EDOX KINGSTAR3000 ETA2782
今回はエドックス。前々回のミドーに続いて、初めて分解するブランドです。
EDOXは最近徐々に知名度を上げているようですね。
ガラス風防の傷が多めですが、ケースやベゼルはそれほど傷がありません。
どんな機械を積んでいるか楽しみでしたが、裏蓋をあけてみると割と見慣れた
機械がそこにありました。今も昔もETA載せのようです。
とは言っても、Cal. No.としては初めてになるETA2782です。
よく見るとテンプのインカブロックがないですね。しかし、幸いにもETAのジャンクは
そこそこ在庫があるので、ドナーには困らないでしょう。
ケースから機械を取り出します。長短針はけっこう傷んでいるように見えますが、
文字盤は問題なさそうです。
日の裏側です。ちょっとゴミが多い程度で問題はなさそうだと思います。
しかし、日車押さえを外したら、その下には水が入った痕跡がありました。
この機械のカレンダーは疑似瞬時切り替えですが、そのキモは二つ上の写真右下に見える金色の
日送り車にあります。これを分解したことはないので詳細な構造はわかりませんが、
日車の内爪に当たってからバネに力を蓄え始め、ある角度になったら強制的に解放するようになっているはずです。
日車の内爪に日送り爪が当たった時に日車が若干動くので、全く動かないロレックスと比較して
格下のように書いている記事を見たことがあります。ヲタ的視点ではそうかもしれませんが、
日車が動かないのはロレに限ったことではないので、ロレマンセーのネタとしては弱いんじゃないでしょうか。
そんなことを書いているうちに日の裏の分解が終わりました。
表側の分解に取り掛かります。
自動巻きモジュールの裏側。
香箱を含む輪列にも傷みが見られます。
テンプのインカブロックは、ジャンクの2783からもらいました。
外観が似ていても細かいところは結構違うようで、面白いと言えばおもしろいのですが、
部品を紛失すると代わりを見つけるのが大変です。洗浄後の乾燥中にコハゼバネを紛失してしまったので
インカブロックを取った2783からもらおうとしたら、全然違うバネでした。
仕方がないので部品箱にあった丸いコハゼバネを切ったり曲げたりして作りました。
香箱の汚れがひどいです。香箱車側は表面が腐食している部分がありましたが、蓋側の汚れは
洗ったら取れました。
洗う前にスリップチェックをしたところ、ゼンマイが滑った時に一周ほど戻ってしまうことがわかりました。
一周戻ってしまうと、パワリザが7時間前後減ってしまうので、ここは対策が必要。
分解して取り出したゼンマイのスリッピングアタッチメントを心持ち平らに伸ばしてやります。
グリスは自作8201ですが、今回からモリブデン含有量を倍増したものを適用しました。
再組立後のスリップテスト結果は良好。滑り始めの感触もいいし、滑り量も
香箱内周の凹み間隔分で小刻みに滑っていることが確認できました。
洗浄後、組み立て開始。輪列を載せていきます。
受けをかぶせてザラ回しし、アンクル、丸穴車、角穴車、テンプを付けていきます。
そして自動巻きのモジュールを取り付けます。通常は自動巻きの伝え車と角穴車の
噛み合わせに注意すればいいのですが、この機械はどうも座りが悪くてすぱっと
位置が決まりません。適当なところでねじを締めたら、しばらくして止まってしまいました。
どこが干渉しているのかわからなくて困ったのですが、こしょこしょ小刻みに振りながら
ガタが一番少なくなったところで締めこんだら止まらなくなりました。
ここで日の裏側に行きまして、組み立てていきます。後は日車押さえを取り付けるだけの段階。
そして文字盤、針を取り付けます。
ケースに入れてローターをつけます。ローターのベアリングは転がり軸受(ボール)になる前の滑り軸受け。
回り具合はボールベアリングに比べて明らかに劣ります。巻き上げ効率にどれくらい影響するかは不明ですが。
完成しました。
デザインに取り立てて特徴的な部分はないのですが、なんだか訴えかけてくるものを感じます。
なぜでしょうね。