ドライファストルブ・・・

先日の投稿で、ウォルサムのアメリカーナとプレジデントにはドライファストルブの明確な効果はなかったと書きました。

なぜなのか、考えてみました。まず、これらに載せられているAS1863は片方向巻き上げです。巻き上げない方向にはローターから切替車の上半分までが完全フリーで回ります。

巻き上げる方向には切替車全体が回り、伝え車・丸穴車・各穴車を経由してゼンマイを巻いていきます。

この時、香箱側からの反力を受け止めているコハゼが切替車の鋸歯を乗り越え、ジーッという音を出します。

ETA7750は、このコハゼが小さな板バネなのですが、AS1863は結構強いバネとハト型コハゼで構成されています。

このような事実を考慮したうえで、何が巻き上げ効率に影響しているかを考えました。

巻き上げる時には切替車はただの歯車ですから、切替機構うんぬんは関係ない。反対方向の回転が渋すぎれば巻き上げに影響するでしょうが、そこまでひどくない。

ただ、現実の使用状態では連続して一方向に回転する場面はほとんどなく、往復を繰り返しているはずですので、中の切替爪の動きが悪い場合は巻き上げない(不動作角が大きい)可能性があります。

その辺をクリアしているとすれば、問題箇所はただひとつ(しか思いつかない)。コハゼが切替車の鋸歯を乗り越えるときの抵抗です。

そこで、切替車の鋸歯の先端に少量かつ十分なオイルを塗布してみました。

塗布後の変化点ですが、まずローターが巻き上げている時のジーッという音が小さくなりました。

そして手巻きをしてみると、同様に巻き上げ時のジーッという音が小さくなり、巻き上げの感触も軽く滑らかになりました。

期待に胸を躍らせながら、この状態で一日使用し、パワリザを測ってみました。その結果、前回29Hだったアメリカーナが24H。プレジデントは若干伸びて36Hでした。

これしかない、と思ったコハゼの乗り越え抵抗は、自動巻きの巻き上げ効率には明確な関与がなさそうです。

でも、手巻きの感触はよくなりますので、まったく関係ないとは言えないように思うのですが・・・

そんなわけで、ほとんど振り出しに戻った感じです。正直疲れました。だめなものはさっさと諦めるのが精神衛生上はよいのかも。

でも悔しいしね。これからもいろいろ試行錯誤することになるのかなあ。