愛車(Honda X4)のブレーキ・クラッチOH
実は私、モーターサイクルも少々たしなんでおりますが、今まで乗り継いできた台数はそれほど多くはありません。
今の愛車はホンダのX4というモデルで、購入から19年になります。
どノーマル主義なので、カスタムパーツは一切ついていません。ただ、最低限のメンテは、車検も含めて自分でやっています。
19年の中で、年に1度しか乗らないこともありました。乗らないなら処分しろと迫られたこともありました。
しかし、ここで手放したらもうバイクに乗れなくなると思い、何とか維持してきました。
19年も経つと、いろいろなことがあります。このモデル定番のトラブル、ゴム部品の劣化による異常などなど。
それらを乗り越えるたびに愛着も増していくわけですが、昨年秋ころにフロントのブレーキパッドを交換した時、キャリパー(キャリバーではない)のピストンが一本、動きにくくなっていることに気づきました。
このせいでローターとパッドの接触が強い部分ができ、シャラシャラと音を立てているのだということがようやくわかったんですが、その音が最近大きくなってきてます。
ブレーキキャリパーのオーバーホール待ったなし、という状態です。
キャリパーのOHの際には、ブレーキフルードを抜かなければなりません。どうせ抜くなら、マスターシリンダーのピストンセットとかブレーキホースも替えちゃうことにしました。
考えてみると、19年間ブレーキの油圧系がそのままだったなんて怖いことですよね。
ブレーキホースは純正品でもよかったんですが、ステンレスメッシュのホースを一度経験してみたいということで、いまさらながらどノーマルを卒業することになりました。
通勤にも使っていますので、時間はあまり掛けられません。 中断する事もできないので、晴れて暖かい週末を狙って一気に片付ける必要があります。
マスターシリンダーのピストンセット、キャリパーのピストン、パッキングは純正品です。
ピストンは、動きの渋い一本以外は再利用できると思いますが、何かあったらそこで作業が止まってしまいますので、この際すべて交換する前提で部品を用意します。
キャリパーはE型トルクスボルトで左右の部品が締め付けられているので、分解するのにトルクスレンチが必要なのですが、ホームセンターには売ってないんですよね。
ネットで調べたら、普通のソケットが使えると書いてあったので、手持ちの工具でトライしてみます。
ステンレスメッシュホース関連部品は、通販で揃えました。今回はクラッチ、リアブレーキも一緒にやろうとしているので、1.9万円ほど。
純正部品を加えた総額は4.6万円ほどになっちゃいますが、仕方ないですね。
ここまででもずいぶん長くなってしまいましたが、拙ブログはバイクメンテブログではないので、あまり微に入り細にいり書いても退屈だと思いますから、軽く要約してみます。
通勤に使っているバイクのフロントブレーキが調子よくないので、OHすることにした
ついでにクラッチやリアブレーキもいっしょにやることにした
一度はつけてみたかったステンレスメッシュホースを付けてみた
初めてなのでいろいろ苦労した(=経験値が上がった)が、何とか所期の目的を達成
時間が足りなくてリアブレーキまでやれなかったので、また今度やります。
以上
この手の話に興味のない方は、これ以降の文章は読まない方がいいと思います(^_^;
これまでにない長文になってしまいました、危険です。
では、続けます。
ブレーキの方が重要なので、まずはクラッチで経験値を上げることにします。
最初にフルードを抜きます。マスターシリンダーのふたを取り、スポイトでフルードを吸い取ります。
底の方に泥のような沈殿物がありました。
マスターシリンダーからホースとクラッチレバーを外し、ハンドルバーからマスターシリンダーを外します。
ロッドピンとダストブーツを外します。中にサークリップが見えるので、これを外します。
マスターシリンダーにはこんな部品が入っていました。
これらを新品に交換しますが、その前にシリンダー内をよく洗います。洗っても洗っても異物が残り、難儀しました。
これは、新品のピストンセットです。
シリンダーに部品を組付ける前に、ピストンの一番細いところにテーパー状のパッキングを入れる必要があるのですが、部品を見ると、とても入るとは思えない。
軸は何とか通せますが、その先のフランジはムリ。本来はテーパー状の治具を使って広げながら乗り越えさせるはずですが、そんなものはないので家にあるものを使います。
時計の分解にもしばしば使う、ホットボンドです。これをフランジに盛り付けます。塀を乗り越えるのに斜めにはしごをかけるイメージです。
ホットボンドが固まったらフルードを塗り、パッキングを通します。多少力は必要ですが、何とか乗り越えました。
