自動巻きのパワリザ問題について

昨年末に、パワリザが短い問題の要因に関して、一つの気づきがあったことを書きました。

その時にも書いた通り、結論が出るのはまだまだ先になると思いますが、現時点で言えることはあると判断しましたので、中間報告という位置づけで書くことにしました。


パワリザが短くなってしまった時計の中で、今回手をつけた時計の症状と対策後の途中経過を個別に書いてみます。

例1:まず、パチダトラ。
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症状はローター共回りで、これに付随してパワリザが20時間程度しかない状態で、なおかつ切替車を何度洗浄しても直らないというものでした。

今回、切替車をベンジン中で繰り返し空回りをさせ、その後10分程度超音波洗浄してから某スプレーを吹きかけて、すぐにエアブロー。

これを組み込んで、恐る恐る手巻きをしてみました。最初は巻上げが重く、ローターが回ったのでだめかと思いましたが、すぐに軽くなって共回りがなくなりました。

二週間ほど放置しても共回りは発生しなかったので着用テストを実施したところ、パワリザは驚きの50時間まで回復していました。


例2:ウルトラクロンスクェア。
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こいつも、最初はよかったのにしばらくしてローターの共回りが発生し始め、何度洗浄しても変わらない状態でした。

とりあえず、上の例と同様にベンジンで洗浄しただけのものを組込み、装着テストを実施しました。

この結果、ローター共回りはなくなりました。パワリザは37時間で、ちょっと不満なところはありますが、手巻きの感触が大変軽く小気味よくなったので、ほぼ満足です。


例3:ウォルサム ニューマキシム。
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機械はETA2724。パワリザが最初から短めで、何度洗浄しても28H程度の状態。

上記の例と同じく、ベンジンで洗浄後某スプレーしてエアブローした切替車を組込み、着用テスト。結果は、手巻きは軽くなったもののパワリザの変化はなし。

再度切替車を取り出し、今度は洗浄後、空回り方向に回転した時に接触する部分をめがけて極力少量となるよう、某スプレーを吹きます。

使用前に缶をよく振ることになっていますが、振ると潤滑成分が濃くなりすぎるような感じがしたので、この時は振らずにスプレーしています。

この結果、手巻きがなんとなく重いような気がするものの、パワリザは予想外の44Hまで回復しました。


例4:ロンジンコンクェスト。
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Cal.は291です。鋸型の歯車と二つの爪がついた車二つで両巻き上げ動作を行います。

この爪が、回転方向が変わった時にいかに早いタイミングで切り替わるかが巻き上げ効率に影響するはずですので、この爪と本体側との間の摺動面には絶対油が入ってはいけません。

しかし、爪と鋸歯の間にまったく油がないと、空回り時、爪と鋸歯が当たる時の抵抗で、手巻きの時にギクシャクします。実は最初、鋸歯への注油をしないで組んだのですが、手巻きがギクシャクしてとても不快でした。

56系の技術解説書によると、鋸歯4-5枚に注油となっていますので、その指示を踏襲し、顕微鏡下で慎重に注油しました。

結果、一時は17Hまで低下していたパワリザが、36Hまで回復しました。

この時計に関しては、洗浄した直後はよいが、数か月経つと悪くなる傾向が強いので、経過観察は必要です。


例5:ウォルサムアメリカーナ。
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機械はAS1862。これも最初からパワリザが30Hを切っていました。手巻きをすると42H程度のパワリザなので、自動巻きに問題があると判断していました。

これまでと同様にベンジンで切替車を洗浄してから某スプレーを吹き付けてエアブローし、組み立て、着用テスト。その結果、パワリザは36時間となりました。やや不満ではありますが、こんなところかな。


例6:ウォルサム ゴールデンイーグル 
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機械はAS1701。メンテ直後は41Hから39Hだったのが、その後26Hに。切替車を洗っても、30H程度でした。

これまたベンジン洗いと某スプレーにより、42Hに回復しています。



これら6例の結果から、今まで使っていたパーツクリーナーが切替車に悪さを働いた可能性が高いと思います。

そのメカニズムは不明なので、もしかしたらたまたまベンジンでよくなっただけで、今後同様のことが起きないとは断言できませんが、これからは今つこてるパーツクリーナーで時計部品を洗うのはやめることにします。


それから、上記の中で4回「某スプレー」が出ましたが、ベンジン洗浄とセットになってしまっているため、このスプレー単体の効果をはっきり言えません。

場合によってはあると思っているのですが、ないとしか思えない場合もありました。

ですので、詳細の報告はもう少し検証をしてからにさせていただきたいと思います。ご了承ください。