SEIKO LORDMATIC 23J 5606-7150
トラブル続きだったせいか、セイコーの56系をいじりたくなりました。
何個もやっているので要領はだいたい把握しているし、その中でも振り当たりとか
パワリザが短いなどのトラブルはないので、安心感があるからです。
そこで今回はこのロードマチック。デッドストック級という触れ込みのものを落札しました。
いつも傷だらけのジャンクばかりいじっていて、どこがポリッシュでどこがヘアラインか
わからないことも多いので、機会があればロードマチックに限らず新品状態がわかる個体を
狙っていきたいと思っています。
この個体は確かに継続使用された形跡はなく、せいぜい試着が繰り返された程度の外観です。
しかし、風防内側の曇り、針のでこぼこ(腐食?)が一抹の不安を感じさせます。文字盤の
"SEIKO"ロゴもうねっているような・・・
一振り二振りすれば動き出すので、致命的なダメージはないと思いますが。
裏蓋のないワンピースケースですので、ベゼルを外して風防を取ります。ベゼルも一度は外した
痕があります。巻真を抜いて機械を取り出し、針と文字盤を外します。ひっくり返してローターを
外しました。機械は確かにきれいですが、ほとんどすべてのネジの溝がぐだぐだになってます。
二つあるはずのダイヤフィックスの一方がありません。墓荒らしが入ったことは間違いなさそうです。
曜車を外したところです。
分解を進めていくと、珍しいものを発見。金属製の曜送り爪です。今まで分解した56系は
すべて樹脂製でした。
それから、揺動レバーの爪が金属製のタイプ。これは2個目くらいですかね。
表側に移ります。こちら側は特に変わったことはないようです。
一通り分解した後、香箱をチェック。角穴車を締め付けてゼンマイを巻き、スリッピングアタッチメント
の滑り具合と何周で解放されるかを調べました。巻ききってから滑り出すまでに抵抗がかなり
強くなります。このままでは振り当たりの原因になりそうなので、とりあえず中を見てみました。
これがデッドストック級の時計の香箱でしょうか? あまり使ってなくても、古いとこうなっちゃう
のかな。蓋のめっきが一部剥がれていますね。怪しいなあ。
ということで、香箱もいつも通り分解洗浄。洗浄が終わったら組立です。
まずは輪列側。受けが一つなので、忘れ物がないように。たくさん軸があるので受けをかぶせるのは
難しそうですが、かぶせる前に二番~四番、ガンギまでのかみ合わせをできるだけ合わせておけば
一発で入ることも珍しくありません。
ザラ回し後、アンクルを取り付けて注油し、テンプ、角穴車等を付けます。
なくなっていたダイヤフィックスは、ジャンクから拝借。
表側がほぼ終わったところで日の裏側へ。こちらは写真を撮り忘れてしまったのでこれだけ。
日の裏側の詳細は、こちらをご参照下さい。
さて、曲がっていたSEIKO"ロゴは
折らないように修正して
文字盤と針を取り付けました。
折らないように修正して
文字盤と針を取り付けました。
この後、タイミング調整をして(精度は優秀でした)ケースに入れて、実精度を測るべく時刻合わせを
してから放置したところ、なんと!秒針は元気に動いているのに、長短針は時刻合わせをした時のまま。
隊長! この原因はだいたい一つしかないのであります。
交換用部品があるかどうか探したところ、ジャンクから見つかったのでこれを洗浄し、交換しました。
その部品とは、二番車です。二番車が中央にある機械では、二番車に筒カナという部品を圧入します。
ここの回転抵抗によりゼンマイの動力を針に伝えますが、セイコーの56系などでは二番車がこの
摩擦車の機能を持っています。かしめが緩んで針を回せなくなったら再度かしめればいいのですが、
今回は交換部品が見つかったので再かしめは次の機会にすることにします。
分解の時、カナの部分が長いこと動いていたかのように黒かったので、おかしいとは思ったんです。
(それに、商品説明を見直したら、ちゃんと長短針動かずと書いてありました(^_^; )
二番車に摩擦車が組み込まれている機械は、56系の他にAS1900系などがありますね。
以前、ラドークロノメーターでも同様のトラブルに見舞われたもんです(遠い目)。
そんなこんなで、何とか完成しました。分解して洗って組み立てておしまい、となるはずが、
けっこう手間取りました。
でも、新品の時の様子が想像できるきれいなものはいいですね。
ブレスもオリジナルみたいだし(短いけど)。