パワリザの短い時計(6) ブローバETA AUTOMATIC

ずいぶん前に分解した、ブローバのETAオートマチックです。
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一通り完了したのが約3年前。その後、何度か使ったのですが、

パワリザが使うたびに減って、半日しかもたなくなりました。

ローターの動きが良くないのはわかったので、メタルベアリングに注油し直したり

脱脂したり、切換車を洗浄したりエピラム処理したり、香箱チェックを

したり、思いつくことをすべて試しましたが、効果がありませんでした。

安くゲットしたものですから、このまま使ってもいいし、2836の中古を

安く仕入れて交換してもいいし、と思っていました。

しかし、原因が特定できないままなのは悔しいので、もう一度

挑戦することにしました。


まだ巻き上げられていない状態で手巻きをすると、比較的軽く巻けるんですが

スムーズではない巻き上げ感。竜頭を2,3周回すと、もうローターの動きが

渋くなり、時計を反対に傾けてもローターが回らない時がある状態に。

ここでローターを外して手巻きをしてみると、巻き上げは比較的スムーズ。

そこで、今まで確認していなかったところをチェック。ローター、切換車は

もうチェックしてますので、残るはホゾとホゾ穴。顕微鏡がなかった時には

詳細なチェックができなかった部分です。

ここを実体顕微鏡で見たところ、すべてのホゾがガタガタであることが判明。

確かにガタガタではあるけれど、一見普通に回るので、それが巻き上げ不良の

原因なのか、にわかには信じられませんでした。

とりあえず、その辺を確認するために部品を調達しなければなりません。

この時計のキャリバーはETA2836-1です。ガラ箱のジャンクには

2836はないはずですが、似たようなキャリバーはあったので、合いそうなものを

探したところ、あったあった、2879の自動巻きモジュールが全く同じに見えます。

こいつを外して、ホゾをチェックしてみました。

このジャンクの機械は自動巻きモジュールのホゾ穴にはルビーが計6個使われて

います。そのせいか、余分なガタはありません。これをつけてパワリザが回復したら、

ホゾ(穴)の摩耗が原因ということになります。


モジュールを分解して洗浄し、組み立てます。ローターはオリジナルを使いますが、

ネジは微妙にピッチが違うようなので、ドナーのものを使いました。

ドナーはゴールデンホースなので、機械も高級仕様。ルビーだけでなく受けには

ペルラージュが施されています。
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これで動作確認をします。手巻きの感触は、新品とは違いますが、

だいぶ軽い感じ。竜頭を何周か巻いた後でも、ローターは自重で回ります。

明らかによくなっています。

そしていつものように会社に着けていき、晩まで使用後放置したところ

20時間後に止まりました。まったく効果がなかったということです(;_;)


いい加減にいやになったので、その後放置してたんですが、もうちょっと

いじろうと思い立ち、作業を再開しました。今度は、ローターを他の

時計と交換してみます。

ドナーとなったのは、最近出番の多い2824。同じメタルベアリングで、

メーカー名もモデル名も書いてない、銀色のローターです。

これを洗浄して、ブローバ銘のローターと交換します。

洗浄中、メタルが分解してしまいました。
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構造は簡単で、ローターをスリーブとメタル二枚で挟んであるだけです。

ポンス台で圧入し直し、動作確認します。
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前回は、ベアリングに注油するとそれがかえって抵抗になるような感じがしたので

無注油にしたのですが、今回ローターを斜めにして回転させると動きが渋いため

やはり注油は必要と判断。

オイルは、通常なら9010を使うところですが、今回はこれを使ってみます。
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ナノレベルのダイヤモンドボールが入っていて、油分が飛んだ後も

潤滑性を保つという触れ込みです。眉唾物ではありますが、今回のような

部位にはもしかしたら効果があるかもしれないと思ったのです。

これを両面に塗布し、機械に取り付け。自動巻きモジュールは元のガタあり品に

戻しています。翌日、いつものように1日使いました。
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そして歩度のチェックをしつつ経過を観察したところ、25時間で停止(;_;)

挫折しそうになる気持ちを奮い立たせ、最後の望みをかけて自動巻きモジュールを

ガタなし品に交換。ローターもダイヤモンドボール入りオイルをつけた元のものに交換しました。

その結果は!!

驚きの!!

29時間 (´・ω・`)


もう打つ手なしなのでこのままにします\(^o^)/