SEIKO SPORTSMATIC 5 410

またセイコーです。発売は1962年、私のところにある自動巻腕時計の中でも古い方です。
イメージ 1


ベゼルやケースの傷み方から判断すると、銅合金ベースのクロームめっきではないかと思います。

磨いてどうにかなるものではないので気が乗らなかったのですが、やるだけやってみようという

気になったのでようやく俎上に乗りました。

裏蓋はつるつる(傷だらけですが)に見えますが、よーく見ると海洋生物の輪郭がうっすらと

感じられます。
イメージ 2


裏蓋を外しました。ローターが固着していましたが、つついていたらぽろっと落ちたものが。

機留めネジの一つでした。こういうトラブルは結構あるものです。
イメージ 3


ケースから出して、針と文字盤を取り外しました。
イメージ 4


曜車を取ります。日車押さえにルビーが3個ついていますが、曜車の回転を軽くするためです。

ルビーではなく、プレスで少々膨らませるだけでもいいように思いますが、ルビーの方が

売りになったのでしょう。
イメージ 5


カレンダーまわりを取り外しました。巻真まわりが特徴的です。バネ一体のカンヌキ、カンヌキと

オシドリを同時に押さえる押さえ。早送り機構がないのでシンプルですね。
イメージ 6



表側に移ります。自動巻ユニットを取りました。この時計も中心部に赤い汚れが目立ちます。
イメージ 7


自動巻ユニットの裏を見ると、こちらも赤くなっています。さびではないようですが・・・
イメージ 8


角穴車を取りました。その下に仕込まれていたコハゼは、56系と同じ形状をしています。56系の

独自形状ではなかったのですね。ちょっと驚きました。
イメージ 9


前回(セイコーマチックセルフデイター)と同様、香箱真のガタをチェックしたら、これもけっこう

ガタガタだったので、気持ちだけ受けの穴を締めておきました。

輪列は普通ですね・・・
イメージ 10



分解が終わったので洗浄し、乾燥させたらパレットに移していきます。その時、見慣れぬ部品を

発見しました。非常に小さなワッシャーです。受けと地板の間に入れてアガキ調整する座金ではなさそうです。
イメージ 11


輪列の洗浄バケット内にあったのですが、これが取り付きそうなところは四番車しかなさそうです。

分解時の写真を見ると、受け側には付いていませんので二番受け側でしょうか。試しにこのワッシャーを

付けずに輪列を組んでみました。すると、三番車との隙間がほとんどありません。
イメージ 12


ワッシャーを入れてみますと、しっかり隙間ができました。
イメージ 13


ホゾの高さを見ると、四番車のアガキは大丈夫そうです。一番受けを取り付けた後に確認したら、

大丈夫でした。ザラ回しも問題なし。

しかし、これが本来の姿なのでしょうかね? 違う部品を流用し、寸法違いのところにワッシャーを

入れたか、四番車の軸が当たる二番車の段差がなくなってしまった、というあたりが真相のような気が

しますけど、タイムグラファーのグラフは直線に近いし、文字盤上下での姿勢差もあまりないし、

実用上は問題なしといっていいですね。


アンクルを付けて注油、テンプ・角穴車を取り付けました。ダイヤフィックスはないし、ひげゼンマイは

全く問題なかったのでスムーズに進みました。
イメージ 14


前もって組み立てておいた自動巻ユニットを取り付け、表側はほぼ完了。
イメージ 15


日の裏側もどんどん組み立て。
イメージ 16
イメージ 17


文字盤、針をつけて、腐食痕を削ってニッケルめっきしたケースに入れ
イメージ 18


完成です。
イメージ 19


ベゼルはステンレスにめっきしてあったようで、削っても黄色の地が出てこなかったのでそのまま。

ミドルケースは腐食痕のひどいサイドとラグ上面のみめっきを落として平らにし、めっき工房で

ニッケルめっきしました。最初の仕上がり想像図よりはマシになりました。