WALTHAM New Port 25Jのメンテ

八月は自分の趣味より家の野暮用に時間を取られてしまい、まともに時計いじりができませんでした。

結局、ブログも一度しか更新ができませんでしたし。

だから分解洗浄組立ケース研磨のフルコースは、かなり久しぶりという感じです。


さて、今日の時計はウォルサムのニューポートというモデル。薄く見えるようにデザインされた

ケースとローマ数字インデックスが特徴。メッシュブレスは純正のようです。
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ポッコリ膨らんだ裏蓋を外すと、出てきたのはウォルサムHT824。テンプのところに刻印がありませんが、

実体はどう見てもETAの2824ですね。見た目はそれほど傷んでいないんですが、

竜頭が回らないので巻真を見たら、まっ茶色になっていました。
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ケースから機械を取り出しました。文字盤も部分的に腐食しています。残念。
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干支足が二本とも折れてます。残念(;_;) 補修用干支足での修復を試みることにします。
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巻真はボロボロに錆びて、竜頭側に残った方も掴むところがない状態。どうしよう。
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とりあえず機械の分解に入ります。まずは表側から。まずは自動巻きモジュールを外します。
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テンプ受けの微動緩急装置はトリオビス。微調整が可能な高級仕様です。
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どんどん分解していきます。
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巻真は錆びているだけではなく、先端のガイドも折れて無くなっていました。満身創痍というかなんというか。
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そして次に日の裏側を分解していきます。
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分解後、香箱チェック。いつものようにホットボンドでつないだドライバーを回すと、7回転くらいのところで

ゼンマイが滑ります。滑るのはいいのですが、3回転近く滑ってしまいます。これでは、またパワリザが20時間程度

ということになります。香箱の中自体はそれほど汚れていないので、できれば手を付けたくなかったのですが、

ゼンマイを取り出して洗って、D5を少量つける程度にします。
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洗浄後、地板のインカブロック取り付け・注油からスタート。
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輪列を取り付けていきます。
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受けを取り付けたらザラ回しをやって、アンクル・テンプ・丸穴角穴車を取り付けます。
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表側が終わったら、日の裏側。部品のトラブルもなく、問題なく組みあがりました。
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巻真は前回のテクノス スカイライトの時に活躍したジャンクからもらいました。

巻真の破片が残った竜頭は、「ビザール」でさびを取った後にVISSIN液にじっくり漬け込みました。

竜頭本体がダメになってしまわないか心配でしたが、ほとんど影響がありませんでした。


そして最後のトラブルシューティング。足の折れた文字盤に補修用干支足を付けます。

文字盤側にロウ(ハンダ)付けするのがベストですが、熱で文字盤表面を傷めるのがいやなので、

エポキシ接着剤を使います。その次に悩んだのが、足を文字盤に付けてから機械に取り付けるか、

足を機械側につけておいて、その上に文字盤を乗せるか、です。

前者の方法が普通だと思うのですが、ちょっとした位置ずれや足の倒れにより、機械に入らない

ことが予想されたため、後者の方法をとることにしました。機械側に足を取り付けて固定してから、

接着剤を塗布。はみ出した接着剤が日車についたりしたら最悪ですので、量は少なめにしました。
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位置合わせは文字盤中央の穴と筒車のセンターを同心にしつつ、カレンダー窓から見える数字が

真ん中に来るようにしました。そして重石を載せて、この状態で半日放置。

硬化したかな、と重石を外してみたら、ず、ずれてるぅ(;_;)

というわけでやり直し。今度は文字盤側に干支足を接着することに。ケガキ線は入れたものの、

足の位置がどれくらい精度が出ているかは不明なので、最悪は再やり直しの可能性も。

硬化を待つ間に、ケースや自動巻きの組立などできることはやっておきます。
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翌日。恐る恐る文字盤を機械にセット。先っぽは入ったので、「これはいける」と思ったのですが、

根もとまで入りません。強く押したら、片側の接着が取れてしまいました(;_;)

仕方がないので文字盤と機械を直接接着することにしました。

変なところに接着剤を塗ると、後が大変になるので(いろんな意味で)、

機械の側面から文字盤にかけてG17クリアーを塗布することで文字盤を固定。

接着剤が固まったところで針を取り付け、ケースに入れてようやく完成。
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文字盤の足折れの補修について、もっといろいろ試してみる必要がありそうです。