RADO WORLD TRAVEL 30JEWELS

今回はラドーのワールドトラベル。GMTとかデュアルタイム機能を持っていそうな名前ですが、普通の

三針時計です。文字盤バリエーションはいくつかあるようですが、こいつは派手ともシンプルとも

言い難い、中途半端なデザインではないかと思います。

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商品説明では「動いている」とのことでしたが、手元に来た物は振れば動くがすぐ止まる、カレンダーは

進まない状態。分解組立を進めていくうちにもっと大きなトラブルを抱えていることが判明します。


裏ぶたを開けました。すでにパッキングは除去されていたので、開けるのは楽でした。
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機械はAS 1581。さびのようなものはなさそうですが、全体的になんだかとてもくすんだ色をしていますね。

角穴車の上に手書きの丸みたいな傷が付いていますが、これはコハゼを解放しながら角穴車ネジを

回してゼンマイを緩めようとしていたらドライバーが滑って一気に解放、その時にドライバーの先で

つけた傷と思われます。なぜそんなことがわかるかというと、自分もやったことがあるからです(^_^;

こんなにひどくはなかったですが・・・


さて、日の裏側です。瞬時切り替えではなく、早送り機構もないので部品点数は少なく、シンプルです。

どんどんバラしていきます。
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次に表側です。AS1700に近いような気がします。どんどんバラしていきます。
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日の裏側を分解している時に、妙なところにルビーが集まっているのに気づきましたが、これは

香箱下にある自動巻の角穴車を受けているようです。
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この歯車は地板側にバネで押さえつけられているので(弱くですが)、ルビーで受けるのは意味があると思います。

でもここにルビーを使っているのは初めて見ました。

香箱は事前のチェックでスリップしないことがわかりました。分解してみると、スリッピング

アタッチメントが分離しているタイプでしたが、そのアタッチメントが通常と違いました。

普通はアタッチメントの中程に突起があり、そこに主ゼンマイの外端がひっかかってアタッチメントを

スリップさせるようになっていますが、これはその突起がありません。別のゼンマイの、取れてしまった

スリッピングアタッチメントを入れているのではないかという気がします。
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香箱内でこれをスリップさせようとしてみましたが、全然動きませんのでこれが原因です。

両端を少し強く曲げてみたところ、滑るようにはなったので、これで一度組んでからチェック。

しかし、やっぱりスリップしません。仕方がないのでジャンクから探してきて入れました。幅が

正規より0.08mmくらい広かったのですが、蓋はちゃんと閉まったしスリップもしたのでOKとしました。


洗浄してから組立に入ります。まずは表側から。
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いつも通り組んで、アンクルチェックのため角穴ネジを回してゼンマイを巻こうとしたら、カツン

カツンという、けっこう大きな音が。原因はすぐわかりました。自動巻の角穴車です。
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分解中に気づいていたのですが、中央部にある鋸歯は本来均等に沈み込むのが正しいところ、この

個体は半分くらいが固着しているような感じで、半分くらいしか沈みません。半分沈めばなんとか

なるかと思い、そのまま組んだのですが、やはりだめでした。


ということで、こいつを分解してみました。
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意外に簡単な構造です。歯車本体の切り欠きと鋸歯の突起が合った状態でなければならないのが、

何らかの理由で突起が切り欠きから外れてしまったようです。構成部品の破損もないようですので

切り欠きと突起を合わせ、ポンス台でリングを圧入して修理完了。これを組み付けて作業を続けます。

テンプを取り付け、あらかじめ組み立てておいた自動巻モジュールを取り付けます。
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これでとりあえず表側は終わり。次に日の裏に移り、部品を組み付けていきます。
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ちょっと磨いたケースに入れて
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できあがり。
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傷だらけだった風防は再生できず(する気もなし)、代替テンションリング入り風防もなかったので

汎用風防を使用。テンションリングは風防の内径より小さいので、気密の役目はありませんが、

文字盤を受ける役目は果たしているようです。


さて、日付を合わせようかと思って針を戻して回したところ、日車がぴくりとも動きません。

針をぐるぐる回し続けても、まったく動きません。

針を挿す前の時刻あわせでは動いたので、手元に来た時の確認でカレンダーが動かなかったことを

忘れていましたあ。


日付が変わらない原因は、だいたい推測できます。面倒ですが文字盤を外して問題箇所をチェック。

推測通り、日送り車の爪が押し込まれたまま戻っていません。
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支点部分がさびてるし。さびで固着に近い状態になっていました。そこでCRC5-56に漬けて、

動かしながらさび落とし。スムーズに動くようになったらクリーナーでCRCを落とし、9010を

ちょっとつけて、元通りに組み直しました。
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これだけ拡大すると、まださびが残っているのがわかってしまいますね(^_^;

日車が回らないことが、分解前からわかっていたのにこうなるとは。洗えば直ると安直に考えて

いたのだと思います。ちょっと考えが甘かったですね。

しかし、これだけでは終わらなかった・・・


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