最近の悩み

本格的に腕時計の分解を始めてから、3年半くらいになるんですが、悩んでいることがあります。

それも一つや二つではなくて、大小取り混ぜるとそこそこの数になります。

その中の一つであったガラス風防の傷の処理については、少しだけ解決して気が楽になっていますが、

もう一つ、今一番深刻なのは、「自動巻き時計の短いパワリザ」です。

たいていの自動巻きムーブメントは、仕様上40時間程度以上のパワリザを持っています。

メーカーの諸元表で「42時間以上」と書かれていても、問題がないうちは50時間近く動いていたりしますが、

これはメーカーの言うパワーリザーブが、フル巻き上げ状態から時計が止まるまでの時間ではなく、

諸元表にある精度を保証する期間であるためと思われます。

しかし、私が日ごろ相手にする時計は、保証するような精度を求められていませんので、私が

これから書く「パワーリザーブ」は全巻きから止まるまでの時間のことを意味します。

そんなパワーリザーブの個人的基準としては、二つの時計を中一日で交互に使えるパワリザ、

すなわち38時間(少しマージンを取って)以上と考えています。

今まで分解してきた時計の9割以上はこの基準に入っているのですが、中には外れるものがあります。

完成直後は良くても徐々に短くなっていったり、最初から短かったり(20~30時間程度)。


パワリザが短い理由としては

1. スリッピングアタッチメントが早く滑り始めている

2. 切換車への注油による動作不良

3. 切換車自体の不具合

4. ローターベアリングへの注油過多

5. 自動巻き受けのホゾ穴摩耗

などが考えられます(輪列側の問題はないという前提です)。

そこで、パワリザが短い時計が出たら、何が原因なのかを切り分けるため、手巻きまたは

ワインダーで十分巻き上げ、止まるまでの時間を計ります。

もし40時間程度動いていたら、問題は自動巻きにあるので上記の1.以外について調べます。

もし短かったら、香箱系に問題がある、と判断して1.について調べます。

ここまでわかっていても、ダメなものはなかなかOKにならないんですよね・・・


この後何回かにわたって、具体例について書いていこうかと思います。