TECHNOS Kaiser SIGNAL その2
組立の前に、ケースの手入れです。
風防は9面カットで、厚みが普通の1.5倍くらいありそう。傷は少なめなのと、エッジが丸くなると雰囲気が
かなり悪化するとの予測により、金剛砂での粗削りはやめ、酸化セリウムで薄皮を一枚むくイメージの研磨のみにしました。
なので、傷は少々残るでしょう。裏面のTマークはプリントみたいなので、作業中に取れてしまわないよう気を使いました。
ミドルケースは、一度全面ポリッシュにしたのですが、正面部分はもともと同心円状のヘアラインだったように見えます。
ネット上の画像を見ても、明確にヘアラインとわかるものはありませんでしたが、状況的にはそうだったであろうと思われるので
ヘアライン化することに決定。電動ドライバー、やすりを駆使してwヘアラインを入れました。
余計なところにもヘアラインを入れちゃったので、またグラインダーでポリッシュ。
風防の固定はテフロンリングでした。普通、正面から見ると風防とケースの間にリングがあるのが見えますが、この時計はそれを嫌って
いるのか、リングが奥に入っています。同じ構造の時計を以前やりましたが、なんだったかな・・・
交換用リングはないので、ダメージを最小限にするためケースにつけたまま作業してきました。最終作業として風防をはめ込む時も
ガラス側にグリスを塗って、少しずつ押し込みました。何とかヘマをせず取り付けできて、ほっとしました。
さて、組立です。久しぶりのASの機械ですが、二番車の先端が摩擦車になっているので注油を忘れちゃいかんことは覚えてました。
輪列を組み付けて、受けをかぶせて丸穴車、角穴車、アンクル、テンプをつけていきます。
ここまでやったら、日の裏側に行きます。写真を見ながら部品をつけていきます。いつものASと違う構造ですが、
複雑さはまったくありません。問題は裏押さえ。バネ破損で竜頭操作の節度がなくなる懸念があったのですが、
日車送りのバネやヘビ形バネのおかげか、実用上問題なさそうです。よかった。
あとは日車、日車押さえをつけていきますが、ねじを締めこむと日車が送られなくなるトラブルが発生。
しばし悩んだ後、地板から飛び出しているねじを発見。アンクル受けねじとテンプ受けねじを間違えていたため、
飛び出してしまったのでした。これも初歩的な凡ミスでした。
日の裏が終わりました。
プロペラを取り付ける時、どんな位相でもいいということはないはずです。
プロペラの回転はガンギ車に連動してますので、連続ではありません。一瞬止まった時にプロペラの端がシグナル窓にかかると
点滅の感じが出なくなるので、何か目安や合わせ方があるはずです。
どこにも情報がありませんので、とりあえず付けて文字盤を置いてみて、だめだったら外してずらす、という
原始的な方法で合わせました。
しかし、その時はまあまあよかったのですが、翌朝明るいところで見てみたら、我慢できないレベルでした。
そこで、再調整をすることにします。テンプをはずしゼンマイがある程度巻かれた状態にしておきます。
文字盤のシグナル窓から鉛筆をつっこんで、窓の位置の印をつけておき、文字盤を外します。窓の下は日送りの
伝え車でした。黒く塗られていたのは、窓から見える部分だったからなんですね。ようやく納得できたので
黒く塗りました(マジックで!)。
この状態でプロペラを仮付けし、アンクルをちょんちょん動かしながらプロペラの朱色部分が窓に完全にかかる
位置を探し、そこで本付け。文字盤を乗せて、プロペラが中途半端に窓にかからないことを確認し、再組立。
結果はばっちりでした。ちゃんと点滅しているように見えます。
ということで、ケースに入れ直して、
今度こそ完成。
自分で買っておいてこんなことを書くのもなんですが、紫系や緑系の文字盤はどうも満足感が少ないです・・・
この時計もステンレス無垢の純正ブレスがついていましたが、左手に付けるとまったく余裕がないながら、
右手なら使えないことはない長さだったので助かりました(右手首の方が細いので)。
ラグ間10mmなので、汎用ブレスがないわけではありませんが、ケースとの一体感は純正にはかないませんからね。
コマの一つが裏表逆に取り付けられていたので、何とか直そうと試みたのですが、ピンが固くて抜けません。
あきらめました・・・