ROLEX DAYTONAって書いてある時計の分解

ロレックスのデイトナです。残念ながらパチですが、私のものではなく会社の同僚の所有物です。
イメージ 1


東南アジアに出張した際に、現地価格としてはけっこう高額で購入したとのこと。

購入当時は動いていたが、しばらくしたら止まるようになってしまったそうです。

悪名高い中華7750ベースで6時秒針の時計ですから、直らない可能性が高いので、

あまり乗り気にならなかったのですが、W家(同僚のこと)の家宝だそうなので、引き受けることにしました。


帰宅後。しばらく放置すると止まるので、動いているうちにタイムグラファーに。
イメージ 2


一番疑わしいところを調べるため、文字盤を外します。自動巻きのデイトナのデザインは

好みではないのですが、これはこれで悪くないのかなあ、などと・・・w
イメージ 3
イメージ 4



一番怪しいのは、7750本来の秒針位置である9時から6時位置まで動力を伝えるギア列です。

だいぶ前にポルトギーゼのパチを記事にしましたが、基本的には同じです。4つの伝え車を介して

秒車を駆動しています。ポルトギーゼは秒針だけでしたが、デイトナは30分計、12時間計も

移動させているので、すげー歯車の数になります。初めて見ましたが、思わず唸ってしまいました。
イメージ 5


問題なのは秒針のギア列だけだと思うので、まず4つのうち1個だけを外して動かしてみます。

これだと動いていますが、元に戻すと数秒後に止まります。次に、各伝え車に注油して動かして

みました。すると、止まることなく動きました。

そこで、秒針をつなぐ前とつないだ時で振り角等がどれくらい変わるか調べるため、タイムグラファーに

かけてみました。上がギア外し、下がギア入れの状態です。
イメージ 6
イメージ 7


ギアを入れると若干振りが落ちてマイナス歩度になりますが、思ったほどの差は見られませんでした。

振り角の絶対値はちょっと少な目ですね。分解注油によって振りが大きくなればいいですが、

中華ですから変わらない可能性もあります。

とりあえず様子を見るため押さえ板をかぶせないまま一晩放置しましたが、朝見ると動いてました。

そこで、次に押さえ板をかぶせてねじ留めし、そのまま放置。もし帰宅後まで動いていたら

なおる可能性がさらに高まるかも。

わくわくしながら帰宅すると、なんと、動き続けているではありませんか。

これは何とかなるかもしれない。さっそく分解に入りました。

すでに機械台に乗っているので、そのまま日の裏側から分解していきます。
イメージ 8
イメージ 9
イメージ 10


そして表側を分解します。
イメージ 11
イメージ 12
イメージ 13


香箱は、よく見るとふたが閉まりきっていませんでした。これが不調の原因かどうかは

わかりませんが、さすが中華。肝心なところがピンボケですが、ご容赦ください。
イメージ 14


その香箱、中は油っ気がないものの、きれいでしたので香箱真まわりのみ洗浄し、

8200を注油するのみとしました。
イメージ 15


洗浄が終わったら組み立て開始。
イメージ 16


いつも通りインカブロック?から取り付けます。
イメージ 17


そして輪列を乗せ、受けをかぶせます。
イメージ 18


丸穴車、角穴車、アンクル、テンプを取り付け、クロノカムまわりを取り付けます。
イメージ 19
イメージ 20
イメージ 21


この辺まで進んでから、ハックレバー未取り付けに気付いたのは内緒の話です。

次にクロノグラフ受けを取り付け。
イメージ 22


クロノグラフ部品を取り付けていきます。次の写真はオシレーティングピニオン。

スイングピニオンと呼ばれる方が一般的のようです。
イメージ 23


この部品は、下の歯車が四番車と噛み合っていて、常時回転しています。

そして上の歯車が秒クロノグラフ車に噛み合った時にクロノグラフ秒針が回るのですが、

その切り換えは上のホゾを少しずらすだけ。ON/OFFでピニオンが振れるような動きを

します。「スイング」ピニオンと呼ばれる所以です。なかなかすごい発想だと思いますね。


その後、自動巻き受けをかぶせます。
イメージ 24


バネを二個取り付けます。このバネは、自動巻き受けを付ける前に取り付けようとすると

かなり苦労します。
イメージ 25



実は後でわかるんですが、この時切換車と伝え車がうまく噛み合っていなくて、巻き上げが

できない状態になっていました。それを直すために修正をしたところ、今度はリセットハンマーを

取り付け忘れてしまいました。それを取り付けようとした際、何かのはずみでカムを動かしてしまい、

日の裏側の12時間計の部品が外れてしまいました。それに気づくのにも時間がかかりました。

ちょっとした不手際が不手際を呼び、相当なロスタイムにつながってしまいました。

注意力が足りないのでしょうが、なかなか治らないですね・・・


さて、次に日の裏側を組み立てていきます。巻真まわりを取り付けたら
イメージ 26


12時間計関連部品を取り付け、本来秒針を挿すところに出車みたいなものを付けます。
イメージ 27


サブダイヤル変換モジュール(勝手に命名)の受けをねじ留めしたら、30分計のところに

また出車みたいなものを圧入し、サブダイヤルの位置を変えるための歯車を取り付けます。
イメージ 28


押さえ板をネジ留めして文字盤を取り付け、秒針だけ挿して動作を確認します。
イメージ 29


しばらく動かして止まらないので、このまま一度ケースに入れて、クロノグラフを作動させたまま

腕につけて就寝。朝になっても動いていたので、上述のトラブル解消後、すべての針を取り付けました。
イメージ 30


さらにしばらく動作確認してからケースに入れ、タイミング調整。
イメージ 31


姿勢差はありますが、振り角も期待通りに回復し、かなりいい結果になりました。
イメージ 32


ということで完成しました。
イメージ 33


いつまで動いているかはまだわかりませんが、一日や二日では止まらないのではないかと思います。
これでW家の家宝も安泰か?

何と、一日もたずに止まってしまいました。(;_; )

ずっとタイムグラファーの上に乗せているんですが、振りが変動しているわけではなく、歩度も

大きな変動はなし。止まる直前の状態を見たいのですが、なかなか遭遇しません。

気が付いたら止まってます。こういうのが一番やっかいだ・・・

明日持ち主に返却しようと思ってましたが、しばらく手元に置いて足掻いてみますか・・・