IWC?

会社の先輩から「時計が動かなくなったので診てほしい」と言われ、写真の時計を預かりました。

IWCと書いてあります。こんなモデル、ありましたっけ?
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裏はシースルーになってます。止まりの原因は一目瞭然ですね。ローターのウエイトのかしめが

緩んで機械と干渉したり、脱落したリベットがどこかにかみこんで止まった例は経験していますが、

ウェイト自体が脱落して止まっているのは初めてです。
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パチですから、何があっても不思議はないんですが。

裏蓋を外して、ローターを摘出します。接合部を見ると、リベット留めではなくてかしめしてある

だけみたいですが、ウェイトにプレートを押し込んだらパチンと小気味よく嵌りましたので、

強度は十分のような気がします。ケースは無傷ですので地面に落としたような強い衝撃を受けたとは

考えにくく、最初からはめ込みが甘かったのでしょう。
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機械を見ると、シースルーバックで見せるようなものではありません・・・角穴車の上に覗いているのは

マジックレバーのような?
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拡大してみましょう。
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どう見てもマジックレバーですね。

ローターのウェイトが外れる前、「遅れるようになった」という話をしていたので念のために

緩衝装置の油を確認したら、自分がいつもいじっているジャンク並でした。ここの油がなくなっている

ということは、他は完全に切れているはずです。しかし、人様の時計に頼まれてもいないことを

やるのは、たとえパチでもまずいし、パチだからこそ親切心が徒になって元に戻らない可能性が

あるので、深入りはやめました。でも、マジックレバーの受けは外させてもらいました。

マジックレバーが噛み合っている伝え車の外周に注油するためです。これをやると、手巻きの感触が

若干軽くなるのです。

受けの下にあったマジックレバーは、本家のものとは形状がちょっと違いますが、まあそのまんまですね。
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軸受けにはちゃんとルビーを使ってますが、油が全くないので注油しておきます。

表側から見える輪列の穴石にも、注油しました。天真は、片側だけの注油は心残りだったので、

テンプを外して注油しました。これだけでタイムグラファーのグラフはだいぶ安定しました。

平置き実測で+16s/dくらいです。遅れるよりはいいでしょう。
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自分で買い集めたジャンクだけを相手にしていると、どうしても偏ってしまいますが、たまには

自分では買わないような時計をいじるのもおもしろいでしょうね