ORIENT STAR CLASSIC WZ0111FD

いやー毎日暑いですね。私の部屋はエアコンがないので劣悪環境ですが、めげずに分解してます。

今回の時計はオリエントスターWZ0111FDです。ついこの間まで現役の製品でしたが、今はもう

生産終了となっています。

このシリーズは今、秒針規正・手巻きのついた新型機械に置き換えが進んでいるようですが、

この時計に搭載されている機械の特徴は、何と言ってもパワーリザーブメーターでしょう。

新品が2,3万円で買えるパワーリザーブメーター付き腕時計は、中華ムーブ搭載の怪しげな時計を除くと

オリエントだけだと思います。

その一点だけでこの時計を落札しました。
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かなりハードな使い方をされたようで、ケースからブレスまで傷だらけ。ブレスはかなり延びていて、

もとの仕上げがヘアラインだったのかポリッシュだったのかわからないくらいの状態ですが、

長さは私の手首にも十分なので、磨いて使うことにします。
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裏蓋を開けて機械を取り出します。巻真を抜くためのオシドリピンがみつからずあせりましたが、

竜頭二段引きにすると押すところが出てきました。最初は気づきませんでした。
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ケースから出たところで針を抜きます。一度も分解暦がなさそうですが、そのせいか針を抜くのに

かなり力が必要でした。

針を抜いて文字盤を外そうとしたら、足が一本取れていることが判明。どれだけハードな使い方を

したのでしょうか。

文字盤を外しました。出てきたのは偏心した日車。
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日車の下には躍制レバーと日送り車。やけに部品が少ないように見えますが、これは多分カレンダー受け

というやつで、この下に日の裏側の部品があります。
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カレンダー受けを外しました。写真一番上に見える歯車がパワーリザーブメーターです。
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ここを見たいために落札したようなものですから、詳しく見ていきたいと思います。

パワリザ車の右下で噛み合っている小さな歯車は、香箱真です。ローターにより角穴車が回ると

ゼンマイが巻かれ、パワリザメーターが動くようです。

香箱の日の裏側です。メーターの動力源はこの二つの歯車です。
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パワリザ車を外しましょう。外した後に見える歯車は、香箱の回転を伝える伝え車と思われます。
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裏から見るとこうなっています。地板に圧入されています。
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パワリザ車を分解します。思ったより複雑な構成です。
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これ以上は文字だけでの説明は困難と思われるので、断面図を書いてみました。実際の寸法や

レイアウトとは違いますのでご注意ください。
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パワリザ車は、歯車の噛み合いが4段になっています。最上段Aは香箱真と噛み合っていて、

ゼンマイが巻かれるとメーターの数字が増える方向に針が回ります。

一方、最下段Dは伝え車を介して香箱車と噛み合っていて、香箱が回るとパワリザメーターが

減る方向に動きます。

これらの駆動力の「蓄積」と「消費」は、腕につけていれば同時に行われるので、リジッドに

つながっていたら時計は動きません。そこで、間に遊星ギアが入って両者の衝突を防いでいます。

遊星ギアは二段になっていて、上側Bは最上段の歯車Aと一体化している歯車A'と噛み合い、

下段B'はメーター針の軸と一体化している歯車Cと噛みあっています。この遊星ギアの回転軸は

歯車Dから生えています。

まず、ローターが回ると香箱真が反時計回りに回り、歯車Aが時計回りに回ります。この回転が

歯車A'-B-B'-Cと伝わり、メーターの針が蓄積方向に動きます。

次に時計が動き出しますと、香箱の回転が伝え車を経由して歯車Dを反時計方向に回します。

遊星ギアの軸は歯車Dに固定されていますので、Dの回転に伴って反時計回りに公転を始めます。

それと同時に自転もはじめますが、A'-Bの噛み合いとB'-Cの噛み合いはギア比が違うため、歯車Cが

反時計回りに回され、メーターの針が消費方向に動きます。

針は0-40の範囲のみで動くように規制されていますが、Cの軸を無理矢理止めているようですので

どこかに摩擦車機能がないと機械に負担がかかるはずです。たぶん、歯車Cとその軸がそうなっていると

思うのですが、実はこれに気づいた時点で組立が終わっていたので、確認することができませんでした。

遊星ギアの動作をご存じの方は、この機械のパワリザ原理がわかっていただけると思いますが、

私の作文能力ではこの辺が限界です (^_^;


分解を続けます。自動巻はセイコーの機械とほぼ同じです。輪列も変わったところはありません。
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分解後は洗浄して組立です。思い切りはしょります。
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文字盤に足を接着して
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磨いたケースに入れて完成です。
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今回の機械は傷が大変多いため、手作業では傷が消えないだろうということで、以前から検討していた

電動工具を導入してみました。エッジを完璧に残すことは無理かもしれませんが、もっと習熟すれば

それなりに満足のいく仕上がりになるのではないかと思っています。

ブレスの写真のバックル右の2コマは余りコマ未使用品ですが、たぶん他人様は気がつかないでしょう。

1秒凝視するとわかってしまいますが。