ホットボンドのカスがピストンとパッキングの間に残らないように注意が必要です。
シリンダーの内側とパッキングにフルードをつけて、向きを間違えないようにピストンセットを組付け、サークリップで固定します。
ブーツをロッドピンの溝に組みつけてから、シリンダー入り口に取り付けます。こいつをハンドルバーにつけて、レバーも戻します。
シャフト周りは汚れを取ってからグリスを塗ってあります。
そしていよいよステンレスメッシュホースの取り付け。
まず仮付けをして、レバーからクラッチまでの取り回しを考えます。ステンレスメッシュホースは柔軟性に欠けるので、純正品と同じ場所はまず通せません。
場合によってはまったく違う取り回しになる部分もあります。
なので、ハンドルを左右に切った時に突っ張らないようにとか、見栄えを考えながら取り回しを決めます。
不満な点はありますが、何とか決まりました。
フルードの注入はブレーキと一緒にやることにして、次にフロントブレーキに手をつけます。
クラッチと同様にフルードを抜いて、ホース、レバーを取ってハンドルバーから外し、ピストンセットを組み替えますが、ダストブーツが大変なことになっていました。
これがFブレーキのマスターシリンダーから出てきたピストンです。
新品のピストンに、クラッチの時と同様にパッキングを挿入し、きれいにしたマスターシリンダーに取り付けます。
これが終わったら、メインイベントのキャリバーOHに突入します。
フロントフォークについている状態で、各ボルトをちょっと緩めておいてから降ろし、分解します。
薄汚いですね(^_^;
このキャリパーは対向4ポット式と言って、ブレーキディスクを両側から二個ずつのピストンが挟むタイプです。
他に2、6ポット式や、片側固定のシングルポット(浮動式)などがあります。
まず、トルクスボルトを四本取ってキャリパーを二つに割ります。そして、ピストンを抜きますが、抜き方にはいろいろあって、フルードを抜く前にある程度押し出しておく方法、分解後圧縮エアを吹き込んで抜く方法、専用プライヤーを使って抜く方法などがあります。
今回は、ピストンをすべて交換する前提ですので、ペンチでつかんで引きずり出すという荒業で行きます。
ブレーキの引きずりが発生していた左側からやったんですが、外してみるとピストンの露出していた部分に汚れの堆積がひどかったものの、腐食は一切なく、ピストンはすべて再利用できる状態でした。
ペンチでつかんじゃったので、もう再利用はムリですが・・・
ピストンシール、ダストシールも思ったよりきれいでしたが、当然交換します。溝には汚れがけっこうたまっているのでよく掃除します。
ブレーキダストで灰色になっている外側も、クリーナーでよく洗います。落ちない黒ずみも多いですが。
よく洗ったら水気を切り乾燥させます。乾いたらシリンダー部にピストンシールとダストシールを取り付けます。
シリンダー内径よりシール外径が大きすぎるように見えましたが、少しずつ縮めながら溝に入れていったらすんなり入りました。
風防のパッキングを入れる時に似たようなことをした記憶があるなあ。
触ってみると、ピストンシール内周が、手前に向かって傾いています。
あれっ?と思いましたが、これにより油圧のシール性を高め、かつレバーを戻したときにシールの弾性力でピストンを戻すようになっていることがわかりました。
次に、シール含めてシリンダー内周とピストン外周にフルードを塗布し、
ピストンを回しながら挿入します。斜めに入らないよう注意します。
ダストシールを通過後、ピストンシールを乗り越えたことがわかったら、後はぐっと最後まで押し込みます。
同じことを4回やったら、左右のピースを間に挟むシールを忘れずに入れて、合体します。
そして、ブレーキパッドを組付けたら、フロントフォークに取り付け、ボルトをすべてきっちり締めます。
このバイクはキャリパーが左右にあるので、もう一個同じようにやって、取り付けます。
左右のキャリパーが付きましたので、ホースを仮付けします。
純正ホースはマスターシリンダーから出た一本がフロントフェンダーの上で二股に別れ、左右のキャリパーにつながる仕様ですが、今回入手したホースキットはマスターシリンダーからいきなり左右へ行くホースを2本出すタイプです。
継ぎ手の数が減るので割安、取り回しも楽だろうという理由で選びました。しかし、やってみるとなかなかうまく取り回しができない。
同じところからホースが2本出るので、見た目を考えれば平行に出したいところですが、継ぎ手(バンジョーと言います)の形状からそれが許されない。
角度をつけると2本のホースがばらばらの方向に行く。
うーん。何とか落としどころを見つけて接続完了しましたが、大変不満足。
