ROLEX DAYTONA と書いてある時計2の2

さて、前回の続きです。

もうほぼ終わりのつもりで撮影した後、ふと時計を見たんです。

そしたら、何か違和感を覚えたんです。なんだろう・・・

なんと、12時間計の針が帰零してない!

そうなんです。クロノ停止でリセットしたのに、12時間計が止まらず動き続けているのです。

今までのテストはほとんどクロノグラフを動かした状態だったので、クロノ停止状態での12時間計の動きはノーマークでした。

針はすべて本付けしちゃってあるので、また外さなければならない。特にクロノ秒針はハカマが緩むと面倒なので、あまり外したくない。

で、そのまま何回かテストしてみたけど、やっぱり12時間計は勝手に動いてます・・・

やむを得ず、針をすべて外して12時間計を露出させます。


12時間計が勝手に動くというのは、7750系のトラブルとしては割とメジャーらしいです。

原因はいくつかあると思いますが、すぐ思いつくのはクロノ停止の時にブレーキをかけている樹脂レバーの異常、それと12時間車のクラッチフリクション過多。

12時間車の裏側は下の画像のようになっていて、三角の板と歯車の摩擦抵抗で上の歯車に動力が伝わります。動力は香箱から取っています。
イメージ 1


この摩擦抵抗がオイル切れ等で大きくなると、ブレーキで抑え切れなくなる、また樹脂レバーの摩耗等によりブレーキが利かなくなり、クロノ停止時も動いてしまうというトラブルが発生します。

普通の使い方なら、この歯車に小針が付くだけですのでフリクションがほとんどなくても何とかなりますが、この時計の場合は二つの歯車を回さなければならないので、ある程度のフリクションは必要です。

二つの歯車を駆動しつつ、ブレーキで止められるようなフリクションが求められるわけです。これははっきり言ってかなり高度な要求です。

そうは言っても、一番手っ取り早い対処なので、まずは12時間車に注油をしてみました。


注油済みの12時間車を組み込んで、まずはクロノ停止状態で放置。

期待通り、12時間計は止まっています。そこで、今度はクロノを起動。これで放置した分動けばOK。


しかし、期待に反して、今度は止まったまま。潤滑が良すぎるようです。

また12時間車を取り出し、洗浄。ほんのちょっとだけ油をつけてまた組み立ててテスト。そしたら、また一時停止で止まらない。

リセットハンマーやレバーの動きを見ていたら、リセットハンマーの動きが渋いところがあり、それが原因でブレーキの押し付けが弱くなっているように思えました。

そこで、リセットハンマーと地板の接触面に注油してみましたが、効果なし。

顕微鏡でもう一度じっくり観察すると、動きが渋いのは接触面の抵抗ではなく、ハンマーの先端とストッパーが引っかかっているように見えました。

そこで、先端を少しずつダイヤモンドやすりで削り、ストッパーに引っかからないようにしてテスト。
イメージ 2


結果は、リセット状態では止まっていますが、クロノ停止(帰零前)状態では止まらない。

いい加減疲れてきました。もう樹脂レバーをいじるしかありません。

樹脂レバーの、12時間車と当たる部分を少しだけ曲げて、強めに当たるようにしてテスト。

しかし、結果は同じ。

この先はやったことを羅列しますが、バネとリセットハンマーの当たり面の抵抗があるのかと思ってバネの先端を磨きましたが効果なし。

リセットハンマーの動きが渋いように見えたのは、ハンマーの支点となっている軸にバネが押す方向と同じ向きのガタがあるため、ハンマーがずれて先端とストッパーがちゃんと当たらなくなるからと確信。
イメージ 3


先端をさらにダイヤモンドやすりで削ります。あまり削ると、クロノ起動中にブレーキがかかるようになってしまうので注意が必要です。

ここまでやっても、結果は変化なし。

万策尽きてしまったので、やらないつもりだったけど12時間車のクラッチに9010を付けて若干フリクションを減らしてやったら、ようやく求める動きをするようになりました。

樹脂レバーによるブレーキと12時間車のフリクションの微妙なバランスで成立していることになるので、どれくらい正常な状態を維持できるのか、非常に怖いです。

ですが、リセット状態で12時間計が動くようになってしまうのは相当先だと思いますので、クロノはおもちゃと割り切り、時計として使うならそれなりに使えるのではないかと思います。


相当時間がかかりましたが、何とかまともに動くようになりました。ただ、まだ何があるかわかりませんので経過観察が必要です。

ということで、クロノ秒針はまだつけず、ケースに入れて長期テストを実施することにしました。

今後変化があったら記事にします。