DAKS CHRONOGRAPH AUTOMATIC

今回はDAKSの機械式クロノグラフをやります。
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この時計、実は2012年の10月に一度取り上げていますが、その時は内部には手をつけず、外装仕上げのみやりました。

その後、なかなか始動しないとか、遅れが出るようになったので、分解清掃することにしました。

今回外装は手をつけませんので、だいぶ楽です。
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本当は、風防が小傷だらけなので研磨したいところですが、水ガラスで目立たなくなっているレベルですので、次回に回します。

機械を取り出します。いつも傷んだ文字盤や針を扱っているので、きれいな針や文字盤だと緊張します。

文字盤を外して最初のトラブル。干支足が一本取れてます(;_;)
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どうしよ・・・

とりあえず、分解を進めます。

そのまま日の裏を分解して行きますが、うかつにも、分解前の日付と曜日の切り換わり時差を確認するのを忘れました。

というのは、赤丸がついた部品の再組み付け時に参考にしたかったからです。
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右が日回し、左が曜回しの車ですが、これらの取り付け位相により、切り換わりのタイミングが変わります。

この時計の場合ですと、あまり時間差がなく切り換わったはずという推測はできますが、どれくらいなのかを把握しておきたかった。

曜、日が同時に変わるのが気持ちいいですが、完璧に合わせるのは難しいですし、機械への負担が増えます。

ずらすなら、少なくとも日付が先に変わってほしいところ。

さらに、機械をいたわるなら日付が完全に変わった後に曜車が変わり始めるようにしたい。

ということで、今回の組立では機械にやさしく日付が先に変わるタイミングにしようと思います。

カレンダー受けを外します。干支足はこの部品の穴に残っているので、押し出しておきます。

先日の魔改造7750ではいまだに解決していない部分が現れました。
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樹脂部品とリセットハンマーのリンク部分(赤丸)が、こちらの方が噛み合い量が多いような気がしますね。

そこが原因かどうかはわかりませんが・・・

これ(黄色丸)が針回しの時に空回りする摩擦車です。二番車の軸に圧入されています。

二番車を出車抜きで抜くよりは、こちらを外した方が楽だと思いますが、そこは人それぞれでしょうか。

技術解説書では洗浄しないよう指示されていますが、針回しが若干重いので、注油はしておきます。


次に表側です。すみません、画像を全然撮ってませんでした。

まずクロノグラフ受けを外します。

クロノが帰零した状態で外すと、部品がいろいろ飛んで行く可能性がありますが、傷は深くありません。

クロノをスタートした状態ですと、バネのテンションが弱くなっているので傷は浅いです。

予めバネを外しておけば、飛んでいくことがありません。この時外すバネは2個あります。

一個は引っ張れば外れますが、もうひとつは最初だけこつと度胸が必要です。

文字と静止画だけでは説明しにくいので、youtubeの動画を見ておくことをお勧めします。

さて、外せるものをどんどん外して行きます。特に順番を気にする必要はないと思います。
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分解がほぼ終わったところで、香箱チェックです。1ノッチずつ滑っているようですが、きしみが多い。油はほぼないと思われます。
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やっぱり、少しでいいので注油はしましょう。

ということで洗浄です。いつも通りベンジンで洗った後、メタルクリーナーで超音波洗浄。

そして組立に入ります。

まずは香箱から。今回もスリップ部に9010をごくわずか塗布。サイドにも少々。

チェックしますと、分解前のようなきしみはなく、ちゃんと1/6周ずつ滑っているようです。いい感じです。

続いてインカブロックを地板につけて、輪列を乗せていきます。
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テンプ、丸穴車、角穴車をつけます。
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今回は、ここでスタートストップリセットレバーの戻しバネを付けてみます。組み付け向きはこう(ブレブレですみません)。
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こんな感じで取り付けたら、
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リセットレバー(operating lever, 2 functions)を取り付けます。
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続いて、クロノグラフの部品を積み上げていきます。
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この後、画像がありませんがスイングピニオンを動かすクラッチや切換車、リセットハンマーを取り付けます。

クラッチの先の小さな穴にスイングピニオンのホゾを入れるのが、最初はうまくいかないかもしれません。

クラッチをちょっと持ち上げて、機械を少し傾けて、スイングピニオンの自重でクラッチの下に来させて入れるといいと思います。

クロノグラフ受け取り付けは、今までは横から伝え車の穴と軸を見ながら入れていましたが、

それよりも上からネジ穴を合わせながら入れた方が楽だということがわかりました。

次に、ハンマースプリングを付けます。付け根は向きが逆のだるま穴になっていますので、地板側のピンに合わせます。

バネの先端は受けに乗り上げるような形になります。この状態から、赤丸の穴をピンセットでつかんで、外側へ引っ張りながら降ろしていきます。
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そしてクラッチのバネを差し込みます。
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この画像では30分計のジャンパーがついていませんが、クラッチのバネを付ける前に取り付けておく必要があります。

クラッチのバネが付きました。
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ここで日の裏に行きます。だいぶ端折りますが、こんな感じ。
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日回しと曜回しの爪の位相は未調整ですが、カレンダー受けをかぶせ、日車、ジャンパーを取り付けます。

次に曜車をつけて、針回しをしてみて、タイミングを調整します。

タイミングの変更はカレンダー受けを外さなければなりませんが、日車を外す必要はありません。

調整中は揺動レバー(double corrector) は外しておいた方がいいです。

何回かやり直して、日付が変わった直後から曜車が動き始め、1時間40分後くらいに切り替わるタイミングになりました。
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曜車とワッシャーを取り付けて、機械はほぼ終わりました。
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次は取れた干支足をどうするかです。

一本だけでも当面不具合は出ませんが、何かの状況により力がかかった時に一本ですべて引き受けることになるので、折れやすいと思われます。

ここはやはり修復するしかないでしょう。

問題は方法です。

ピンセットで干支足をつまんで、粉末ハンダで固定というのはやったことがありますが、位置出しがとても難しいんですよね。

釣りのフライを自作する時の治具が使えるような話も読みましたが、実物を知らないのでイメージが湧きません。

昔、干支足溶接機がヤフオクに出ていましたが、安くはなかったし次にいつ出るかわからないし。

できるだけ手持ちの道具で何とかならないか・・・三日三晩考えて思いついた方法がこちら。

折れた干支足がいい具合に入る径の穴が明いたポンチに干支足を押し込み、
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ポンス台で文字盤に垂直に当て、粉末半田とバーナーでハンダ付け。
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ここまでは頭の中のイメージ通り行きました。

しかし、うまくいきませんでした。バーナーで炙っても、ハンダが融けないんです。

別の金属上で試すと融けるのですが、なぜか文字盤の上では融けないんです。ポンチについた干支足の先のハンダは融けます。

くっつかないんじゃなくて、融けないので、理由として思いつくのは文字盤の熱伝導率が良すぎてバーナーの熱が拡散してしまうくらいしかありません。

電気的な方法でないとくっつかないのかなあ。

今回は苦渋の決断として、干支足一本のまま組み付けることにしました。

パチデイトナでのトラブルが思い起こされ、針を挿すのがためらわれましたが、軽くテストしてから取り付け。

ケースに入れました。今のところちゃんと動いています(当たり前か)。

ということで、とりあえず完成。
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外装には手を付けてないので、最初の画像と何も変わりません。12時間計がちょっとずれてるかなあ。まあ、気にしないようにしましょう。