その後のオリエントスターWZ0111FD

ちょっと前に完了したWZ0111FDですが、その後の使用で不具合が発覚していました。それは、

フルに巻き上がってからさらに使い続けると、みるみるうちに進む。というものです。

かつて同様の傾向が見られた時計がありましたが、それは30分ウォーキングの中で出た現象で、

通常の生活の中では出ませんでした。

しかし、今回のWZ0111FDではデスクワーク中心の日常の中で発生したので、かなり大きい問題です。

ということで、何をどうするかずっと考えていたのですが、進む要因はたぶんゼンマイの香箱内での

摩擦抵抗が大きすぎ、ローターからのトルクが直接輪列に伝わったためと推測しました。

それを確認するため、角穴ネジをドライバーで回し、ゼンマイを巻き上げてみました。

すると、確かに7周ほど巻いた後に急に手応えが重くなり、テンワの振動が早くなることがわかりました。


最初に考えたのは、今使っているグリスが合っていないために抵抗が強くなっているかもということで、

違うグリスを使ってみました。以前からあるモリブデンペーストです。

これで再トライしてみたら、さっきよりさらに抵抗が強くなり、全く逆効果であることがわかりました。


他に摩擦抵抗を強くしている要因はないか? ということでゼンマイの香箱内周に接する部分を

磨いたらどうかと考えました。しかし、磨いて効果があったとしてもすぐ荒れてしまうことは

明白で、持続性がないと判断してボツ。

残るのは、ゼンマイの外端に溶接されている突っ張り板の曲げ具合を変えることです。自動巻の

香箱内では、この突っ張り板が広がろうとする力でゼンマイを香箱内周に押し付け、必要な抵抗を

生み出しています。今はこの突っ張り力が強すぎる状態なのだろうと考え、曲げ方をもう少しきつく

してみることにしました。どれくらい曲げればいいかなんて全くわかりませんから、とりあえず

さっきよりはきつくなったかな、というレベルで再度香箱に組み付け。そしてトルク変化のチェック。

ちょっと前の段階から、香箱を機械に取り付けるのではなく香箱に角穴車のみ取り付けて、

ホットボンドで接着した棒を回すようにしていますが、この方法でくりくり回していくと重くなる

境目がありました。やっぱだめかな、と思いつつ、もう少しなじませようと回している時に

ゆっくり回すと重くならないことに気づきました。実際の使用ではゆっくり巻き上がるはずなので、

これでいいのかもしれないと思い、このまま完成品にしました。そしてワインダーでしばらく回し、

進みがないことを確認しました。ここまではもくろみ通りです。あとは、パワーリザーブが40時間

以上あればOKなので、ワインダーから外して放置。翌々日、42時間経過後に停止。

やったー!!!!!!うまくいきました。

メーター0手前で止まったので、この位置で0になるように針を挿し直します。

それにしても、真の原因がわかりません。新品の時からこうだったのか、途中でゼンマイ切れなどの

修理があったのか、何かの弾みでこうなってしまったのか。気になって仕方がないので、出品者に

聞いてみましたら、今までローター外れの修理しかしていないとのことなので、最初からきつかった

可能性が高いのではないかと思います。

香箱の中の微妙なバランスをあらためて実感した今回の顛末でした。

やってる時は必死だったので、写真を撮る余裕などありませんでした。したがいまして今回画像は

ありません。ご了承下さい。