テクノス スカイシリーズ第○弾 TECHNOS SKY EAGLE ETA 2622

今回は、テクノスのスカイシリーズ第、えー、四弾くらいかな?として、スカイイーグルをお届けします。

状態は不動。外観は風防傷多め、ケースの傷そこそこ、といったところです。
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搭載ムーブメントはETA2622です。この番号は以前にやった記憶がありますが・・・なんだったかな?
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それでは分解していきます。

巻真と中枠を外し、機械を取り出します。文字盤にはわずかな劣化がありました。

さて、ケースを先にやります。ベゼル周りの汚れがひどいです。

片側のバネ棒が固着しており、ケースからメッシュブレスが外せませんので、このまま超音波洗浄機に突っ込みます。

しばらく洗浄したら、バネ棒の固着は解けましたが戻らず。ゴミ箱行きとなりました。

傷多めの風防。金剛砂で傷取りして、酸化セリウムで磨きますが、いつも傷が取れたと思って磨くと、残った傷が現れたりするので、今回ちょっと対策してみました。

対策といってもたいしたことではなく、傷に油性マジックを塗るだけです。ポイントは、傷の一番奥までインクが入るようにすること。
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この状態で、金剛砂で傷を消していきます。傷が残っているうちは、風防の裏側から黒い点々が見えますが、そのうち見えなくなりました。

保険でもう少し削った後、目視と実体顕微鏡で確認したところ、肉眼では皆無、顕微鏡でもごく小さな傷が2個見つかっただけでした。

マジックマーキングは意外に効果があるかも。
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この後、包丁研ぎ機と酸化セリウムで磨きました。
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ケースは、ひどい傷は一箇所だけですが、バフだけでは傷が消えないレベルと判断。グラインダーで磨きます。

形状はあまり繊細ではないので失敗の可能性は高くないでしょう。

グラインダーで傷取り面出しした後、バフと白青ピンクの研磨剤で磨きます。

次に機械の分解です。最初のチェックでは不動だったわけですが・・・テンワをつついてみるとよく動きます。

取り付け方がまずくて、片側にしか振動できないため、不動になっているようです。

試しにテンプを外して付け直したところ、元気に動き出しました。
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たまにこういう不動品に出くわしますが、なんなんでしょうね。

いつもなら日の裏側から分解していきますが、上述の流れからいつもと逆になってしまいました。
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筒カナと二番車がはまっていない機械なので、どっちでもいいんですが、日車と機械台が接触しそうでいやなんですよね。


表側が終わったら日の裏を分解します。カレンダーの早送り機構がないので、前々回にやった2824に比べると巻真周りは非常に簡素に見えます。
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さて、香箱です。スリップチェックをしてみたところ、スリップトルクは高くないものの、完全に油切れの感触。
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また、今までのETAは滑る時に必ず香箱内周のへこみに引っかかる感じがありましたが、これはまったくない。非純正の香箱が使われているのか?

その辺を確認する意味もあり、久しぶりにゼンマイを取り出しました。

ゼンマイを取り出してから香箱内周を見ると、凹みはちゃんとありました。
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ただ、グリスかすみたいなもので埋まっています。

このせいでクリック感がなかったのでしょう。

香箱をよく洗い、オイルは8200をごく少量つけてゼンマイを入れてから再度スリップチェックをしたところ、いっぱいまで巻いたところから約一周、一気に滑りやがります。

へたに油をつけるとこれですよ。なにも油をつけないほうが良いのか?

多少自暴自棄になりつつぐりぐり回していたら、だんだん一気に滑る量が減ってきて、半周くらいになったので、このまま組むことにしました。

その他の部品も洗い上がったので、組立に入ります。

まずは地板にインカブロック取り付けと注油。保油装置がないので楽です。
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香箱、輪列を取り付けて受けをかぶせ、ザラ回し。
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丸穴車、角穴車を取り付けて、アンクルを取り付けます。ゼンマイを少々巻いて、アンクルチェックをしたら、爪石に注油してガンギ車の歯に行き渡らせます。

この機械は注油用の穴が大きいので、注油が非常に楽でした。

次にテンプを取り付け、注油済みの穴石受け石を取り付けます。
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これでほぼ表側は終わりなので、日の裏に行きます。

巻真周りが簡単なので、難しさはありません。ただ、一部の部品の取り付けには順番があるので要注意です。
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ここまで来たら、文字盤と針を取り付けます。
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巻真を抜いて(オシドリピンを押し過ぎないように注意)ケースをかぶせます。

裏返して巻真を挿して、中枠をつけてネジ止めし、組んでおいた自動巻きモジュールを取り付けます。
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いつも悩む切換車の注油ですが、今回はじっくり考えました。

切換車で注油対象になりそうなのは、①切換爪の軸 ②上歯車の回転軸 ③自動巻き受けの軸(が入る穴)です。

①は顕微鏡で動きを観察すると、回転運動はほとんどないため、動きの軽さを重視して注油せず。

②は今まで注油しないことも多かった部位ですが、9010を少量塗布。

③ここは当然注油。穴へではなく、受け側の軸に注油しました。

これら以外に、上歯車、下歯車の歯面数箇所に注油。

また、角穴車と噛合う自動巻きのカナにモリブデン入りグリスを少量塗布、ローターからの大きな負荷に対応(のつもり)。

今までの、むしろ何もしないという方針から180゚転換し、他の方式で注油箇所になっているところにはすべて注油することにしたわけです。
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完成です。
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とりあえず一日使ってみました。今のところ、手首から外して27時間動いています。パワリザの数値が判明するのは明日以降になります。

今回もまた、各歯車の歯数を数えてみました。

伝え車付き筒カナ 78-16(前が歯車、後がカナの歯数。以下同じ)
香箱 97
二番 78-14
三番 80-13
四番 97-8
ガンギ 15-8
角穴車 62
吉車 10
丸穴車 26
ローター 38
切換車上歯車 28
切換車下歯車 39
切換車カナ 9
減速車 48-9
角穴車駆動車 56-9

以上の数字から、次のことがわかります。
香箱一周で約7時間、巻き上がりまで8周なので、停止までの最長時間は計算上55時間くらい(ほんとか?)
フル巻き上げに必要なローター回転数 2483周
自宅のワインダーに掛けた場合 約5時間
フル巻き上げに必要な巻真回転数 24.8回転

先日の6106Cの計算は間違いがあったので訂正しておきましたが、ETAとSEIKOのローター一回転あたりの巻き上げ量の違いはすごいですね。

計算間違いをしているかなあ。不安になっちゃいます。


'16.05.26.追記 止まったのは外して45時間後でした。十分ですね。これが続けばいいのですが、今までの例だとどんどん短くなる場合があるので、油断できません。