LONGINES 890.1 分解洗浄編

今回はロンジンの自動巻き時計を分解します。文字盤にモデル名が書いてないので、

何て呼べばいいかわかりませんが、外観は国産の普及型機のような、高級感の感じられない

デザインです。
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裏蓋もあっさりデザインです。
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シリアルNo.?と"STAINLESS STEEL"のみが刻まれています。

その裏蓋を外すと機械が出てきますが、意外にきれい。
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Cal. No.を探すと、L890.1という文字が見つかりました。この機械は初めてですので、

ピンクページで主要諸元を調べてみました。それによると、初出は1975年、直列ツインバレル、

8振動、トリオビス緩急針、パワーリザーブ36Hとのこと。ツインバレルでパワリザ36H?

分解前の症状ですが、コハゼが効いていないようで、手巻きしてもローターを回しても、

戻ってしまう状態でした。

とりあえず分解してみることにしましょう。ケースから機械を取り出します。

オシドリのピンを探しましたが見当たらず・・・この金色のプレートが巻真を留めているようです。
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さて、このケースですが・・・正面、サイドがヘアラインになっています。しかしよく見ると、元々は

すべてポリッシュだったのではないかと思えます。ラグのエッジ部分、チューブ周辺にポリッシュが

残っているからです。
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正面とサイド間の面取り部分がポリッシュですが、一部ヘアラインがはみ出したりして、

わりとずさんな作業ですね(^_^;
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パイロットウォッチのように全面ヘアラインというのもいいのですが、このケースは形状自体に華がないので、

全面ヘアラインでは大変つまらないものになると思いました。かといって全面ポリッシュも似合いそうもない。

ということで、正面のみヘアラインとし、他はポリッシュとすることにしました。一番楽だし。


さて、機械を分解していきましょう。まず針と文字盤を外しました。文字盤の裏はきれいに文字盤メーカー?

のイニシャルが刻印されています。
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'75年の機械ということで、きっとあちこちコストダウンの跡が見られるものと思っていましたが、日の裏は

思ったよりも手がかかっているように見えます。
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日車押さえを外しました。日躍制レバーが変なところにあること、地板から日送り車に突き出ている

バネのようなものが目を引くところです。
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日送り車自体もちょっと違うようです。ひっくり返すと、中にバネが仕込んであるのが見えました。
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おそらく日付は瞬時切り替えなのでしょう。

吉車とその横の青い樹脂部品は日の裏側からは外せませんでした。
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表側に移って、自動巻きの受けを外しました。そこには自動巻きの部品だけではなく、手巻き関連の

部品も入っていました。各部品のたたずまいはロンジンらしさを感じます。
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一番受けを外します。二番車が中央になく、三番車と秒カナが噛み合った輪列です。
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このタイプの輪列ですと、三番車がダブルになっているか、秒カナを押さえるバネがあるのですが、

この機械はどちらでもありません。御覧のように、立派な秒カナですので、その自重で秒針の

ふらつきを抑えられるということかもしれません。
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さて、香箱です。直列ツインバレルということですが、そのつながり方は香箱1の香箱真→ゼンマイ→

香箱車1→香箱2の真→ゼンマイ→香箱車2→二番車・・・なんてイメージをしていたのですが、

実際には二つの香箱真は直結されていました。
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この辺の構造は実に巧妙で、上側の小さな香箱を角穴車として使っているのです。

ゼンマイ内蔵の角穴車とも言えると思います。

二段重ねの状態で、いつもの香箱チェックを行ったところ、約15周で滑りが出ました。単純に

考えれば、パワーリザーブが70時間くらいあってもよさそうなものですが、実際はどうでしょうか。


また、下側の香箱の裏には歯車がついていました。何のためかわかりませんでしたが、のちに

これが摩擦車であることがわかりました。
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最後は巻真周り。各部品の機能はわかりますが、独特のレイアウトですね。
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そしてこれが謎の樹脂部品。本当は腕が3本あったのが2本折れてしまいました感全開です。
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後でわかりましたが、これは日付の早送り爪です。だから爪が1本でも残っていれば実用上の問題は

ないのですが、これが折れたら・・・と思うと怖いですね。

一応、香箱内の画像を載せておきます。大きい方は自動巻きの香箱、小さい方は手巻きの

香箱と同じです。
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このあといつも通りの洗浄です。今回は予洗いにWAKO'Sのクリーナーを使ってみました。

正直に言って、はっきりわかるような洗浄力の違いはありませんでした。気持ち落ちやすいかも?

という程度。揮発の速さはかなり違うので、洗ったものを乾かす時に部品が汗をかきにくい点は

メリットかもしれません。

まあ、初回ですから。今後継続使用する中で違いが出てくるかもしれませんので、その際は

またレポートしたいと思います。



その後メタルクリーナーでの洗浄ですが、ここでまたやってしまいましたよ。凝りませんね。



長くなりましたのでここで中断します。次回は組立編です。