SEIKO ACTUS SS 6106-7003の分解

これからいくつも出てくるはずのアクタスSSです。

今回のアクタスSSは、風防がプラ。確か初めてなのでは?

付け替えられているかもと思って画像検索しましたが、プラ風防でいいみたいですね。

程度はそんなに悪くないように見えます。ケースの傷は大きなものはあまりなく、文字盤の傷みも見当たりません。裏蓋はそこそこ傷があるようですが。
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裏蓋を開けてみますと、中枠の押さえバネがさびさびで固着していました。
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こりゃダメかもしれませんね。ジャンクにこの部品があったかなー
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巻真を抜いたら、竜頭がまがってました。カレンダー早送りが渋かったのはこのせいでしょうか。四つ割りで掴んで、修正します(画像下半分)。
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日の裏から分解していきます。まずは針と文字盤を外します。おなじみのカレンダー。
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分解を続けます。
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表側に行きます。
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機械の分解が終わったところで、ケースを分解します。まずベゼルを外します。

コジアケを押し込んで、パキッと外れた音がしたのですが、ベゼルが外れません。数か所にコジアケを差し込んで、ようやく外れました。
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なぜか接着してありますよ。ベゼルが緩かったのかな。

この理由は、すぐ判明しました。風防が緩いのです。適当なサイズの風防がなかったんでしょうね。それを固定するために接着剤を使ったのでしょう。


次にケースを磨きます。今回のケースは深い傷がありません。面やエッジはオリジナルの雰囲気を維持しているようです。ですので、両頭グラインダーを使うか、リューターだけにするか迷いました。

しばし考えた結果、ケース右側のみグラインダーで傷取りをし、その後リューターとバフで仕上げることにしました。画像は研磨前のラグです。
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作業結果です。拡大するとあまりきれいではないですね(^_^; でも肉眼ではそこそこです。こちらがグラインダーで傷取りをしたのち、リューターで仕上げたもの。
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こちらは最初からリューターで傷取り・仕上げをしたもの。
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肉眼ではパッと見変わらない感じですが、光の反射によっては違いが見えます。リューターのみの方はブツブツ(凹み)がたくさん残っています。

傷が大きい場合はこれが顕著になり、バフ掛けだけでは面は出ないわエッジは垂れるわ、ツヤだけはギラギラ出るわでいいことがありません。

私の場合、今回くらいの外観が、リューターのみで何とかなる限界かもしれません。


さて、磨いたケースに風防を入れます。6106-7003の指定風防がわかりませんでしたので、手持ちの中で外径が近いものを探し、これを選びました。
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これを入れるのにも苦労しましたが、結局テンションリングは付けられず、ベゼルも風防を押さえていないというダメダメな状態になってしまいました。


では、気を取り直して機械を洗浄し、組み立てましょう。

今回、ダイヤフィックスの中にも堆積物があったので、やむを得ず受け石を取り外しました。非常に苦手意識が強い部品なので、ヒヤヒヤものです。

洗浄後、地板にダイヤショックとダイヤフィックスを組み付けてから注油します。ダイヤフィックスも、実体顕微鏡の下で作業すればそれほど困難ではないようですね。
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一番受けも同様にダイヤフィックスを組み付けて注油しておきます。
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地板に輪列を取り付けます。
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受けをかぶせてザラ回し、OKなのでアンクルを付けてアンクルチェック、その後テンプを取り付け、角穴車を取り付けます。だいぶ端折ってます。
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日の裏側もどんどん組み付けていきます。
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針と文字盤を付けて
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ケースに入れ、あらかじめ組み立てておいた自動巻きモジュールを組み付け
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ローターを付けます。中枠押さえのバネは、こんなことになってしまいましたが何とか押さえの役目は果たしそうなので使います。
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ということで、一応完成。
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今回、いつかやろうやろうと思っていて、なかなかできなかったことをやってみました。

各歯車の歯数を数えます。

香箱 83
二番 75-12(前が歯車、後がカナの歯数。以下同じ)
三番 64-8
四番 96-10
ガンギ 15-8
角穴車 59
伝え車(自動巻き) 89-8

この数字を基に、計算をしてみます。

基準を二番車にしてみます。二番車の動きが長針と同じ、つまり一周すると一時間なので、わかりやすいからです。

二番車のカナは12T、これに噛み合う香箱は83Tですから、二番車が1周する時、香箱は12/83回転します。香箱が一周すると、二番車は83/12≒7回転。

香箱一周が7時間ということになり、ゼンマイはフルに巻き上げると約7周巻かれますので、約7x7=49時間が止まるまでの最大時間ということになります。

次に、二番車が一周する時、三番車は75/8周します。この時、四番車は64/10x75/8周します。計算すると60! 当たり前ですが、ちょっと感動。

この時のガンギ車の動きは、というと、四番車一周で96/8周回ります。ということは一時間に96/8x60=720回転

ガンギの歯は15ありますので720x15=10800歯/時 送られます

テンプ一往復でガンギ車1歯が送られるので、この機械の振動数は10800x2=21600振動/時ということになります。


今度は、自動巻き関連の計算をしてみます。

ローターが一周する時、伝え車の鋸歯が10T送られます。これは計算ではなくて、実物を観察した結果ですので、個体により違う可能性があります。

この時、角穴車=香箱真は8x10/89/59≒0.0152回転します。逆に香箱真が7周(=フル巻き上げ)するために必要なローターの回転数は
7x59x80/89≒372回転 89x59x7/8/10≒460回転

我が家のワインダーは一周7.3秒かかるので、
372周回すには約46 460周回すには56分継続運転する必要があるということがわかりました。

思ったより早く巻き上がりますね。

機会があったら他社、他キャリバーについてもやってみたいと思います。