TECHNOS SKYSONIC ETA 2638

最近、パワリザの短い時計ばっかりいじっていて気がめいってしまったので、久々にフルコースの

メニューを選択することにしました。

今回はテクノスのスカイソニックを分解します。テクノスの時計のペットネームには、「スカイ」が

つくものがけっこうありますね。ちょっとググっただけでもスカイライト、スカイマッハ、スカイマスター、

スカイイーグル、スカイバード、スカイエース、スカイストーム、スカイレディなどが出てきます。

これらはスカイシリーズと一くくりにされているようです。

さて、最初に入手したスカイソニックですが
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裏蓋を開けたらこんな状態でした。
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ローターがありません。ただ無いのではなく、受けのローター軸から折れてしまっています。

事実上のドナー決定です。

やむを得ず、またスカイソニックが出てくるのを待ちます。機械のジャンクを探す手もあるのですが、

これに載っているのはETA2638という機械で、今まで見たことがありません。

どんな時計に載っているのかも見当がつきませんので、スカイソニック狙い一択になります。

あまり高額では落札したくないのでかなり時間がかかりましたが、何とか同じものを安価に入手。

届いたものがこちら。
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文字盤や針はかなり傷んでいますが、機械は破損や欠品がありませんでしたので、

機械はこちらを使い、残りの部品は二つからいいとこ取りをします。

二個目のやつの風防にはカットが入っているので、こちらを採用。
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ケースは似たような状態なので迷いましたが、二個目を選択。

裏蓋のメダリオンも移植。文字盤、針は一個目から。

ケースは、風防の外側が放射状のヘアラインで、その外側はポリッシュになっていますが、

このヘアラインはどう加工するんでしょうね。
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下手に手を出すとがっくり来るので、いつも深追いはしないんですが、なんとかしたいなあ。


文字盤は入れ替えるので両方はずしたところ、なんと使う方の足が一本取れています(;_;)
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逆だったらよかったのに。 なんて泣き言を言っても始まりませんので、何とかしましょう。

前回の干支足ハンダ付けテストの反映として、足の位置にケガキ線を入れて、

中心がわかるようにしておきます。足の位置決め固定方法がまだ確立していませんので、

自分の手で支えてやることにします。その結果はのちほど。


さて、いつも通り日の裏側から分解を始めます。曜車押さえがネジ留めされています。
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これは初めてですね。躍制レバーはこの押さえの裏に組み込まれています。バネがここにある

機械はいくつか見てきましたが、レバーまでこちらにあるのは初めてかな。
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日車押さえと日車を外します。外周にあるのは日車曜車と文字盤裏が接触しないための

スペーサーですが、地板にネジ留めされています。これも初めてですわ。
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カレンダーの早送りは出来ず、瞬時切替でもないため、日の裏の構造は比較的簡単でした。

次は表側ですが、こちらは日の裏ほど他のファミリーとの違いは見られません。

コハゼの構造とローターの軸受けにちょっとしたパターンの違いがあることくらいでしょうか。

特に問題なく分解完了。
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香箱は、滑りは悪くないし中はきれいだったので、真だけ取り出して洗浄しました。
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洗浄後、地板にインカブロックを取り付けるところから組立スタート。
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輪列を載せます。
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受けをかぶせ、ザラ回しがOKなのでアンクル、丸穴車角穴車テンプを取り付けます。
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ここまでやったら、日の裏側に移ります。

もうだいぶ組み付けてしまった後の写真ですが・・・
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ちょっと変わっているのは日車の回転方向と躍制レバーの向きの関係。通常はレバーの回転軸が

日車の回転方向の上流側にありますが(何を言いたいかわかりますか?(^_^;)、この機械は

逆です。また、カンヌキ押さえネジの頭が躍制レバーの軸になっています。

日車、日車押さえを取り付けたら、曜車、曜車押さえを取り付け。曜車の内爪は先端が一段

下がっていて、曜車の外側からこの爪を押して曜車を回します。これもちょっと変わってますね。
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さて、いよいよ文字盤です。干支足ハンダ付けテストの時と同様に、粉末ハンダとバーナーを準備。

文字盤を機械台に乗せ、フラックスを混ぜた粉末ハンダを塗布し、取れた足をピンセットでつまんで

ケガキ線の交差に合わせ、バーナーでハンダが広がるまで炙ります。文字で書けばこれだけですが、

一度では成功せず、何度か炙り直してなんとかここまで来ました。
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文字盤の表には影響は出ていないようです。

この文字盤を取り付け、針をセットして
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ケースに入れます。そして自動巻きモジュールを載せるのですが、これを洗浄していた時に見慣れぬ

部品が出てきました。次の写真の黄色矢印の先にある、丸いものです。
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大きさ、スレ具合から、ローター軸の裏側に付く、四番車の穴石カバーと判断しました。

ドナーとなった方の機械には、この部品はありませんでした。

そんな自動巻きモジュールを取り付け、ローターを取り付けます。
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こうしてニコイチスカイソニックが完成。
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ケース前面のヘアラインは、砂消しゴムでこすってテカリを取っただけで済ませました。

現時点では、これ以上の作業が思いつきません。
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現在、自分の中ではパワリザの短い時計が頻発するのが課題になっていますが、

ETAの古いタイプが多いように感じます。今回の時計もETAの機械を積んでいますので、

分解に先立ってちょっとした確認を行いました。一つは手巻きの感触。トルクと滑らかさを

確認したのですが、これは意外なことにどちらも悪くありませんでした。

次に、巻き上がった後のローターの動き。これも、連れ回りすることなく動きました。

完成後にこれらと同じか上回る結果が出ないと分解の意味がありません。


ということで、完成後に同じことを調べてみたのですが、結果はほぼ同じ、という感じでした。

元々が意外にスムーズだったんで、悪くならなかっただけヨシと考えなければ。

恥ずかしながら、今まで分解前の状態をチェックすることはほとんどしてこなかったため、

自分の作業の良し悪しがよくわかりませんでしたが、これからはやっていきたいと思います。

この時計のパワリザについては、判明次第追記したいと思います。


【10/16 追記】
一日使用して放置した結果、止まるまで47時間でした。今後まただんだん短くなっていく

可能性は否定できませんが、とりあえずほっとしています。