CITIZEN ADOREX SPECIAL Cal.8000A 25J ①

今回分解する時計は、シチズンのアドレックススペシャル。今回手に入れたモデルの外観は非常にオーソドックスで地味です。

変わった機械が入っていなければ、あえて手に入れたいとは思いそうもない時計です。
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事実、知らなかった時にはまったく気にしていなかったのですが、竜頭三段引きで歩度調整が出来ることを知ってからは、あまり多くは出ない出品物をウォッチリストにいれ、落札のチャンスを窺っていました。

こうして我が家に来たアドレックススペシャルを、これから分解します。

この時計にはCal.8000が搭載されています。シチズンはそれまで一貫して両方向巻上げを採用してきましたが、このファミリーは片方向の方が現実的には効率がよいという考え方に基づいて、片方向巻き上げ採用に方針転換されたようです。

この機械(これに限りませんが)の詳細は、日野マチコさんのブログが詳しいので、こちらをご覧下さい。

何年か前に発売されたザ シチズン機械式モデルでは、また両方向巻上げになっているようですね。

ケースの形状から、ワンピースタイプと思ってベゼルから外したのですが、巻真はジョイントじゃないし、抜くための構造がみつかりません。
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ちょっと迷った後に、もしかしたらと思ってケースを確認したら、ありました、コジアケ口が。
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生産年は'74年ですから、もっと近代的なケース構造を予想してたのですが、なんと'60年代前半の構造ですよ。ガスケットも使われていない、完全非防水時計です。
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どういうコンセプトだったんでしょうか。

とにかく裏蓋を外し、ケースを取り出しましょう。

これが表側ですが・・・これまでのシチズンの機械とはずいぶん違いますね・・・
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ローターネジとか香箱、小さなEリングの金色がちょっと高級感をかもし出している?

どれがオシドリピンなのか一瞬迷いましたが、これかなってのを押したら巻真が抜けました。

ということで、日の裏から分解していきます。曜車の留め方は従来と同じですね・・・
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日車を外します。見慣れた揺動レバーはありますが、それ以外は目新しい形状の部品ばかりです。分解前がわかるように、いつもよりマメに撮影します。
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77系までは吉車と鼓車が一体でしたが、この機械では分割式です。吉車と鼓車の噛合い面は通常鋸歯ですが、この機械は方形歯(横から見た時)。セイコー7Sなんかもこんな形状だったような。
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製造上の利点が優先されたんでしょうね。


日の裏が終わったら表側を分解します。
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輪列です。
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香箱です。
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今回の香箱も、スリップチェックをしてみると1,2ノッチから半周ほどまで、多いとは言えませんが余分に滑り、またその滑り方にばらつきがあります。

なので香箱真周辺のみ洗浄し、それ以上は手を入れないことにします。

一応分解が終わりましたが・・・初めての機械だし、他にはない機構を持っているので、構造を解析しながら分解していくべきですが、はやる気持ちがあったりして、動きの把握まではできませんでした。

また、今回は分解洗浄の過程でハットトリックを実現。

まず、オシドリピンに付いていたEリングを外す時に、無理な力を掛けてしまったため破損。

これは、オシドリピンの押し過ぎ防止のためにあるので、なくても実用には問題ないと自分に言い聞かせました。

同じEリングが二番受けの歯車保持に使われているんですが、この失敗を踏まえ、外さないことにしました。

しかし分解終了後、じーっと見ていたら、どうしても外したくなってきました。

そこで、無理な力を掛けないように注意し、何とか外れたのですが・・・勢いよく飛んでいきましたよ。

小さい部品ですので、落下音などしません。飛んだ方向を推測し、反対側も含めて探し回りましたが見つからず。

「どうして俺は・・・」と、ぜんぜん学習しない自分にいつもの自己嫌悪。

ダメ元で、時計材料店にあるか問い合わせてみましたが、あっさり門前払い。(^_^;

ドナー用ジャンク手配も検討しましたが、今すぐには入手できそうもありません。

幸いというか何というか、なしで組んでも形にはなり、部品があれば裏蓋を開けるだけで取り付けできるので、一通り仕上げておいて、ドナーが見つかった時点でEリングを移植することにしました。

そう決めてから、洗浄に入りました。

実は、今使っているピンセットの先端が丸くなっていて、小さいもの、薄いものがつかみにくくなっているのは承知していました。

研ぎ直さないとと思ってはいたものの、ついついやらないままだったのですが、ついにそれがトラブルを引き起こすことになりました。

パラショックの穴石の方を洗浄している時、裏側を洗おうとしてひっくり返すためにつまんだのですが、持ち上げたと同時にピン!と飛んでいってしまいました (;_; )

ビー玉飛ばしの要領です。

左前方で何かに当たった音がしたので、そっちを中心にそこらじゅう探したんですがみつかりません。

ハットトリックの実現です。

もうね、この腹立たしく悲しい気持ちは言葉にならないですよ。

この後どうするか、考えがまとまりませんが、とりあえず洗浄を終わらせて後片付けを始めました。


画像枚数の関係で、一話にはおさまらないので、二回に分けて投稿することにします。後半はまた後ほど。