RICOH PUNCH その1

リコーの時計ですが、パンチというのはちょっと変わった名前です。ちょっと調べてみたら、

今はなき「週刊平凡パンチ」の創刊記念で作られた時計のようです。読者プレゼントのような形で

世に出たのか、あるいは一般に販売されたのかは不明です。

12時下や裏蓋のマークには確かに見覚えがあります。
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平凡パンチの創刊は1964年とされています。オリエントのグランプリ64も64年発売でしたよね。

同じ時期の製品ながら、デザインが全然違うのがおもしろいですね。


商品説明では「時間もよく合い調子よく動きました」となっていましたが、実物は針回しがまともに

できずカレンダーも途中で止まったまま切り替わりません。分解前提の落札でなかったら返品していた

ところです。

裏蓋を開けました。機械に傷みはないようです。特別な装飾もないようですね。
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ケースから取り出し、文字盤、日車押さえを外しました。カレンダーは瞬時切換式のようです。

写真一枚で動作が理解できる簡素な構造です。
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分解中、こんなものが出てきました。最初はケースのネジ部の切り粉かと思ったのですが、そうでは

ないようです。とりあえず捨てずに保管することにしました。
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日の裏側の分解が終わったので表に移ります。自動巻の受けを外しました。下の写真上部の大きめの

歯車左下にある菱形の部品は自動巻のコハゼだと思いますが、そうであれば常に相手側に押しつけておく

ためのバネがあるはずです。さっき見つけた変な部品は、たぶんここに付いていたのではないでしょうか。
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こんな感じですかね。
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色合いからすると、シェラックで固定してあるようです。我が家にもシェラックがあるので、これを

使って修理してみることにしました。
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ものの本を見ますと、アルコールランプで熱するようなことが書いてありますが、持っていませんので

まずドライヤーで加熱。何分経っても溶ける感じはありません。そこで、今度ははんだごてを

持ち出しましたが、ふにゃふにゃになる程度で溶ける様子はありません。そこで、今回はやむを得ず

シェラックでの修理を諦め、エポキシを使いました。
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分解を続けます。受けは一枚のみですが、外してみてびっくり。歯車3つがきれいに並んでいます。
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もう一つおもしろいものがありました。次の写真に写っている香箱です。一見香箱に角穴車が

載っているように見えますが、実は香箱に蓋がない構造です。
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香箱真も角穴車と一体になっています。
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さて、洗浄が終わったので組立です。この時計に使われている耐震装置は、その形状からNovodiacと

思われます。バネの取り付けは工具があると楽ですが、ないと大変です。今回、爪楊枝を加工して

簡易工具を作りましたが、まあまあ楽でした。

耐震装置、保油装置に注油後、輪列を組み付けていきます。まずは香箱から二番車手前まで。

香箱からの動力は、中心にある分針カナを経由して伝え車に伝わります(ピンボケ失礼)。
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ここから二番車に伝わり、三番、四番、ガンギとつながっていきます。
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こんな構造になっているのは薄型化を狙っているのかな、と思いますが、本当にこれで薄型化されて

いるのか?という疑問も湧きます。


その後順調に部品を取り付け、修理した自動巻のコハゼも取り付けました。
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次に日の裏側に移ります。分解前に針回しがまともにできなかったので、注意して組み立てます。

一通り組み付けて針回しをしてみたところ、やはりだめです。鼓車と小鉄車の噛み合いが浅く、すべって

しまうのです。その原因は、小鉄車の穴か地板側の軸の摩耗と思われます。本来は部品交換しか

ないのでしょうが、鼓車をもう少し強く小鉄車側に押せれば何とかなりそうです。その観点で

改善しようとすると、思いつくのはカンヌキの先端を左に曲げる案、小鉄車の穴を締める案です。

ということでカンヌキ先端を曲げてみました。曲げすぎると折れそうな気がするので、あまり力を

入れられません。一度やってみてあまり効果が見られないので諦め、小鉄車の穴を締めることにしました。

ここでまたポンス台の登場です。先端球面のアタッチメントで小鉄を挟み、叩きます。一度叩いたら

現物に当てて確認し、足りなければもう一度叩く、というのが基本だと思いますが、それをやらず、

いきなり3回叩きました。そしたら見事に「ピシッ!」という音とともに小鉄が飛散しました(T_T)

この小鉄車が部品単品で出回るとは思えないので、これで完全に部品取り品と成り下がりました。

他の一般的なモデルでこの機械を使っているものがあればいいのですが、期待薄です・・・


というわけで、非常に不本意な結果となってしまいました。本来なら、こんな記事は載せたくない

のですが、ちょっと変わった機械だったし、実は続きがあるので没にしませんでした。

また、その「続き」はいつになるかわかりませんが、早めに書きたいと思います。