セイコー56系の揺動レバー

今回も前回に引き続き、セイコー56系の揺動レバーの話題です。

前回は、ゴムのり系の3Mプレミアゴールドを使用し、何とか使えそう、ただし耐久性は期待できず、という結果(途中経過)になりました。

今回は、新しく見つけた接着剤を試してみます。それは、これ。
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基本的には二液式のエポキシ系ですが、細かい鉄粉を混ぜ込んであるので鉄並みの強度を持っているそうですよ。ほんとかな?

昔、会社でデブコンという金属補修剤を使っていましたが、その仲間みたいです。

開封後でも25年以内に中身が固まってしまったら無償交換してくれるそうです。すごいですね。


これを使って補修する揺動レバーは、この時計から取ります。
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2011年11月にやったものですが、直後に早送りできなくなり、放置されてました。

ちゃっと分解して揺動レバーを取り出し、分解します。そして実体顕微鏡の下で、歯車に慎重に接着剤を塗布した後、爪を貼り付けます。
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隙間、爪の切れ目にも接着剤を充填し、余分はできるだけ除去。硬化具合は使い切れず残った接着剤でチェック。

一昼夜で十分硬くなったようなので、再び組み立てて、機械に戻します。期待と不安に打ち震えつつ、動作チェック。

ところが、期待に反して一日も送れないうちに壊れた模様。曜車を何とか回せる程度。

顕微鏡で見てみると、爪と歯車は固定されているどころか、両者の間に液状のものが。

注油みたいなことは何もしていないので、接着剤の成分と思われます。

この部品のように微細な部分の接着は、エポキシ接着剤がその性能を発揮できないのかな。

一度しかやってないので断定はできませんが、この接着剤はたぶん決定打にはならないでしょう。

結局、前回使った3Mのプレミアゴールドで再度接着しなおし、とりあえず使えるようにしました。


もっと確実な修理方法は、ヨシさんからもコメントをいただきましたが、部品を作るしかなさそうです。

友輝さんのブログに書かれていた補修部品が、頼んで手に入るならぜひ試してみたいのですが、相手にしてもらえるかな・・・

3Dプリンターを使う件については、今までほとんど調べたこともなかったのですが、個人で手に入るレベルの3Dプリンターは樹脂を溶かして押し出し、塗り重ねていくタイプしかないらしいですね。

ノズルの太さが0.4mmだか0.5mmなので、それ以下の寸法の形状(精度)は出せない、重ねあわせ面は強度が低い、などいいところがない感じでした。

ちょっと調べている過程で、シリコーンモールディングという方法が出てきましたが、これは今回の目的に対しては熱可塑性材料で型を取るやり方とそれほど違いはないようで、やろうと思えば材料はあります。

しかし、あの部品に求められるのは、日車は確実に送りつつ、禁止時間帯に早送りしようとしたら破損せず確実に滑る、絶妙なスリップ特性だと思います。

上記のような作り方でそれが出せるのか、非常に疑問です。

じゃあどうするか。微妙なスリップ特性の実現が難しいなら、滑らせない前提で考えたらどうか。

その場合、禁止時間帯では壊れる可能性があるので、爪を可倒式にしたらどうか。

蝶番などの構造は入れられないので、材料の弾性で可倒式にできないか。

板ゴムから切り出せないかな・・・形状とか、ちょっとイメージが湧かない  ← 今ここ

解決にはまだ時間がかかりそうですわ。