TECHNOS SKYシリーズ第三弾 SKY MASTER ETA2472 30J

いきなり第三弾で面食らった方も多いかと思いますが、以前スカイライトをいくつかやってまして、

前回スカイソニックをやりましたから、今回のスカイマスターで第三弾ということになります。(^_^)
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外観は悪くないです。傷は多めですが、オリジナルの形状はよく残っているようです。

裏蓋は、表側に比べると傷が多く、一体型のメダリオンは模様がわかりません。
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何かでこぼこがあるのは見えるので、もしかしたら何か浮き出てくるかもしれません。

機械はETA2472。前回の2638より若い番号です。ローターが特徴的です。
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このように、外観・機械はきれいですが、目いっぱい手巻きしても、テンワがよく動きません。

一度自動巻きモジュールを外して、ゼンマイを解放してからまたモジュールを取り付け、半日

腕に装着しました。時計自体は動きませんが、今の状態でどれくらい巻き上げられるかを確認するためです。

メンテ作業の前後で違いがあるのかを知りたいのです。

通常の使用時間より短めでしたが、自動巻きモジュールを外してゼンマイを解放する時に角穴車の

回転数を確認したところ、6周弱。フル巻き上げまでだいたい7周以上あると思いますが、メンテ前でも

十分な巻き上げ効率が維持されているようです。


さて、それではいつも通り日の裏側から分解を開始します。
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日車押さえと日車を外します。その下にあった日の裏車に、5つの飾り石がはめ込まれています。
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ローターにはTHIRTY (30) JEWELSと書いてありますので、この機械は実質25石ということになります。

左斜め上の大きなレバーもこの機械の特徴ですかね。下に隠れている大きなバネを含め、3つの部品で

日付の瞬時切替を実現していますが、2824などではだいぶ簡略化されています。

この時計、けっこう油が多めに注されているようです。写真ではわかりにくいですが、

PATENTEDの刻印があるあたりや香箱(色が着いているところ)にオイルが付着していました。
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日の裏側の分解が終わったら表側です。まずテンプを外します。
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が、この時事件が!!!

ネジを外して受けを持ち上げたのですが、テンワが上がって来ない。あれっ!?

がーん!!やってしまいました・・・
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最初からこんなになってたのではないか(状態がよいのに不動だったから)と思いましたが、

直前の写真を見るとひげゼンマイの変形はなさそう・・・やっぱり自分が犯人か?

こうなってしまうと、もう素人の手には負えないのですが、先日紹介したひげ修正動画を

見ていますから何とかなるのではないかという思いが頭をもたげてきました。


ということで修正にトライします。

まずは受けとテンワを分離し、さらにひげゼンマイとテンワを分離します。
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ここまででも相当ヒヤヒヤものですが、ここから終わりの見えない作業が始まります。

例の動画ではサンプルの変形が単純でしたから修正も楽に見えましたが、

このように絡んでしまうと変形の原因がどこにあるのか、見当がつかないですわ。

何度も休憩を挟みつつ、時々心が折れそうになりながら、ほぼ半日使ってようやく

ここまで来ました。これでも間隔は均等ではないし同一平面にもないのですが、

これ以上はもう無理です(T_T)。
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タイムグラファーの曲線も姿勢差もひどいだろうと思いますが、とりあえず継続して

動いてくれれば・・・

香箱はあまり汚れていませんが、きしむような滑り方なので、主ゼンマイを取り出して

注油することにします。
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この後部品を洗浄し、地板のインカブロックとガンギ車の保油装置取り付けから組立スタート。
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輪列取り付け、受けをかぶせてザラ回し、丸穴車(は前もって一番受けに組み付ける必要あり)

角穴車を取り付け、アンクルを取り付けて動作確認。ここまでは問題ありません。
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次に、ひげゼンマイを修正して組みなおしたテンプを載せます。なんか動きが変。

まるで振り石がないテンプを付けた時みたい。

原因は、ひげをテンワに取り付ける時に位相を180゜間違って取り付けてしまったため、

アンクルとぜんぜん違うところに振り石が来てしまったためと判明。やむを得ずやり直しますが、

その過程でまたひげの変形があり、その修正にまた時間を費やすことになりました。

それでも、何とか継続して動いてくれてますので一安心ですよ。
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ここで日の裏側に移り、巻真まわりから取り付けていきます。その後カレンダー機構。
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カレンダーの動きを確認した後、文字盤を取り付け、針を挿します。
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磨いて組み立て直したケースに入れて、タイムグラファーにかけます。

片振りはいい線まで修正できるのですが、やはり歩度は安定せず姿勢差も猛烈。

画面の写真を撮って載せようか迷ったのですが、あまりにひどいのでやめました。

そして自動巻きモジュールをつけて裏蓋を付けて、とりあえず完成。
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模様が全く見えなかった裏蓋のメダリオンは、面積半分くらいですがうっすらと模様が

復活しました。
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それにしても、今回は参りました。ひげゼンマイを傷めてしまうとは、一生の不覚です。

ケース、針、文字盤の状態が比較的よいので、できれば機械も完調にしたいところです。

実は、同じ機械を積んでいて、文字盤不良のため復活の見通しがほとんど立っていない

時計があるので、そこからテンプを移植することも考えています。
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