CITIZEN ADOREX SPECIAL Cal.8000A 25J ②

Eリング紛失・破損とパラショック穴石紛失でハットトリックを達成した、というところまでが前回のお話でした。

その後の片づけで、作業台の上のものをすべてどかした時です。何か丸いものが。

何と!!

作業台の上で穴石発見!!

けっこうな勢いで飛んでいったと思ったのですが、すぐそこに落ちたんですね。探し方が悪かったってだけですね。情けないけど、うれしー

後はEリングですが、小さいし軽いし、どこかにくっついて部屋の外に出たらもう見つからないとあきらめてました。

しかし翌日、一日一回のコロコロ掃除をして、ふと粘着紙の表面を見たら、なにやら光るものが!

あったー!!!

前日、何度もコロコロをかけたのに。ほんと、井上陽水ですよ。


ということで、最悪の事態は免れ、失点1まで挽回することができたのでした。


そんなわけで、組立に入ります。ピンセットは、あの後研ぎ直し、元々よりだいぶ細くしました。

しかし、材質の強度が細さと合っていないようで、先端がすぐ反ってしまったので、第一線から引退させることにしました。

で、代わりに第一線に出たのが、以前使っていた極細のピンセット。非常に作業がしやすいのですが、よくさびるので一度は隠居させました。

しかし、あんなトラブルはもうごめんだし、作業性は間違いなくよいので、今日から現役復帰です。
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上が今までのピンセット、下が現役復帰した極細ピンセット。

まず、地板にパラショックを取り付けて注油。顕微鏡で注油状態を確認した後なので、日の裏側が上になっています。
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この後、輪列を組付けます。香箱の裏(日の裏側)に角穴車がつくのは77系までと同じですが、地板に角穴車と噛み合うコハゼがありません。
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コハゼはどこなんでしょうか?

香箱は、前回書いたように巻真のみ外して洗浄。ETAシチズンの香箱は、へたにばらすとすべりが多くなってしまうので、最近非常に恐怖を感じています。

二番車と二番受けを取り付けます。この受け周辺の構造はセイコーの機械に似てますが、地板との間に自動巻きの減速車を挟むのが違いますね。
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77系までは角穴車を規制していたコハゼが、この機械では切替車を規制するようになってました。

ETA7750系とかAS1863などの片方向巻上げ機は、切替車と角穴車両方にコハゼがついていましたが、この辺はメーカーの考え方の違いなんでしょうかね。

切替車自体は、従来の両方向巻上げ式のもののカナがある方と基本的に同じみたいです。

細かな構造は今まで気にしていませんでしたが、先日メールをやり取りさせていただいた方の資料によると、非常にシンプルな原理でワンウェイ動作を実現しているのですが、注油が指示されている場所に注油するのは小人でないと無理かも。

でも、トライしてみました。うまく行ったかどうかはよくわかりません(^_^;


続いてガンギ車、三番、四番、秒カナを取り付け、受けをかぶせます。基本輪列以外にもいろいろ挟む物があるので注意します。
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この受けには緩急針駆動装置や秒カナ押さえが組み込まれていて、分解は出来るかもしれませんが、あえてやりませんでした。

緩急針駆動装置は、受けの裏を通して吉車あたりにつながっているはずですが、正しく組むことにのみ気を取られてしまい、この辺の詳細をちゃんと調べられませんでした。

画像と記憶から推測するしかありません。ま、ありていに書けば、吉車が伝え車を介して竜頭3段引きの時のみ緩急針駆動歯車とつながるわけですね。

ザラ回しはOKだったのでアンクルをつけましたが、テンプをつけようとしたらなぜか付きません。しばらく悩んだ結果、ハックレバーが邪魔になっていることがわかりました。

レバーを逃がしてもバネで戻ってきてしまうので、巻真まわりをつけないとだめみたいです。

そこで、機械をひっくり返します。最初に巻真周りをつけるようにしていれば問題なかったんですが、空中に鼓車吉車を保持しながら巻真を通すのがどうも苦手なので、いつも表側が終わった後に日の裏をやるパターンです。

ある程度日の裏側の取り付けが済んだら、表側に戻ってテンプを取り付けます。
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テンプの取り付けは、テンプ受けを正規位置から90゜以上回した状態で取り付け、天真が穴石に入ったら元の位置に戻してやります。
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この時、アンクルはテンプ受けを回した方向に振っておきます。

テンワが元気よく動きましたので、また日の裏に戻って残りの部品を取り付けます。

しかし、一つ付け忘れがあり、また一部分解する羽目になりました。
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日車も付け終わり、日車押さえをつけようとしたら、どうしても一部が浮きます。よく見ると、裏から締め込まれているねじの先端が出ています(黄色丸)。
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たどってみると、アンクル受けのネジでした。そういえば、さっき日の裏の部品を固定した時、ネジが一本短かったな。やれやれ

ネジを入れ替えて、日車押さえは付きました。この時、この位置決めピンの下に最初に日車押さえを付けるようにしないといけません。要注意。
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ここでカレンダーチェックしてみたら竜頭が回りません。カレンダー早送りレバーの取り付け方を間違えているようです。また日車押さえを外してやり直して(黄色丸)、修正完了。
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早送りしてみますと、出来ることは出来るのですが、非常に硬く、バキバキっという感じの手応えです。

これは分解前から感じていて、何とかしたいと思っていたので、修正を試みます。

日車について見てみると、早送りの時に乗り越えなくてはならない部品として通常のジャンパーのほか、日送り爪があることがわかりました。

この爪は送った直後は日車の歯と歯の間にあり、この状態で早送りすると邪魔になるわけですが、時間の経過とともに動いていき、日車の歯先より内側に入ります。

この時なら日送りは重くないようです。ですので、壊れるわけではないけれど、早送り非推奨時間帯というのがある、という結論になりました。

曜車についても同じようなことが言えます。

曜車を取り付けたら、文字盤と針を取り付けます。
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そしてケースに入れます。
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構造が'60年代前半の仕様ですから、風防側から入れて、ベゼルを圧入して、裏から機留めで留めることになります。

さて、ケースですが、ベゼルはいつも通りやればいいですが、ミドルケースをどうするか思案しました。大きな傷はないものの、使用によるテカリが出ており、元の姿がよくわかりません。
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この辺を見ると、全体的に横方向のヘアラインが入っていたように見えますが、それは無視して
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円周状のヘアラインにすることにしました。以前書いたように、電気ドライバーで回しながら紙やすりを当てて筋目をつけます。

正面からサイドへ行く途中の面取りはポリッシュ。サイドには手を入れませんでした。

ということで、ようやく完成。
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今回は(も?)いろいろなことがありました。一時は再起不能かと思われましたが、最後はオシドリピンのEリング破損のみで済みました。

ドナー用ジャンクが手に入ったら、組み込んでやりたいと思います。