WALTHAM Americana Automatic

今回はウォルサムです。このケース形状は、これまでオリエントやセイコーで見ましたね。
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文字盤下には"SWISS MADE"とありますが、裏蓋には "WALTHAM CO. U.S.A."。
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セイコーの場合はベゼルリングがあって、オリエントとこのウォルサムはベゼルがないという違いは

ありますが、それぞれ善し悪し(好き嫌い)はあると思います。


分解前の状況は、ゼンマイを巻いて時計を振ると動き出すものの、数秒で止まります。

また、商品説明では針の置き回りがあるとのこと。

裏蓋を開けてみました。機械はAS 1863。そんなに傷んでいないように見えます。けっこう薄型設計の

ようですね。自動巻きのモジュールが特徴的です。二つの石は受け石のようですが、固定バネが

見当たらないので分解できないのでしょうか。
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機械を取り出して日の裏側から分解していきます。1863という型番は初めてですが、日の裏の

ようすは馴染みがあります。カレンダーは瞬時切り替えで日付が変わるタイプですが、

ちょっと気むずかしいところがあるみたいで、必要なところに注油をしないとうまく切り替わって

くれないことが多いです。
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次は表側です。自動巻がどうなっているか興味津々です。
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ローターからの伝え車みたいなものと受けを外してみました。オットセイのような形のコハゼと切り替え車が

ありました。構造自体は簡単みたいです。また、巻き上げは片方向でした。
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輪列は二番車がセンターにないタイプです。これは、摩擦カナが二番車についている構造という

ことですので、針の置き回りがあるということは、この摩擦カナが空回りするということです。
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落札前に商品説明を見た時は、筒カナをかしめればいい程度に思っていましたが、これはちょっと

やっかいかも・・・


香箱は、分解前のスリップチェックではやっぱりモリコートDXを使った時よりいい感触なので、

ゼンマイはそのままで香箱真まわりのみ拭いて注油としました。今まで良かれと思ってやっていた

香箱の分解掃除は、もしかしたらほとんど逆効果だったかもしれませんねえ・・・
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分解後の洗浄前に、二番車をどうするか考えました。

下の写真が二番車ですが、二段になっているカナ(銀色の小さな歯車)の下段が香箱車と噛み合い、

大きな歯車を介して輪列を動かします。
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一方、上段のカナは日の裏車を介して筒カナに伝わり、長短針を動かします。ですので、上段のカナが

くるくる回るということは二番車の回転が長短針に伝わらないということで、秒針が元気よく回っても

時刻は一向に進まないということになります。

この不具合は以前やったラドーの「クロノメーター」でもありました。この時はドナーとして

同型の機械を入手しましたが、今回の場合はあまり見かけない機械であること(と思ったら、

ヤフオクには複数出ていますね(^_^;)部品一個のためにいちいちドナーを探してられっか、

という気持ちもあり、不具合品を修正して使うことにしました。


摩擦カナの部分を拡大してみると、カナと二番車の軸の間に摩擦材のようなものがあります。

ここが磨り減って空回りするようになったと思いますので、ここを何とかすればいいはずです。

色々試した結果、カナと摩擦材の間にタガネを入れてコンコン叩くことで摩擦材を変形させ、

フリクションを発生させることができました。部分的な変形なので、長くはもたないかもしれませんが、

その時はその時です。


洗浄が終わり、組立開始です。修正した二番車の摩擦カナにはほんのちょっと注油してあります。
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受けをかぶせ、テンプ、丸穴車、角穴車等を取り付けます。
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自動巻の部品に受け石が3つ使われています。珍しいといえば珍しいかも。
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表側はローター以外取り付け終わりましたので、次は日の裏です。
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しかし、組立途中に撮ったのはこれだけでした・・・
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過去の経験から、必須と思われる部分には注油をして組み付けたのですが、カレンダーがぱちんと

進みません。関連する摺動部で注油してないのは躍制レバーの山だけなので、ここにも注油しました。

結果的にはこれでちゃんと動くようになりましたが、日車の爪全数にオイルをなじませる必要が

あります。このために針を送ったり戻したりするのは大変です。そこで、筒車とカレンダーをつなぐ

伝え車(中間車?)を外し、露出した爪を押し下げては離すを繰り返しました。
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日車を送り続けて半周ほど回ったところでオイルが全体になじんだのか、それ以降はかしゃっと

瞬時切り替えするようになりました。伝え車(中間車?)を戻します。
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文字盤をつけて針をつけます。針を拭いている時に、秒針が曲面になっていることに気づきました。
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ほとんどの時計は平らなんですが。

いつも通りケースに入れて
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完成。
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このケース、先日のラドーゴールデンホースよりもバネ棒とケースの隙間が狭いため、曲げたバネ棒と

革厚の薄いストラップの組み合わせでないと装着できません。落札時にぺらぺらのビニールストラップが

ついていたので何とか使えていますが、これがなかったら途方に暮れるところです。

しかしこのままビニールストラップを使うのはいやなので、なんとかせねば。


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