ORIENT AAA DELUXE CRYSTAL 27J

今回の時計はオリエントのAAAデラックスです。今までにもAAAデラックスを分解していますが、

今回のはただのデザイン違いと思っていました。文字盤は"Crystal 27J"の文字があり、

今までよりちょっとスペシャルであることがわかります。また、盤面の仕上げもちょっと手間を

かけているようです。
イメージ 1



裏蓋を開けました。錆はほとんどなくきれいですが、若干の違和感が。
イメージ 3


丸穴車の位置にある歯車が、今までのAAAデラックスとは様子が違います。
イメージ 4


また、二つ並んだ歯車のひとつがどう見てもおかしい。竜頭を回した時に、ここの歯車がぜんぜん

回らないのも奇妙。

ローターを見たところ、Cal.番号が今までのAAAデラックスは42940など5桁だったのに対して、

これは4971で4桁。今までの物とは機械が違うことが分かりました。

そこでネットで調べてみると、この機械は竜頭二段引きで手巻きモードになる構造であることが

わかりました。竜頭を二段引いてまわしてみると、確かに丸穴車が動きます。

ただ、その動きがどこにも伝わりません。

その理由はすぐに判明。地板の穴の奥に、光るものを発見しました。圧入されていた歯車が

外れてしまったようです。たぶん、圧入しなおせばよいでしょう。
イメージ 5



ケースから機械を取り出し、日の裏側から分解していきます。丸穴車の周辺以外は、今までの

AAAデラックスと変わらないように見えましたが、カンヌキとオシドリの形状は大きく違いました。

これが二段引き手巻きモードの核心部分と思われます。
イメージ 6
イメージ 7



次に表側を分解していきます。
イメージ 8


輪列は間接中三針。二段重ねの三番車ではなく、秒カナをバネで受け側に押し付けるタイプ。
イメージ 9


今まで分解した間接中三針に限ると、地板側に押し付けるタイプの方が主流でした。

分離してしまった伝え車。
イメージ 10


ポンス台で圧入しました。再度の脱落を抑制するため、大きい方の歯車をポンチで叩いて、

内径を小さくしたいところですが、スペースがないので断念。圧入だけにしました。
イメージ 16



さて、分解洗浄後、巻真まわりから組み始めました。今回の機械のクライマックス、竜頭二段引き

手巻き機構の図解です。まずは一番押し込んだ状態。鼓車と吉車が噛み合わない程度に離れています。
イメージ 11


一段引きの状態。鼓車が左へ移動し、小鉄車と噛み合って時刻あわせができるようになる位置です。
イメージ 12


二段引きの状態。カンヌキの大きな凹みにオシドリが入り込み、鼓車が吉車と噛み合います。
イメージ 13


通常は竜頭をケースに埋没させておき、手巻きしたい時には竜頭を二段引き出す。カンヌキとオシドリ

専用にするだけで実現できる(推測)この構造は、かなり画期的なアイデアではないかと思うんですが、

従来の操作と違いすぎることから日の目を見なかったものと思います。今では当たり前の秒針規正と

相容れない構造であることも理由の一つでしょうか。でも、個人的にはこういうのは好きです。


さて、裏押さえをつけたところで表側に移ります。
イメージ 14


ここまで写真を撮り忘れました。
イメージ 15


圧入しなおした歯車を含め、残りの部品を組み付けます。
イメージ 17


日の裏側も残りの部品を取り付けて
イメージ 18
イメージ 19


針、文字盤を取り付けます。
イメージ 20


ケースに入れて
イメージ 21

完成。
イメージ 22


完成後、切り替え車の不具合が発覚しましたが、何度か洗い直して復活。

竜頭二段引き手巻きはおもしろいのですが、曜日の変更ではひたすら針を回し続けなければならないのは

苦痛ですわ。