄し、組み立てに入ります。

まず地板にテンプの耐震装置とガンギ車の保油装置を取り付け、注油。オイルのたまり具合を確認し、

輪列を取り付け。受けをかぶせてザラ回し、丸穴車・角穴車等、アンクルを取り付けたら爪石・ガンギに

注油。そしてテンプ取り付け。テンワはスムーズに振動を始めました。そしてテンプ受けの耐震装置を

取り付けます。
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この機械の耐震装置の受け石は、下の写真のように溝が付いています。ロンジンの機械と同じです。

目的は同じだと思います。
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日の裏側に移りまして、巻真まわり、日の裏車まわりを組み付け、トリカレモジュールの

ベースプレートを取り付けます。そしたら筒車、曜送り車、月送り車を取り付けます。
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ここで不具合が発覚。曜送り車の固定ネジを締め込むと、若干の遊びを持っていなければならない

はずの送り爪が動かなくなってしまうのです。曜車の動きに難があるのはこれが原因なのでは

ないかと推測しましたが、ネジ、爪、車をマイクロスコープで観察しても、見てわかるような異常は

ありません。爪か車を少し薄くすればいいはずですが、スマートではないですね。

一番可能性があるのは爪の座繰り(ネジが入るところ)の表面の荒れだと思うので、ここを均してやれば

いいはずと考え、金属磨きをこの座繰りに入れ、ネジを入れてドライバーでネジをぐりぐりやりました。

この作戦はうまくいったようで、ネジを締め込んでも爪が軽く動くようになりました。

後は、写真を見ながらバネやレバーを組み付けていきます。
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簡単にメカニズム解説しますと、24時間で1周する日送り車と供回りする①曜送り爪が曜車を回します。

①曜送り爪と一体になっている②日送りピンが、③月齢送り車と⑤date starを一歯送ります。

⑤date starと連動している月送り車が31日で一周して、④月送り爪が月車を一歯進めます。

(いずれの部品名も勝手に私がそう呼んでいるだけで、正式名は違う可能性大です。)


曜車、月車、月齢車を取り付けます。
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文字盤と針を取り付け。干支押さえのネジは代替品が見つからなかったので無し。ベゼルで押さえられる

ので、文字盤が浮いてくることはないと思います。
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針の取り付けはかなり微妙でした。針の穴がだいぶ緩んでいるので、しっかり留まる感触まで押し込むと

入りすぎで、文字盤や針同士が干渉してしまいます。今のところ干渉せずに動いているようですが、

ちょっと衝撃を与えるとずれる可能性があります。ずれてしまったら対策を考えることにします。

ということで、ケースに入れて完成です。

「ETA1100」とか「ZODIAC128」ではトリプルカレンダーモジュールを含む情報はほとんど

ヒットしないのですが、「ZODIAC1100」でほんのわずか出てきました。'50年代の機械らしいですが

(製造も'50年代かどうかは不明)、思ったより姿勢差がなく、十分実用できる精度が期待できそうです。
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