OLYMPIA ORIENT CALENDAR 19J SWIMMER

今回はオリエントのオリンピアオリエントカレンダースイマー19石です。
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入手したのはだいぶ前ですが、周囲に独特のカットが入っている風防(ヒビ入り)の

交換のめどが立たず、長らく放置されていました。結局、同じものは手に入りませんでしたが、

普通のタイプが見つかったので、今回手を付けることになりました。


比較的大柄なケースですが、中は昔ながらの?手巻き機械が入っています。

見た目はそっくりでも、いろいろ改良されながらT型、N型、L型と進化していったようですが、

この時計にはL型が使われているそうです。

そのL型機械は、まずまずの状態です。
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では、ケースから取り出して、日の裏側から分解していきましょう。
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日の裏側、輪列側、どちらから分解を始めるのが正しいのか?たぶん、正解というのはなくて、

やりやすい方でやればいいと思っていますが、私はいつも日の裏側から分解していきます。

その理由は、筒カナと二番車の結合を解くのに筒カナを抜くか二番車を抜くかを考えた場合、

筒カナを抜く方が楽だと考えているからです。

摩擦車の機能が別のところにある機械の場合は、どちらでも変わりはないのですが、だいたい

いつも日の裏側から分解していますね。


そんなことを書いている間に、日の裏側の分解が終わりました。
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分解前のチェックで薄々わかってましたが、案の定裏押さえのばねが折れていました。

普通ならドナーから・・・となるのですが、なぜかこの機械のこの部品は在庫が潤沢なので、

新品(というかNOS品)を使います。
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次に表側を分解します。写真はすでに分解が始まってますが・・・
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一番受け、三番受けを外したところ。
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香箱の中はきれいでしたので、ゼンマイの取り出しはせずに香箱真のみ取り外し、洗浄しました。
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オリエントも、シチズンと同様角穴車のネジが逆ネジです。なんででしょうね。

でも、角穴車ネジの締め込みが楽なので(コハゼでロックされる方向なので)、その点はいいです。


で、いつも通りパーツクリーナーで粗洗浄したところ、針の夜光が簡単に取れてしまいました。

しまったと思いましたが、夜光が一部黒く変色してたので、夜光の入れ直しもいいか、と前向きに

考えることに。


洗浄完了後、組み立てを始める前に針に夜光を入れます。

一般的な夜光の入れ方は、針の裏側から夜光を盛るように塗ります。メーカー製の針には、

塗膜が薄い割によく光るものが塗られていますが、残念ながら私が入手したものはあまり

光りません。同じ膜厚だとまともに光らないのです。粒子も粗くて表面がざらつきます。

針メーカーはどんな夜光塗料を使っているのか・・・ご存じの方が見えましたらご教示を

お願いしたいところです。


というわけで、今回使う夜光塗料はこれ。
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チューブ入りで使いやすいのですが、時計に使うことは想定されていません。

揮発成分の割合が多いため、針に塗った程度の量ではまともに光らないうえ、

乾燥するとヒケが出ます。そこで、粉末の夜光を少し加えます。写真のパレット左下に

見えるのがそれです。

塗布方法は、塗料の表面張力を利用した一般的な方法ではなく、テープに針を貼り付けて

針の溝を塞いでおき、そこに塗り込む方法を取りました。
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この方法だと、粘度の高い塗料を使った場合でも表側のデコボコが防止でき、

平滑になるのです。

チューブから出したるみっこメディウムと粉末を混ぜ、それを針に塗ります。

機械に取り付けた時に干渉しない程度に、できるだけ厚く塗ります。

ちょっと粉末が多かったようでぱさぱさになってしまいましたが、このまま乾燥させます。


乾燥させている間に機械を組み立てていきます。

まずは表側から。いつも通り緩衝装置から取り付け、注油します。
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ダイヤショックは分解せず洗浄しましたが、三番車の方がきれいになりきらなかったので、

分解することに。

そして、輪列を並べます。
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この後は、受けをかぶせてザラ回し、アンクルを取り付けて動作チェック、

そしてテンプを取り付けて、動作をチェックして、表側は完了。

もちろん、各部への注油や雁木車、アンクルのエピラム処理はしてますよ。
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次は日の裏側です。巻真まわりの部品を取り付け、針送り、カレンダーと

部品を取り付けていきます。
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実は、巻真まわりを最初に組み立てるのが一般的みたいです。巻真がついていれば、裏返す時の

ハンドルになったりするので便利なのはわかっているのですが、私の場合一番受けが

ついていない状態で鼓車・吉車を取り付けるのが苦手なので、いつもこの段階で付けています。


さて、この機械を組み立てる時のワンポイント。日車押さえを付ける段階では、

日車のジャンパー(躍制レバー)は付けないでおきます。そして、日車が押さえられたら

ジャンパーを取り付け、ネジ留めします。
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なぜこんなことをするかというと、この時計は日車のガイドが地板ではなく日車押さえに

あるため、日車押さえを取り付ける前は日車の位置が決まっていません。

そのため、日車の位置を出しつつバネが飛ばないようにジャンパーを押さえ、日車押さえを

取り付けなければなりません。これはけっこう難易度が高いです。

その対策として、ジャンパーを後付けする仕様になっているものと思います。


カレンダーの動作チェックをしたら、文字盤を取り付け、例の針を取り付けます。

よーく見るとアラはありますが、カビが生えたように黒ずんでいたものに比べると、ずっと

マシです(と自己弁護)。
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磨いたケースに入れて、タイミング調整して
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完成です。
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なんか、風防の飾りっ気がなくなって、普通の時計になっちゃいましたが・・・

これはこれでいいかな。