ETERNA-MATIC Centenaire 21Jの分解

今回の時計は、エテルナのCentenaire。エテルナの時計の分解は初めてですね。

以前からエテルナマチックを分解してみたいと思い続けていたのですが、

どの時計もけっこう高値になってしまうため、なかなか手に入れられませんでした。

今回なぜか高値にはなりませんでしたので、ようやく落札できたのでした。

Centenaireというのはフランス語らしく、意味は英語のcenturyと同系なのでは

ないかと思います。100石ってことはないだろうし、エテルナ100周年記念?

エテルナという会社についても、ETAと関係があるくらいの知識しかもっていなかったので、

分解前にちょっと調べてみました。


1856年 11月7日、医師のヨセフ・ギラーと、学校の教員をしていたウルス・シルド は
エボーシュ製造会社の「ギラー&シルド」を設立

1876年 完成品の時計製造に進出

1905年 社名を「エテルナ」に改名

1926年 エボーシュグループ設立

1932年 エテルナはその傘下にETA(エタ)を設立

1938年 最初の自動式時計を発売

1948年 Eterna-matic自動ムーブメントを開発。5つのベアリングを模した
デザインがブランドロゴに採用された

1956年 100周年を記念して「センターレ」自動式時計を発表

1962年 エテルナマティック3000を発表。当時、自動ムーブメントと日付窓のついた
腕時計としては世界最薄

2006年 150周年を記念して、自動式「キャリブレ3030」を発表

エテルナが現存していることは知っていましたが、ゾンビではなかったんですね(^_^;


複数の引用元を並べると、おおむね上のようになるわけですが、エテルナがエボーシュ部門を

分離したタイミング(1932年)と、フォンテンメロン等とともにエボーシュグループを作った

タイミング(1926年)がどうも合いません。グループを作る前にETAが存在していなければ

ならないはずなんですが、6年も逆転しています。

この辺について、違うことを書いているブログがあったのでその記述を要約しますと、


「エボーシュSAが1926年に設立され、AS、FHF、AMの3社でスイス・エボーシュ全体の

80%のシェアを持つ業界最大手のメーカーとなったが、当初、ETAは参加していなかった。

しかし、翌年エボーシュSAはさらに9社を傘下におさめ、シェアを90%にまで伸ばしたため、

ETAも傘下に入らざるを得なくなり、1934年エボーシュSAに参加を決定」


この4行だけだとグループができた時にはETAもあったように受け取れてしまうのですが、

この文章の前に「ETAはエテルナがエボーシュSAに対抗するために作った」と書いてあるので、

これも考慮してみると、

1926年に発足したエボーシュSAが勢力を伸ばしてきたので、これに対抗するために

1932年にエテルナのエボーシュ部門を分離してETAを作ったが、差は広がるばかりなので

グループに入った。

ということになるのでしょうか。

エボーシュメーカーからマニュファクチュールになったのにまたエボーシュ部門を切り離した

理由が気になっていたので、時系列的にもこちらの話の方が納得できるんですが、真相はいかに?


さて、1956年 100周年を記念して「センターレ」自動式時計を発表 とあります。

これはWikipediaからの引用ですが、このセンターレがCentenaireのことであれば、

この時計はやはり100周年記念だったわけですね。
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製造年ははっきりしませんが、もしかすると'50年代末ころ?50年以上は前の時計でしょうが、

外観は比較的良好です。見返し部分が汚れているように見えるのは風防とケースの間か、

ケースと文字盤の間か。

ケース、裏蓋はこすり傷が多いですが、深い傷は無いのでリューターのみで仕上げたいと思います。
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分解前の機械の状態ですが、見た目はまあまあ。タイムグラファーにかけてみると、

振り角がやや小さく遅れもありますが、まあまあといったところです。
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巻き上げ効率については、半日着用後放置で4時間しか動いていませんでしたので問題あり

ですが、分解によってこれ以上悪くなることはないでしょう。


さて、ケースから機械を取り出し、針と文字盤を外します。日の裏側にペルラージュされているのは

あまり見ないですよね。
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カレンダーがないので、構成はシンプルです。
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緩衝装置はインカブロックとパラショックの合いの子のような構造です。なんていう名前なんでしょうか。
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続いて表側です。仕上げはきれいで、ネジの頭もピカピカ、結構いい感じですね。
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ETERNA-MATICの上にある"BREVETE"は、特許の意味らしいです。Cal.は1429U。

この機械、ETA2472とそっくりなんです。ETAとそっくりなのは当たり前ですが、やはり本家の意地か、

差別化か。コストはETAよりかかっていると思います。

次は自動巻きモジュールの裏側ですが、こちらは同じと言っていいでしょう。
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自動巻きモジュールを取り去ったところです。
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分解が済んだら香箱チェック。滑りは問題ありませんが、巻いている途中で変な

感触が伝わってきます。ふたを開けてみると油っ気は問題なさそうですが、変な感触が

気になるので分解することにしました。
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分解してみると、特に異常はみつかりませんでした。主ゼンマイはスリップアタッチメントが

別体になっているタイプでした。
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洗浄後、まず香箱から組み立てましたけど、油とのマッチングがなかなか決まらなくて、

自作8201改⇒モリコートDX⇒8200とやり直しをする羽目になりました。

それが終わったら、地板に緩衝装置と保油装置を取り付けます。
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裏返して輪列を乗せ、組み立て済の一番受け等を取り付けます。
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ザラ回しがOKなので、アンクルを取り付けます。アンクルは、上面がピカピカで

面取りもしてあるものでした。きれいですね。
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テンプを乗せて、緩衝装置を取り付け。快調に動いています。
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次に日の裏側に行き、部品を組み付けます。
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文字盤と針を付けたら、磨いたケースに入れて機留めで固定します。
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この状態でタイミング調整をし、いい線が出たところで自動巻きを取り付けます。
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裏蓋は面積が広いこともあって、リューターのバフ掛けでは時間がかかることが予想されたので

グラインダーを使用、仕上げはリューターでした。

こうして、香箱の組立でちょっと時間を食われたものの、大きなトラブルなく

作業が完了しました。
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機械の構造自体は目新しいものはないのですが、ETAよりも上質な部品を使ってあり、

なかなか楽しめました。

パワーリザーブは47時間あり、問題ありませんでした。ただ、段々減っていく可能性があるので

経過観察が必要です。