まず、フルードをマスターシリンダーのリザーバータンクに入れ、レバーを握ったり離したりを繰り返します。
思惑では、泡がぶくぶくぶくっと出てきてフルードが減る、足す、レバー握る、泡ぶくぶく・・・この繰り返しになるはずでした。
しかし、泡なんかほとんど出てこないし、フルードも減らない。これでは埒が明かないと判断し、以前時計用オイルを移すときに使用した注射器を使って強制的に送り込むことにしました。(この辺は、ネットで得た知識です。)
注射器にフルードを満たし、チューブでクラッチの上部についているブリーダーから圧送します。
送る時にブリーダーを緩め、送り終わったら締めるようにしないと逆流してきますので注意。
これをフルードがマスターシリンダーのリザーバーに上がってくるまで繰り返します。
上がってきたら、リザーバータンクにフルードを十分に入れてエア抜きをします。
レバーを何回か握って離してを繰り返し、握ったままブリーダーを緩めます。すると、気泡とともにフルードが出てきます。
動きが止まったらブリーダーを締めます。
これを、気泡が出なくなるまで繰り返します。
クラッチはこれでレバー操作時のきしみもなく、動くようになりました。エンジンをかけての確認は最終段階でやります。
次はブレーキです。クラッチと同じやり方で、まずはホースとキャリパー内にフルードを満たします。
そして、エア抜きをしたんですが・・・いつまで経ってもレバーが重くならないんです。
いっぱいに押し込んだピストンが出てきてブレーキパッドにあたるまでは重くならないのはわかるんですが、ぜんぜんピストンが出てくる気配がない・・・
マスターシリンダーのピストンの組み方を間違えたかなあと、不安な心持ちのままレバーを操作し続けていたら、知らないうちにピストンが出てきているのが見えました。
レバー1ストロークで押し出されるフルードの量は、想像よりはるかに少ないということを実感しました。
そうとわかれば後はひたすら操作するだけです。
どれだけやったかわかりませんが、ようやくレバーに手応えを感じるようになったので、ここからエア抜きです。
クラッチの時と同じ作業でエアを抜きます。キャリパーが二つあるので、同じことを2回やります。
これで作業はほぼ終わりです。
次は最終段階の確認作業。エンジンをかける前にバイクを押してみます。
OH前は明らかに引きずっていたのですが、これが解消されたためバイクが軽く感じました。
次にブレーキをかけてみます。初期の効きは甘い感じですが、強く握れば絶対的な制動力は問題なさそう。
おそらく、まだわずかな気泡が残っていることと、引きずりが解消したことでパッドとローターの当たり方が変わったためだろうと推測します。
(後日、エア抜きをもう一回やってわずかに残った気泡を抜いています。これでタッチはだいぶよくなっています。)
(後日、エア抜きをもう一回やってわずかに残った気泡を抜いています。これでタッチはだいぶよくなっています。)
今後、何百キロか走って、正しいあたり方に合わせてパッドが減ってくれば、効きもタッチもよくなるでしょう。
ただひとつ問題があって、何時間か放置した後にレバーを握ると、最初の一回だけ動かない事象が起きるんです。
マスターシリンダーの内壁とピストンのパッキングが貼り付いてしまっているような感触です。
組付け時にフルードは確かに塗ったけど、これだけじゃ足りないのか。ネットでいろいろ検索したけど、同じような症例は見つからず。
原因を推測すると、ストロークしている間はパッキングとシリンダー内壁の間にフルードの膜があるが、放置するとこの膜が切れるためではないか。
ということで、取った方法はマスターシリンダーのダストブーツの内側にシリコーンスプレーを吹き付けること。
これでダメなら万事休すと思ってスプレーしましたが、とりあえず効果がありました。
ここまでで約二日使ったので、リアブレーキには手を付けられませんでした。こちらはまたの機会に。
ちょっと前にいじった時、キャブの近くにこんなものがありました。
パーツリストで調べてみると、サブエアクリーナーカバーという部品で、ここにスポンジが入っていたはずですが、ほんのわずかに破片が残っているだけ。
このスポンジを、今回の部品調達の時に一緒に買いました。
普通のスポンジより目が細かくて、洗顔用に近い手触りです。これをカバーにセットし、本体にパチンと取り付けました。
付けたら何かが変わるというものではないでしょうけど、付いているべきものが付いた安心感はありますね。
ということで、一通り終わりました。ここまで読んで下さった方、本当にお疲れさまでした。ありがとうございます。
後日、リアブレーキOHの記事も書きますので、よろしくお付き合いください(モーコネーヨなんて言わないでね)。