Calendar Auto Orient Swimmer 19J

製造は'60年代前半だと思いますが、そのころの他社の製品と比べてもかなり大きく感じます。

ダイバーズウォッチでもないのに。
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裏蓋の留め方がちょっと変わっています。スクリューバックでもスナップバックでもない、リング式

とでも言いますか。

振るとカタカタ音がするのですが、裏蓋を開けて中を観察するとローターが地板や受けに当たって

いるようです。
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どこにガタがあるのかと探したら、何とローターのリベットが緩んでいます。3つの内一個は

付いていません。以前にも同様のトラブルで動かない時計がありました。
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文字盤を外したところです。
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日車の表面が平らではなく、面を取ったようになっているのが今までにない点です。

日の裏側はすべて部品をはずしました。昔の銀行の地図記号みたいな保油装置バネが何となく

いやな感じです。
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次は表側です。ローターを外したところですが、この機械の特徴は何と言っても自動巻の構造でしょう。

IWCのペラトン式とそっくりなメカが採用されています。
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ローターの裏についている偏心カムと写真中央のコの字形のアームを持つレバーにより、

ローターの回転運動を往復運動に換え、二本の爪で巻き上げるわけです。

レバーを分解したらそこそこの部品点数になると思いますが、これを一つと考えれば

レバーと伝え車と受けとローターだけですので、マジックレバー式並みですね。

裏から見ると、こんな感じです。爪は伝え車と噛み合わせていません。
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これはローターの軸です。段がついているので、摩耗しているようです。ここと爪がこの機械の

弱点部品のようです。
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自動巻の部品を外すと、残るのは普通の三針手巻き機械です。]
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どんどんばらしますが、注意点は角穴車のネジが逆ネジであること。丸穴車の固定が一番受けの

裏側からというのが面倒です。

輪列はこんな感じです。普通です。
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手巻き三針と書きましたが、自動巻なのでゼンマイは当然自動巻用です。普通のゼンマイでした。
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部品洗浄後はどんどん組み立てます。
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日の裏側もどんどん組み立てます。
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が、ちょっと悩んだのが日車躍制レバーの取り付け方。普通はレバーもバネも日車押さえの下に入るので、

そういう組み方をしようとしたのですが、日車のガイドレールが地板側ではなく日車押さえ側にあるので、

うまく取り付けられない。しばし考えた結果、この機械は日車押さえをつけた後にレバーをつける

組立順であると確信。レバーの固定がネジなので、分解時に珍しいなと思ったんです。
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これで日の裏側は完了。昔の銀行地図記号は、心配したほど取り付けは難しくありませんでした。
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ここで、勇み足のため文字盤・針をつけてしまったので、ケースに入れてから作業を継続。

伝え車とレバーをセットし、その上から受けをかぶせます。
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爪もやはり摩耗しているので、進展を少しでも遅らせるため、伝え車外周全体にD5を塗布。


分解中に真ん中のリベットが見つかったので、これもたたき込んでローターをしっかり固定しようと、

リベットをつまんだところ「ピン!」と弾いてしまい、行方不明になりました。その後けっこう

時間をかけて探したのですが結局見つからず。とりあえず両側二個だけで行くことにしました。
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リベットの捜索中、今までになくしたネジが3本見つかったので、リベットも別の部品を

探しているときに見つかるだろうと楽観しています。


このローターを機械に取り付け
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裏蓋を閉めてできあがり。
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金めっきケースですが、地が出ているところはなく、文字盤がリダンかと思うくらいきれいなのと

あいまって、ジャンク上がりとは思えない姿になりました。